トリップ続編 | ナノ
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銀さんと朝御飯を食べてから沖田くんの病室に行ったら、丁度土方さんも居て退院の手続きをして来ると何故か疲れ果てた顔しながら言われたけど平然と起き上がり着替え始める沖田くんの方が気になって仕方無い。


「何でもう包帯巻いて無いの?しかも何でもう制服着てるの? 」

「そんな斬られた訳じゃねぇですからね、あんな拳いくら受けたって大した事無ぇんでさァ」


いやいやそんな訳無い、凄く殴られてたし蹴られてたもの。沢山血も出てたじゃない、一晩で回復する訳が無い。


「……私が来るから外したの?」

「そう思いやす?」

「思わないね」


目の前で殴られてるの見たんだから今更隠したって意味無いよね、と言うか沖田くんが隠す理由も無い。
でも頬にガーゼ貼ってるだけで、他何も無いなんてある?


「でもそんな直ぐ治らないよ、ちゃんと休まないと」

「そうは言いやしても働けって怒鳴るんでさァ。」

「そんなぁ、もー、可哀想に。」

「オイふざけんな、テメェがバズーカぶちかまして来るから暇なら働けっつったんだよ!」

「暇じゃねぇですぜ、ちゃんと楽しんでやす」

「人を楽しみながら抹殺しようとすんじゃねぇよバカなのか!?」

「冗談は置いといて本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ですぜ、そんな心配しねぇで下せェよ」


心配するに決まってるよ。

手続きが済んだらしい土方さんと一緒に病院を出るけれど昨日の今日でもう仕事が始まってしまうのか、沖田くんが悪戯するから。


「私は今日沖田くんの手足になるから何でもコキ使ってね。」

「なら先ずは土方さんの足止めしてて下せェ、取って置きの持って来やすから。」

「馬鹿言って無ェで大人しく見廻りしてろっての!」

「ちぇー」


元気そうに見える、でも今日は1日サポートさせて貰おう、傍に居て良いって言ったの沖田くんだもん。


「焼きそばパン買って来る?」

「それただのパシリじゃねぇか」

「パシリでも何でも良いんです」

「それより真っ赤な口紅なんて付けて誰か引っ掻けにでも行くつもりですかィ? 」

「いや違うよ、ちょっと唇切れちゃって隠してるの。」

「あぁ、旦那にがっつりやられやした?」


何で笑ってるのかな?

悪戯っ子みたいな顔をして隣を歩く沖田くんはとても楽しそうだ、でも私は全然笑える内容じゃ無かったよ、本当に窒息するかと思ったんだからね。銀さんは一切呼吸乱れてないのに私だけ必死に呼吸してたんだから、何か色々理不尽……、だけどまぁ良いや、これはもう解決した事だ。


「土方さんの襟に色付けて下せェ、それがアンタへの罰にしやす。」

「突然だね!? しかも土方さん巻き込んでる!副長に如何わしい噂立ったら困るよ、私だけにしよう?」

「早くして下せェ」

「そんな……っ!」


何でっ!しかもそれ私何も罰になってないよね!? 寧ろ土方さんが罰受けてるよ!


「それ私には何もダメージ無いよ?」

「俺が面白ければそれで良いんでさァ」

「そんなぁ……!」

「この辺に付けろ」

「え!? ……え? 何言ってるんですか土方さん、沖田くんの悪戯をそんな寛大に受け入れるなんて、マヨ切れた? 買って来ましょうか?」

「アホか、俺にも都合が良いんだよ」

「縁談断る口実にするつもりですかィ? つまんねぇー」


つまんないって、一体何を期待してたの……


「本当に付けるんですか?」

「あぁ、遊んでると分かればあっちから切って来んだろ。」

「副長の名に傷付きません?」

「端から綺麗なモンじゃねんだよ」


そんな事無いのに。でも付けろと言うなら良いか、一応これが罰になるらしいし、こんな罰にならないもので良いのかとも思うけど。


「取れなくなっても知らないですからね。」


スカーフの下にあるワイシャツの襟に軽く唇を押し当てて色を付ける、結構真っ赤な口紅だから軽くでも直ぐ付いちゃうと思うし。


「うわぁ、本当に如何わしい感じになりました。土方さん仕事中に遊んで来たんですか? いけないんだ。」

「写真もバッチリですぜ、名前さんの顔は隠しやしたけど一般女性に手ェ出した副長でイケやす。」

「権力とお金に物を言わせてやっちゃったんですか、流石鬼の副長。」

「お偉いさんの娘だからな、写真で捜索されねぇように気を付けろよ。見付かれば抹消しようとする輩も居る。」

「消そうか沖田くん!? そんな誤解で抹消なんかされたくないよ!」

「事実じゃ無ェですかィ、それ付けたのは名前さんですぜ。」

「その辺で遊んだ設定じゃないの!?」

「一般女性の名前さんで。」

「嫌だ!でも抹消するなら遊んだ土方さんですよね!何で遊ばれた方が抹消されないとならないんですか!」

「何でお前遊ばれた設定なんだよ、そっちから誘って来たかも知れねぇだろ。」

「私好きな人居ますから!土方さんが無理矢理させたんです! 」

「あぁ? ふざけんな抵抗もしねぇで何言ってやがる。」

「しましたもん!! 」

「あんなの抵抗の内に入らねぇよ」

「直ぐそうやって自分が正しいと言い張る! 」

「お前らヤったの? 」

「無理矢……って、銀さん!?」


あれ!? 何の話してるんだ今、勢い余って盛り上がり過ぎた!?


「その口紅お前のだろ? 」

「え!? あ、そ、そうだけどっ、でも違っ、違うよっ! ちょっと、土方さん何とかして下さいよ!」

「俺のせいにすんな、お前がノコノコ付いて来るから悪ィんだろ。」

「いや何の話!?」

「へぇ、ホテルまで付いてっちゃったんだ。俺だけじゃ満足出来ねぇってか?」

「誰もホテルなんて言って無いでしょ!? 何言ってるの!?」

「は? 副長室でヤったの?」

「何を!? 何もしてないっ!」

「往生際悪いぞ諦めろ、もう証拠残っちまってんだからな。」

「外かよ、流石の俺も外でヤろうとは思わなかったわ。」

「写真んんん!? ちっがうよ! これは土方さんが付けろって言うから!」

「言われたら何でもやんだ?」

「なっ!? ちがっ、!」

「すっげぇ修羅場でさァ」

「っ、……っ違うもん!! うぅ……っ、もうやだ馬鹿共がぁ!!!!」






────────






「んな怒んなよー、冗談だろ? 」


分かってるよ、冗談なのは分かってた。でも口紅の痕は紛れもなく私だから弁解しないとって思ったのにさせてくれないし、それ処か皆して違う方向持ってくしで、どうにも出来なくなって走り出したら直ぐ銀さんに捕まった。


「ほら」

「アイスだ! 」

「アイス1つで許すのお前、安上がり過ぎねぇ?」

「銀さんが変な誤解してないなら別に良いもん」


土方さんがアイスを買って来てくれた、自分じゃ買わないお高いやつだよ、喜ぶに決まってる。


「わーい、ありがとうございます! 3つある、銀さん私と半分こしよ。」

「俺はもう仕事戻る、お前らだけでやってろ。」

「あ、土方さんご馳走さまです! またお団子食べに来てくださいねー!」


アイスを置いてさっさと行ってしまった土方さんに少し声を上げて伝えたら、片手を上げて返してくれた。
きっと沖田くんが休めるようにアイス買って来てくれたんじゃないかなって思うけど絶対認めないんだろうな。


「あ、苺2つ入ってる、好み熟知されてるね?」

「嬉しくねー」


苺のアイスだよ、嬉しいじゃない。土方さんは口では文句言うけど、こうゆう時ちゃんと銀さんの分も買ってくれる。


「土方さんって大人」

「どうゆう意味だコラ。俺がガキだって言いてェの?」

「沖田くん苺も食べる?」

「食いやす」


思わず声に出しちゃう癖何とかならないかな、睨まれてる気がするから視界から外し沖田くんの口元にスプーンを差し出す。本音だけど、でも怒るから。


「私も見廻りするけど銀さんもする?」

「しねーわ、俺行く所あっから食ったら行く。」

「何処行くの?」

「源外ん所、手伝えってさっき連絡来たから面倒くせェけど行ってくるわ」

「うん、源外さんに宜しく。頑張ってね」

「おー、お前もパシリ頑張れよ」

「パシリでも何でも良いもーん、寧ろ私が見廻りするから休んでて欲しい」

「いや迷うだろ」

「アンタ探しに行く距離の方が長くなりやすよ」

「返しが速すぎてビックリする。知ってる所廻るんだからそんな遠く行かないし」

「「へぇ」」

「腹立つんですけど! 」


アイス食べながらこっち全く見ないで息ピッタリなのが余計に腹立つ!どんだけ迷う人間だと思ってるんだ、方向音痴じゃないって何回言えば納得するの。


「ごちそーさん、んじゃ行くわ」

「うん、ゴミ捨てとく」

「サンキュー」


私の頭にポンと手を置いた後、その流れで沖田くんの頭にも置いた。珍しいなと少し驚いて見てたら離れる瞬間に「どーもな」と言葉を残しそのまま歩いて去って行く銀さん。


「何だろうね今の」

「昨日のでしょう」

「昨日? 沖田くん銀さんと一緒に居たっけ?」

「アンタ守ってくれて "どーも" って意味でさァ」

「えっ、」


私を守ってくれたお礼言ったの?
……、それは、何と言うか、まるで自分の大事な物を守ってくれた時のような感じなのかな、それはまた、


「……てれる」

「旦那本当に怒ってねーんで? あん時は苛ついてしたけど流石に怒るかと思いやしたのに」

「んー、私も良く分からないんだけど怒って無いって言ってる。寧ろ自分と沖田くんの違いちょっと分かったって。」

「あれで?」

「沖田くんに触れられても私 女の顔しないんだって。銀さんの前でどんな顔してるんだろう」

「今更? 元々旦那に向ける顔は他と違いやしたけどね。 」


……それは聞かないでおこう。
銀さんが言ってるのはきっとドキドキする時の顔なんだと思う、そうゆう事にしよう。


「よしっ見廻り行こうか、でも歩き回るのは良くないからパトカーにお邪魔しちゃう?」

「ザキの邪魔しに行きやしょ」

「それ監察? 私行って大丈夫なの?」

「大丈夫でさァ」


本当に? 取り敢えずあんぱんと牛乳買って行こうとコンビニ行ったら、ホイップあんぱんと言うものを見付け感動して買ってしまった。これ絶対銀さん好きだと思う。



「あれ? 名前ちゃん?」

「お疲れ様です、私お邪魔しても本当に大丈夫何ですかね?」

「ウチで女中してたし大丈夫じゃないかな?」


そうゆう問題なの? だって監察ってお忍びなんでしょ?


「あ、差し入れです。あんぱん以外食べないって聞いたのであんぱん何ですけど、美味しそうなあんぱんもありましたよ、こっちも食べますか?」

「ありがとう、これホイップ? 」

「意に反します?」

「見張りしながらホイップ入りあんぱんかぁ」

「可愛いですね、お口にホイップ付いちゃう」

「やめとこうかな」


ちょっと笑っちゃった、真面目なお仕事中なのに良くない。


「ホシは?」

「まだ全然ですよ、動きナシです」

「あのお部屋ですか?」

「そう、あんまりじっと見ちゃ駄目だよ。視線って結構気付くからね。」


そうなんだ、それを気付かれないように見続けるのって大変だな。しかも一人でずっと?


「親子丼食いたくなった、名前さん出前取りやしょう」

「ここ出前取っても良いの? ひっそり監察してるんだよね?」

「出前取んねぇと餓死しちまいまさァ」

「あ、そっか。目離せないから外に出れないんだ。あんぱんの出前とかあるんですね?」

「いや無いからね、最初に買っとくし。気付いて名前ちゃん嫌がらせだから、俺の前で親子丼食べようとしてるからね隊長。」

「嫌がらせなの!?」


そんな呼吸するように嫌がらせするの? 自然過ぎて気付かなかったよ沖田くん凄いね。


「もう、ホイップあんぱんで我慢して?」

「嫌でさァ」

「じゃ買って来るから外で食べてね?」

「この部屋で食べねぇと死んじまいやす」

「そんな訳ない、何処で食べたって親子丼美味しいから大丈夫。」

「名前さんは俺が死んでも良いんで?」

「嫌だ! そんな事言わないでよ、じゃコソっと食べる?」

「君達何しに来たの? 帰ってくれる? 」


別にふざけていた訳では無いけれど、望遠鏡を片手に凄く冷めた目で山崎さんに見られた。


「静かにしよう沖田くん、怒られちゃうよ」

「暇なんでさァ」

「でもここ落ち着くし、今の沖田くんにはピッタリだよ。動きあったら直ぐ行けるし隊長が傍に居たら山崎さんも安心ですよね?」

「邪魔して来るけどね」

「ほら安心だって、一緒に見張ろう」

「言って無いよね? どんだけ隊長甘やかしてるの?」

「邪魔してくるけど "安心" ですよね?」

「……」

「くくっ」

「……大人しくしてて下さいよ。」

「へーへー」


山崎さんの傍なら沖田くんもリラックス出来るし、まだ安静にしといた方が良いと思う。
転がってアイマスクを付け始めた沖田くんに置いてあった毛布を掛けて、代わりに山崎さんのパシリでもしようかな。


「何か必要な物あったら買って来ますよ?」

「ありがとう、でも今の所大丈夫かな。」


無いみたいだから隣に座って窓の外を眺める、私があまり見てバレたら困るから違う所見てよう。

とても静かだ。気まずい空気でも無くピリピリした空気でもない、でも山崎さんは真剣な表情。
道行く人を何となく観察して、転んだ子供を心配してたら視界で何かが光った。
ビルの屋上だ、でも遠くて良く見えないな。


「……そう言えば、以前お姫様の所で何か光った瞬間に爆発しました。」

「何の話?」

「あそこのビルの屋上で何かが光ってます」

「……え? スナイパー? 」

「ホシが狙われてるんで?」

「いや違いますね、誰だろう。」

「面倒くせぇ、行って来るんで動いたら連絡して下せェ。あと土方さんにも連絡しといてくれやすか、予備の携帯あっちにありやすから」

「分かった、気を付けてね」


山崎さんは自分のお仕事あるからビルばっかり見てられない、予備の携帯で土方さんに伝えたら向かってくれるそう。
沖田くんまだ本調子じゃないし無茶しなきゃ良いけど。
ビルをじっと見てたら沖田くんが到着したのが見えた、普通に歩いてスナイパーの人に向かいそのまま隣に……寝転んだ?


「……え? ……何で沖田くんまでスナイパー?」

「何やってんのあの人」

「あ、電話。もしもし」

≪とっつぁんだ、娘の彼氏狙ってんだと≫

「え、沖田くんは?」

≪参戦すんだとよ、俺も逃げれねぇからこのままバカやらねぇように見張っとく。お前一人で帰れるか? ≫

「どうゆう意味ですか、帰れない訳が無いじゃないですか。沖田くんに帰るって伝えてくれますか?」

≪あぁ、そこ出たら右だからな。≫

「右? 何で右? だって左から来たのに」

≪お前は家に帰るんだろ、元来た道戻ったって結局分かんなくなって迷うだけだ。大人しく右に行けば知ってる通りに出られる≫

「そうなんですか、じゃあ右に行きます」

≪そこは素直で助かる。んじゃあな、山崎に今日中になんとかしろって伝えとけ≫



今日中に何とかって、それ山崎さんがどうこう出来る事じゃ無いのでは?
そしていちいち嫌みったらしいな。


「娘さんの彼氏を暗殺しようとしてるみたいです」

「またとっつぁん? 隊長も参戦するって?」

「らしいです、あと土方さんが今日中に何とかしろと伝えろって言ってました。」

「何とかって……全く。」

「何とか出来るもの何ですか?」

「まぁ出来る限りはするよ」


やっぱり凄いね山崎さん、無茶な要求にも応えちゃうんだ、だから頼られる。何とか出来ちゃうから土方さんも無茶言うのかな。


「頼られてますね山崎さん」

「はは、ただ押し付けられてるだけとも思えるけどね」

「土方さんが何とも出来ない人に何とかしろって言うとは思えないですよね」

「……名前ちゃんは皆の事良く見てるね」

「いいえ? 自分の大事な人しか見てないです、皆なんて見てる程、私は優しい人間じゃないですよ」

「そんなの、皆そうだよ。」

「ふふっ、山崎さんはとても頼られてます。沖田くんがフラりとここに来るのがその証拠、傍に居て安心出来るんですよ、おサボり上等ですよね?」

「……ははっ、そりゃ皆甘くなる訳だ」

「可愛いですからねぇ、ついつい。」

「名前ちゃんの事だよ。はいこれ」

「え?」


何これ、地図?

貰った紙には地図が描かれていた。これ部屋から出た所からの地図だ、電話の会話でわざわざ描いてくれたのかな


「……」

「ここは、一応見付からないように奥まった所にあるからね。表通りに出るまで結構分かりにくいからさ、初めて来た人には難しいと思うよ」

「……山崎さんだけですよ、馬鹿にしないでそんなに優しく教えてくれるの」

「気を付けて帰りなよ?」

「はい、ありがとうございます。」


優しい山崎さん、皆馬鹿にするのに言い方を選んでくれてる。とても優しいから素直にお礼言える。



・・・



分かりやすい地図のお陰ですんなり家に帰れた、ありがとうございます山崎さん。


「あ! 銀さんっ!」

「おー、早いな1日パシリすんじゃなかったの?」

「沖田くんスナイパー参戦するらしいから帰って来たの」

「は? スナイパー?」


誰も帰って来て無かったけど、階段上って来る音が聞こえて振り向いたら銀さんだった。
用事終わったのかな。


「美味しそうなパン見付けたから買ってきちゃった」

「パン? 珍しいな……って、おぉ! 」

「まるで銀さんの為のパンだよね」


あんことホイップの組み合わせなんて銀さん絶対好きだよ。


「すっげ旨そう! 丁度小腹減ってたから今食うわ。」

「飲み物持って来るね」


先に洗面所に向かって手を洗うと鏡に映る自分の唇がまだ荒れてる、それにちょっと腫れてる気もするし見ると思い出しちゃうから取れかけてた口紅を直してイチゴ牛乳を持ち戻れば、美味しそうにパンを食べてる銀さんの姿に口元が緩んでしまう。


「美味しい?」

「うん旨い、ホイップが特に旨い」

「ふふっ、良かった」


やっぱり山崎さん食べなくて正解だったかも、銀さんの口の端にホイップ付いちゃってるもん。

だけど指で取ってあげたら即座に舐め取られた、人の指に付いたホイップまで食べたいんだね。


そして唐突に、ふと思う。
1日吉原でお世話になった時、真っ赤な口紅付けてたのに銀さん特に気にもしないで重ねて来てたよね。そのせいで色が移っちゃってたのにそれも気にしてなかった。普通嫌じゃないのかな、こんな口紅べったりな唇。

ソファーに座る銀さんの隣に腰掛け、モグモグ動かす口元に唇を近付けたら動きが止まってこっちを向いた。


「ん? まだ付いてる?」

「付いてないよ、気にせず食べて?」


言えば本当に気にせず食べ始めたから頬を指で撫でてギリギリまで唇を寄せて見たけど、何も変わらずモグモグしてる。
しようとしてる事分かるよね? 頬だよ、こんな所に口紅べったり付くの嫌でしょ? 無反応なの?


呑気に食べてるから頬から少しずらし、唇の端目掛けてゆっくり押し付けて少しのベタつきを感じながら離れたら、とっても綺麗に唇の痕が付いた。


「うわぁ、すっごい、ふふっ、鏡持って来るから取らないで待っててね!」


食べ終わったらしい銀さんは言われた通り拭ったりしないで待っててくれた、クレンジングシートと一緒に持って来た鏡を顔の前に差し出したら「ふーん」と特に面白い反応も無く残念。別に嫌な顔してくれて良いのに、わざとべったり付けたんだから。


「すっげェ独占欲」


………………えっ、何それ、そんなつもりで付けてない。ただ口紅付けてみただけだよ、他に意味なんて無いもん。付いたの見てちょっと、ほんのちょっとだけ満足感のような優越感のような……でも違うもん、そんなつもりで付けないもん


目を細めて意地悪く口角を上げ笑ってる顔に、持ってきたシートを取り出し無言で近付けたら手首を掴まれて顔を反らされた、透かさず反対に持ち変えたけどそれも掴まれて力で敵う筈が無いから真っ正面に顔が来る訳で、


「離してよ!」

「何で? 取らなくて良いよ俺気にしねぇし。」

「嫌だよ私が気にする!」

「自分で付けたんじゃん」

「だから取ろうとしてる!」


何でこんな意地悪するの!取るって言ってるのに何で抵抗して来るの!? どうしてそんなにニヤニヤしてるの嫌だもう熱いし嫌だ。


「そんな真っ赤なっちゃって、随分カワイー事してくれんのね。」

「違うもん!そんなつもりで付けたんじゃないもん!」

「お前ムキになったら、もんって言うよな」

「え!? 」

「あとちょっと拗ねた時も言ってる」

「なっ!? 違うもっ、ちが、違うっ」

「はははっ!」


楽しそうに笑われて、悔しいけどそのお顔はとても好きだから力が抜ける。
上げてた腰をソファーに下ろしたら、わしゃわしゃ頭を撫でて来るから上機嫌らしいけど拭おうとしたら顔を反らしてまた逃げる。

結局抵抗され続けてお風呂入るまで痕が付けっぱなしだった、言うまでも無く新八くんと神楽ちゃんから痛いくらい視線を浴びたのは私だ。






もしかして気に入った?



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