虚言:前


眠い6時間目の授業をなんとか乗り切り、座った状態で腕を上に上げて伸びをした。

ちらりと後ろの席に目を向けると四月一日くんの隣にツインテールの髪を縦巻きにした女の子――九軒ひまわりちゃんが頭上に?を浮かべて立っている。
ちなみに私の隣の席の女の子でとてもかわいい。

あ、四月一日くんが跳びはねて教室を飛び出していった。兎みたい。

私も帰る準備しなくては、いそいそと鞄に教科書を詰めているとひまわりちゃんが駆け寄ってきた。

「名前ちゃん今日もスーパー?」
「ん、タイムセールで安い牛乳を狙うの」
「そっか、頑張ってね!」

頑張りますとも…!
ひまわりちゃんに見送られるようにして私も教室を飛び出した。
急げ名前!タイムセールまであと少し!



スーパーに着いて携帯を開く。
時刻を見るとタイムセールが始まる1分前。

牛乳売り場に小走りで向かうとすでにいくらか人が集まってはいたものの、無事お目当ての牛乳を手に入れることができた。
他に買うものは侑子さんとモコナのお酒のおつまみだ。
2人がよく好んで食べるちぃタラとさきいかを買い物カゴにほうり込む。

「妙な組み合わせですね」
「…私も思った。お久しぶりだね、テツヤくん」

うっすらと妙な気配を感じるなぁとは思ったけど、テツヤくんだったとは。
さらに影薄くなってない?

「今、失礼なこと考えませんでした?」
「滅相もないです」

思わず視線を下にずらすと、テツヤくんの買い物カゴが目に入った。
食パン、ジャム、卵、ハム、牛乳、……普通だ。

「テツヤくんは、お使い?」
「はい。名前さんも?」
「まぁ、そんなとこ。そういえば、高校どんな感じ?誠凛だよね?」

いつまでもおつまみ売り場に留まっているわけにもいかないのでレタスとオレンジを買う、というテツヤくんとカゴを揺らしながら歩く。
「結構楽しいですよ。面白い人を見つけましたし。あと、新築なので校舎が綺麗です。
名前さんは?」

その制服、十字学園のですよね?
レタスを両手に持って重みを比べるテツヤくんは、くるりと顔をこちらに向けた。

「学校生活も楽しいし、友達も出来たよ。
それに、アヤカシが見える子とも友達になったの」
「、そうですか」

アヤカシ、という言葉にちょっと驚いたような顔をしている。あまり表情が変わらないテツヤくんの驚いた顔は少々レアかもしれない。
ちなみにテツヤくんもアヤカシが見える。声も聞こえるが、触ったり祓うことはできない。

「テツヤくん、アヤカシに関しては相変わらず?」
「変わらないです。襲われないのはありがたいですけど」

右手に乗せていたレタスをカゴに入れ、隣に陳列してあるオレンジも同様にカゴに入れたテツヤくんはふう、と息を吐いた。
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