百物語:後
「この子、侑子さんが創ったんですね」
「二人で創ったんだけどね」
モコナがアヤカシを飲み込んだ後、少し涼んで休もうと、縁側に出てスイカを食べている。
きらきらとした笑みを浮かべたひまわりちゃんは、さっきみたいのは怖いけどこの子は可愛い、とモコナを手の平に乗せて可愛がっている。
ひまわりちゃん、不思議なものとか好きだったもんね…。
「そういえば、さっきの百目鬼くんの弓って矢、なかったよね」
「ああ」
「じゃ、あの飛んで来たように見えたのって…」
「"気"よ。ちなみに名前も同じように払えるわ」
百目鬼くんは魔や邪を寄せ付けず尚且つ、払うチカラがある。でも本人は修行もしてないし何も出来ないと話す。
先程の百物語中にお祖父さんが幽霊などをよく視ていたと話していたが、生前は憑き物落としをしていたとのこと。でもお父さんはそのようなことはまったく出来なかったようだ。
飲み物を持って来ると席を外した百目鬼くんの後を追うようにひまわりちゃんがパタパタと駆けていった。
「百目鬼くんのチカラも家系的なものよ、名前と四月一日とおそろい」
「苗字さんは全然いいけど!あいつとお揃いなんて嬉しかないです!」
「でもそのお陰で死体の隣で百物語なんかしても最初はアヤカシを視ずに済んだのよ」
ただ、アヤカシに好かれやすい私と四月一日くんがいてあれだけ盛り上がると百目鬼くんでも抑えきれないみたい。
「言ったでしょ、今夜は役者が揃ってるって」
アヤカシの元になる亡骸。
アヤカシを視るモノ。
アヤカシを視、惹き付け易いモノ。
アヤカシを視、惹き付け払うモノ。
アヤカシを払うモノ。
そして、妖の血を引くモノ。
百物語はもちろん、今後もアヤカシ関係で何か起こったら百目鬼くんに追い払ってもらえるから仲良くしときなさいという言葉に頭に血が上るから嫌だ!と嫌悪感を露わにした。
普段温厚な性格の四月一日くんだが、相手が百目鬼くんとなると些細なことでもケンカになる。それはアヤカシが原因で、仮に二人が仲良しで一緒にいたら、四月一日くんにくっつきたいアヤカシが払われてしまう。だからケンカするように邪魔してるんだとか。
「あの、アヤカシを視るモノって…僕のことですか?」
「そうよ。特別好かれたり惹き付けたりってことはないみたいだけど、何かあったら今吉くんが払ってくれるわ」
「じゃあ、ひまわりちゃんは?役者ってひまわりちゃんも入ってるんですよね?」
「あの子はね……」
私の問いに真剣な顔で切り出した侑子さんだったが、ビールの気配がする!と言って結局言わず終いだ。
どこまでも自由な侑子さんらしい。
「楽しくなりそうね、これから」