憑キモノ:中
「対等にって、じゃあ、何を払えばいいんスか…?」
頬に滑らせていた手を離した侑子さんは黄瀬くんの鞄を指差した。
「中に入っているその雑誌をいただくわ」
「え?」
不安気な表情になった黄瀬くんだったが侑子さんの言葉にその表情を一変させた。
「この雑誌…ッスか?」
「あら、アナタが表紙なのね」
雑誌を受け取った侑子さんはパラパラとめくりながら、やっぱり実物の方がイケメンねぇ、と呟いている。
あ、チラッと見えたけど、黄瀬くんの特集組まれてる。あとで貸してもらおう。
「ちょっ、本当にこれでいいんスか!?ただの雑誌ッスよ!?」
「侑子さんがそう言ったなら、それでいいんだよ」
祓って護符を渡すにしても、ちょっと少な目じゃない?とは思ったけど…。
あれ、もしかして。
「名前ェ!弓持って来なさい!」
やっぱり!私がやるんですか!
自室にある弓を持って客間に戻り、黄瀬くんの真っ正面に立ち弓を構える。
黄瀬くんに憑いている生き霊達が祓われんとばかりに背中にしがみついている。
盾にしているつもりだろうか。
キリキリと弓を引き、黄瀬くんの眉間を狙い撃つ。
ぱぁん!という音と共に断末魔を上げながら生き霊達は消えていった。
「一発で祓うとは、慣れたものねぇ」
「誰かさんのおかげで何度も射ってますから。
……えっと、大丈夫ですか?黄瀬くん」
にんまりと笑みを浮かべた侑子さんを横目に、眉間に手を当ててこちらを凝視している黄瀬くんに声をかけると、
「…撃ち抜かれて死ぬかと思ったッス」
まあ、なんと失礼な。
「矢じゃない何かが飛んできたってのはわかったんスけど…なんだったんスか?
なんか体がスッキリしたというか!軽くなったッス」
「さっきのは "気" よ」
侑子さんが説明してくれるみたいだから今のうちに弓を戻してこようと小走りで廊下を進む。
ついでに紅茶と焼き菓子も持っていこう。