憑キモノ:前
今日は学校が休みだからゆっくり本でも読もうかと思ってたけど…そうはいかないみたい。
「ゆ…っ侑子さんんんんん!」
玄関先に女性の生き霊を沢山引き連れた、黄瀬涼太くんがいるんですけど!
……半泣きで。
「助けてほしいっス!ここ、願を叶える店ッスよね!?」
「わかったからちょっと落ち着いて!」
ガシッと両肩を掴まれて一気に距離が縮まる。
普通ならここで赤面するんだろうけど、彼の後ろに生き霊が沢山いるんですよ。
物凄い目付きで見られてるんですが。
「これはまた沢山引き連れてるわねぇ」
場所は変わって客間で侑子さんと黄瀬くんが話をしている。
「──で、アナタの願いは"その"生き霊達をどうにかしてほしい、ってことでいいのかしら?」
「あっ、えと…それもなんですけど…出来れば憑かれにくくしてほしいッス」
「…憑かれにくく、ね…。いいわ。その願い、叶えましょう。
ただし、対価をいただくわ」
「対価…?」
黄瀬くんは対価って?何?お金ッスか?みたいな表情でそれまで侑子さんに向けていた視線を私に向けた。
「与えられたモノには須(すべから)くそれに見合うだけの代償、代価が必要なの。与えすぎてもいけない。奪いすぎてもいけない。過不足なく、対等に、均等に。でないと、」
「キズがつく」
私の言葉に続けるように口を開いた侑子さんは黄瀬くんの頬に指を滑らせた。
「なに、に…」
「現世の体に、星世の運に、天世の魂に」