食らえ名物!お好み焼き

「名前めっちゃ久しぶりやなぁ、会いたかったで〜!!」
「和葉ちゃん!ちょっと見ない内に大人っぽくなっちゃって!」
「もー!そないなこと言ったってなんも出ないんやからね!名前は相変わらずちっこくて可愛らしいな〜お姉さんって呼んで欲しいわ…」
「それはちょっと照れ臭いな」

こんにちは、名前です。
昨日は父の御見舞で京都に。今日は大阪で、和葉ちゃんに抱きしめられています。熱烈歓迎かな。

せっかく関西に来たんだから旨いもん食ってから帰りや!と言う服部くんの計らいで、美味しいお好み焼きのお店に連れてきてもらったのだ。なんと、和葉ちゃんのことも誘ってくれたらしくお店の前でばったり再会し、今に至る。

「店の前で何しとんねん…はよ入れや」
「なんや平次!ちょっとくらいええやん。…それともアレか?この状況が羨ましいんか〜?」
「っんなわけないやろ!にやにやすんなや!」

なかなか入ってこない私達に痺れを切らしたのか、服部くんが様子を見に来たらしい。和葉ちゃんに言い負かされてまたすぐにお店の中へ戻って行ったけど。
服部くんを追ってお店に入ると、香ばしい匂いと食欲をそそるソースのいい香りが出迎えてくれた。

「うわぁいい匂い…」
「ほんま、お腹空いたわぁ」

奥の座敷へと上がり、具材をかき混ぜている服部くんの向かい側に腰を降ろす。ちなみに和葉ちゃんは服部くんのお隣だ。あぁ、定位置だね。

「遅いから適当にオススメ頼んでもうたわ」
「平次のオススメは意外とアタリが多いから期待してええよ!」
「ほんと?楽しみだなぁ」
「よお見とき」

熱せられた鉄板に油を引き、生地を流し入れヘラで形を整える。あっという間に綺麗な丸い形になったお好み焼きはじゅうじゅうと音を立てている。片面が焼けたところでひっくり返し、その隣に生卵を割り、目玉焼きを作っていく。
生地に火が通ったのを見計らい、上に目玉焼きを乗せソースとマヨネーズ、青のりをかけて…服部くんお手製お好み焼きの完成だ!お見事。
三等分する為に切られた断面図に流れる卵の黄身の半熟具合も完璧…、肝心の味も申し分ない美味しさだ。

「服部くん…これ、このお好み焼き、すっごく美味しい…!!ふわふわ!」
「せやろ?お好み焼きだけは作るの上手いんやで!な、平次」
「"だけ"ってなんや、"だけ"って!」

楽しそうに笑い声を上げる和葉ちゃんと、ムスッとしつつも満更でもない表情の服部くん。
なんだ、ただの夫婦か、と呟くと二人から物凄い勢いで否定された。二人とも顔赤いよ。生暖かい目で見ているとテーブルに置いた私のスマホから電子音が鳴り始めた。しまった、マナーモード解除してたんだった。
表示された名前は、沖矢昴。……お、沖矢さん?
和葉ちゃんのお言葉に甘え、その場で電話に出る。

「…も、もしもし?」
「もしもし、沖矢です。いきなり電話してしまってすいません、今大丈夫ですか?」
「あ、はい!大丈夫です」
「名前さんがよければですが、今夜一緒に夕食なんていかがでしょうか?…あ、コナンくんや阿笠博士達も一緒にですが」
「夕食、ですか。ちょっと待ってくださいね」

えーと、お好み焼き食べて少ししたら京都を出るから、夕方頃には地元に着くはず。夕食には間に合うけどなかなかハードだ。でもせっかく誘ってもらったし…。
どうしようか。んー…と唸っていると、電話口からコナンくんの声が聞こえてきた。あれ、沖矢さんどこ行ったの。

「もしもし?名前姉ちゃん?」
「コナンくん?沖矢さんと一緒にいるの?」
「うん、ちょっとだけ代わってもらったんだ!ねぇ、名字姉ちゃん今関西にいるんでしょ?何時頃帰ってくるの?」

私が関西にいるって、蘭から聞いたのかな?夕方頃にはそっちに帰るよと答えると、嬉しそうに話を続ける。

「夕方頃にこっち帰ってきてからご飯の準備するの?名前姉ちゃん疲れてるだろうし作るのめんどくさくない?昴さんが作ってくれるから皆と一緒に食べようよ!ね、だめかなあ?」
「わぁ、沖矢さんが作るの?…そうだなぁ、せっかく誘ってもらったしご一緒させてもらおうかな?」
「ほんと?やったー!あ、昴さんに代わるね!」

京都から東京へ戻ってから夕食の食材の買出し、そこから作るとなると確かにめんどくさい…。コナンくんの頼みだしたまにはいいかな。
なにより沖矢さんの作るお料理が気になる。

「来ていただけるみたいで嬉しいです。名前さん、なにかお好きな料理はありますか?」
「えっと、わりとなんでも好きですけど……あ、沖矢さんのオススメじゃだめですか?」
「僕の、ですか?…わかりました。
腕によりをかけて作りますから、楽しみにしていてください」
「はい!では、またあとで…」

沖矢さんとの電話を切ると、待ってましたとばかりに身を乗り出す和葉ちゃん。今の電話の人男やろ?彼氏?と聞いてくるけど、残念ながら和葉ちゃんが想像しているような関係ではない。
面倒見のよいお兄ちゃんみたいな感じ、と答えるとなんや違うんか〜と呟いてヘラを手に取った。

どうやら次はもんじゃを焼くらしい。手際よく作られていくもんじゃ焼きを眺めながら、今度は皆でここに来たいな、なんてことを考えていた。

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