必然
学校を出て夕飯と明日の朝と昼の買い物を済ませて家に帰ると玄関に男物の革靴が置いてあった。お客さんだろうか。
とりあえず買ってきた物を冷蔵庫に入れ、自室に荷物を置きに行くために侑子さんの部屋の前を通ると、侑子さんとマルとモロの楽しそうな声に混じって聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「今の……」
誰だっけ、考えを巡らせているとスパンと部屋の戸が左右に開いて中からマルとモロが飛び出してきた。
びっくりした。
「「名前おかえりー!」」
「あ、ただい……ま?」
……あ…れ?侑子さんの前に立っているのって、
「四月一日くん!?」
「苗字さん!?」
「2人とも同じ顔してるー」
「「同じ顔ー!」」
「まさか四月一日くんとここで会うとはね…」
四月一日くんは願いを叶えるためにここでバイトをすることになったらしい。
店先までお見送りするために長い廊下を並んで歩く。
「えーと、苗字さんはここに住んでるの?」
「小学生のときからね。ここのことなら大体わかるから、わからないことがあったら遠慮せずに聞いて」
「あ、ありがとう。…あのさ、苗字さんもアヤカシ?が見えたりするの?」
「見えるよ。四月一日くんと同じで好かれやすいし。」
困るよね、と笑うと四月一日くんはどこかほっとした表情を浮かべた。
「俺、今までにそういう類のモノ見えるって人が周りにいなかったから…なんかほっとした」
くすりと笑いながら玄関の戸を開けると綺麗な夕焼け空が広がっていた。
「多少なら助けられるから、なにかあったら頼って?
あと、これ。日が暮れてきたし、渡しとく」
「これって…?護符…?」
アヤカシに好かれやすい体質には嬉しい、護りの護符でございまーす。とは言え簡易なものだから夜はあまり役に立たないかもしれないけど。
四月一日くんはトクベツ好かれやすいから、早く帰らないと大変だよ?
そう説明すると四月一日くんは空を見上げて護符を握り締めた。些か顔が青ざめてる。
「っ帰る!」
「お気をつけてー」
また明日〜、と言う頃には四月一日くんの姿はとても小さくなっていた。足速いなぁ。
とりあえず、無事に家に帰れるといいね。
「名前ー、危ないから早く中入りなさーい。」
「「名前あぶなーい!」」
「私が危ない人みたいに聞こえるんだけど」