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▼ お酒は二十歳になってから



依頼先のおじさんが夕食も用意してくれたみたいで、家も近いしそのまま神楽ちゃんを連れて帰ると新八くんから電話があった。


丁度良かった、と言うか絶妙なタイミングに少し驚く。



「軽く食べてから行く?」

「んー、そうだな。腹減ったし。」

「あ、ホットケーキの粉が中途半端に残ってたんだ。食べる?」

「食う。」


皆で食べるには少ない量になるから置いといたんだ。生クリームは無いからチョコ溶かしてかけようかな。

笑った顔のシンプルな絵を焼き上がったホットケーキに描いて持って行く。


「お、絵描いてある。」

「うん、チョコ溶かして描いた」


良かった、喜んでる。絵を見た瞬間子供みたいに嬉しそうな顔になった。



「そう言えばお前アイツらに言ったの?ヅラと知り合いだった事。」

「うん、言ったよ。ごめんね、銀さんの友達なのに告げ口するような事して。」

「いや、んなのどうでも良いがよ、俺の事何か言われなかったのか?」

「何も?聞かれても言わないけどね、私必要な嘘はつくし、はぐらかしもする。そんなに良い子じゃないよ。」

「どうもな。まぁ、ある程度知られちゃいるけどよ、でもオメーのが結構詳しいからなァ。」

「そうなの?ふわ夜叉の事も知られてるの?」

「白な、白。」

「あ、白ね。」


ずっと、ふわ夜叉で聞いてたから今更慣れないな。


「知ってる奴も多い。この際だから言っとくけど、お前結構危ないからな。アイツらの傍に居る事も俺の傍に居ることも、少なからず危険なリスクが伴う事は覚えとけよ。無ェようにはするけど、巻き添え食う事がこれから先無いとも言い切れねぇ。」

「うん、大丈夫。」

「お前さ、ちゃんと分かってんの? 即答で返事してっけど、何があるか分かんねぇんだぞ?」

「分かってるよ。例え何が起こっても傍に居たいもん。出来る限り足手まといにならないようにしたいと思ってる。」

「……お前は強いな、俺の話聞いてもビビんねぇし。」

「何処が。強くなんか無いよ、知ってるでしょ?私がグダグダ考える性格なの。自分がどうしたいのかも良く分からなくなる。銀さんが居ないと不安から抜け出す事も出来ない。」

「へぇ、そりゃ良いな。そのまま1人で生きて行けなくなれば良い。俺無しで生きてくなんざ出来なくなっちまえよ。」

「うわぁ、それ依存されてない?」

「依存、束縛大歓迎。俺から離れる気なんざ絶対ェ起こさせねぇようにするつもりだから。」

「えぇ、あれ、そんな話してたっけ今。ちょっと真面目な話をしていたと思ってた。」

「お前がスイッチ押すから」

「いやおかしいでしょ。銀さんのスイッチ緩すぎ。しかも何処にあったの?押せないように壊すから教えてよ。」

「お前には壊せねぇよ。」

「ぶっ壊します。」

「やめろ、余計な奴が浮かぶからやめろ。」

「え? あっ総督さん? 破壊活動してるテロリストだっけ。」

「あぁ。アイツはヅラと違って話通じねぇし、会う事は無ェと思うけど、万が一遭遇しても関わんなよ。即行で逃げろ。」

「そんなに危ない人なの?」

「危ねぇなんてもんじゃねぇの。絶対近付くな。」

「分かった。昔はヤクルコ奢ってくれて優しい人だったのにね。」

「マジでお前は何処まで知ってんの? そんな事まで聞いてんのか。」

「うん、誰が奢ったかで揉めたとか、結局ふわ……、…………」

「白な」

「白!白夜叉ね!」

「……、あー待て、何だこれ。なんでそれ言われただけで照れんの俺、キモいわ。」

「え?照れたの?」

「そんな笑顔でそれ言われる事無ェもん。」

「今日から白夜叉って呼ぶ?」

「絶対やめろ。」


その後も他愛ない話をしていると、あっという間に時間が過ぎて山崎さんが迎えに来てくれた。








「もう少し準備にかかるからここで待っててね。」

「はい、ありがとうございます!」


お手伝いをと申し出たけど、今日はお客さんだからとやんわり断られて銀さんと客室に案内された。


「お客さんとして来るの初めて。そもそも警察に来る事無いもんね。」

「だろうな。」

「銀さんあるの?」

「たまにな。お前みたいに来たくて来てるワケじゃねぇけど。」

「え、逮捕?」

「ちげぇっての。厄介事に巻き込まれんだよ。」

「あぁ、びっくりした。逮捕は嫌だ、会えなくなる。」

「……そうね。」

「銀さん強いから厄介事に巻き込まれるのかな? あ、ねぇ腕相撲しよう?」

「は?何で突然腕相撲?」

「片手どうなってるのか確認する。」

「まだ言ってんのかソレ。お前1人くらい余裕だってのに。」

「私両手使うけど良い?」

「おー、何でも来いや。オメーの力じゃ1ミリも動かせねぇよ。」

「1ミリもって……。勝てるなんて思ってないけど、1ミリもは大げさでしょ。」

「いんや、動かせねぇよ。」


凄い自信。別に勝てるなんて最初から思ってないし、ただどうなってるのか力入れてる腕確認してみたいと思っただけ。
でも1ミリもは大げさ、だって少し揺れたりするじゃんきっと。それで1ミリじゃん。馬鹿にされてるとしか思えない。



「はい、じゃあ良い?」

「いつでもどうぞ?」


口元に笑みを浮かべて頬杖つきながら右手を私と組んでる。

そこまで馬鹿にされると流石にイラッとしてしまう。



いつでも良いと言う銀さんに、最初から両手で、組んだ自分の右手甲に左手を添えて一気に力を入れて押した。


けど、……嘘でしょ。動かない、それこそ1ミリも。どんなに力を入れても全くピクリとも動かない。



「ふっ、…うぅ、っ、嘘でしょ、っ何で、っ、」

「だから無理だっつの。 」


これは本当に腕かと思うほど動かない。電柱でも押してる気分。しかも全然力入れてないよねこれ。筋肉動いてないもん、ただ腕を立ててるだけ。


「っは、ちょっと、休憩、」


軽く息切れをする私を他所に銀さんは変わらず頬杖を付いて笑ってる。


「くっそ、腹立つ。」

「口わりーなァ。初めから傾けといてやろーかァ?」



その言葉にカチンときた。


「傾けなくて良い。」

「ふーん? 」

「手首触って良い?」

「何でもどうぞ。」


再度右手を組み直す。今度は左手を銀さんの手首に添えて押す事にした。



「っ、も、…何でっ、動かない……っ!」

「だから言ってんだろー?」



何で全く動かないの!? しかも頬杖すら崩れない。本当に1ミリも動かなくて、でも諦めるのも悔しいから頑張って力を入れ続けた。

下を向きながら渾身の力で銀さんの右手に挑んでいると、突然私の右手の甲に温もりを感じた。

驚いて顔を上げると後ろから右手を覆うように手が添えられている。


「旦那ァ、2人くらい余裕ですよねィ? 」

「好きにしろよ。ガキに負けるほど落ちてねぇ。」

「へぇ、」


後ろから聞こえる声に沖田くんだと分かる。
私の後ろにしゃがみこんで左腕を首に回し背中にぴったりと張り付いてきた。


「おい、んな近付く必要ねぇだろ。」

「近付かねぇと力入れずらいんで。」


上を見上げれば沖田くんと目が合う。


「んじゃ、いきやすよ。」

「打倒銀さん!」

「いつでも来いや。」



手の甲にぐっと力が加わり、自分の力じゃ無いけどかなりの力で銀さんの右手を押してるのが分かる。さっきまでと全然違う。

なのに、



「っ、さ、すが旦那、簡単には、倒れやせんね。」

「、たりめーだろォが。」


銀さんの右手は倒れないし傾きもしない。でも頬杖は左手を拳握ってその上に頬を付けてるし、今度は右手にも力入れてる。筋肉に筋が出てきてるから。


いつの間にか沖田くんの左手は首から離れて、私を挟んでテーブルに置いてある。
膝で立って私の後ろから加勢してくれてるのに、全然倒せない、


「どうなっ、てんの!? たお、れないぃ!! 」



段々腕も疲れてきて、それでも細やかな抵抗として出来る限り力を入れ続ける。銀さんだって疲れてくる筈だし。


「は!? ふざけんなテメェ!!」


突然声を上げた銀さんに顔を上げると、私の右手に重なる3つ目の手。


「3人でも余裕か?」

「はっ、上等だコノヤロ−。」



一気に圧迫が増した。
手の平と甲からの力で、挟まってる私の手は潰れてるんじゃないかと思うくらい。


そして目の前の銀さんにさっきまでの余裕は消えた。

頬杖は崩れ左手は机に乗せて支えてるし、右手がふるふるしてる。と言うか、顔に出てる。歯食い縛って必死に耐えてるのが見て分かる。



「ふふっ、」

「馬鹿か、お前、笑ってねぇ、で、力入れろっ」

「はいっ」


皆各々で手加減してる、私の手が挟まってるから。


「くっ、そ!! あ"−!! 」

「勝、ったぁ−!」



ようやく銀さんの右手が倒れた。誰がどのくらい手加減してくれたのかは分からないけど、私は別として2人相手に銀さんやっぱり力強い。


「大丈夫?」

「俺よかオメーだろ。手ェ大丈夫か?潰れたんじゃねぇの?」

「大丈夫!楽しかった−!沖田くんと土方さんもありがとうございます!」

「遅ェから呼びに来てみりゃ、何やってんだお前らは。」

「腕の確認です!ちゃんと人間染みた感覚あるようでした!」

「お前俺の腕なんだと思ってんだよ。」

「サイボーグ? ここにいる3人共だけどね。」

「昼間の言ってるんですかィ?」

「だっておかしいもん。特に沖田くん、細マッチョなの?」

「脱ぎやしょうか?」

「いやいや脱がなくて大丈夫、そうじゃない、見たいとかじゃなくて、」

「そろそろ行くぞ。」

「あっ、はい!」






部屋に入ると近藤さんと、山崎さん、後数人の隊員さんが座っていた。


「お邪魔します、お招きありがとうございます!」

「いらっしゃい名前ちゃん! お酒好きと聞いて沢山用意したからジャンジャン飲んでってくれ!」

「わ−!嬉しい、ありがとうございますっ」


凄い!沢山お酒ある!


飲み会が始まって、最初暫くは注いで回りながら飲んでいたけど銀さんに止められて隣に座らされた。だからせめて銀さんに、と注いでいたのだけど、


「銀さん眠いの?」

「……ん、」

「少し寝させて貰う?」


既に殆ど目は開いていない。のそのそと私の後ろで横になり始めたと思ったら、お腹に腕が回ってきて腰に顔を埋めてきた。そのまま寝息が聞こえて来たから毛布取りに行こうと思ったけど無理だ。

例えお酒飲んでても何か掛けた方が良い。
どうしたものかと銀さんを見ていると、ふと隣に気配を感じ顔を上げると沖田くんが毛布を持って立っていた。


「やっと落ちやしたか。」

「やっと?あ、毛布持ってきてくれたの?ありがとう!」


渡された毛布を後ろの銀さんに掛けると沖田くんが隣に腰を下ろした。


「俺は名前さんとゆっくり飲みたかったんで。」

「そっか。ごめんね、途中から皆に注ぎに行けなくなっちゃって。」

「そんなのしなくて良いんでさァ。にしても全然酔って無ェんですね。結構飲んでやしたのに。」

「そんな事ないよー、楽しい気分になってるもん。」


沖田くんの持ってるコップに注ぎながらお酒を飲む。


「ありがとうね、誘ってくれて。しかもこんなに沢山美味しいお酒用意してくれて。」

「良いんでさァ。それより最近どうなんですかィ。心境の変化は出てきやした?」

「え? あー、どうだろう。特にこれと言って変わりは無いかなぁ。」

「手こずってやすねィ旦那。」

「んー、でも私が今まで通りが良いって言ったから、それを叶えてくてるんだとも思う。いつまでも甘えていられないんだけどね。」

「良いんじゃねぇですかィ?手の平で転がされる旦那ってのも中々面白れぇでさァ。」

「えぇ?どんな楽しみ方してるの。」


その後も何気無い会話をしながら飲んでいると沖田くんの頭が揺れてきた。


「沖田くん眠いの?」

「んー、……。」

「少し寝たら?」

「ん、」


一応相槌はうってくれてるけど今にも寝ちゃいそう。


「銀さんの隣に、」


私が言い終わる前に脚に頭が乗ってそのまま直ぐに寝息が聞こえた。


銀さんの隣に並んで寝てくれないと毛布掛けれないのに。
前と後ろじゃどう考えても届かない。

困った。



「総悟も潰したのか。」

「あ、土方さん。」


声をかけてきた土方さんの手には毛布が持たれていた。
無言で手渡された毛布を広げて沖田くんにかける。
良かった、これで大丈夫。


「毛布ありがとうございます。」

「お前ソイツらに甘過ぎじゃねぇか? そんなベタベタ引っ付かれてウザくねぇの?」

「暖かいですけどね?」


腰には銀さんが張り付いて、膝に沖田くんを乗せている。


「一緒に飲みませんか土方さん。注がせて下さい。」

「俺まで潰す気か。」

「え、私のせいなんですか? この2人。」

「オメー速ェんだよ。もっとゆっくり飲め。」


速い? そうなの? 私が速いから2人は潰れてしまったの?


「それは、申し訳無いことをしました。でも土方さん強そうだし、大丈夫ですよね?」

「……お前男騙せそうだな。」

「えー、どうゆう意味ですかそれ。絶対失礼なやつじゃないですか。」


それでも隣に座ってくれた土方さんにお酒を注ぎながら飲み直す。


「私土方さんとお話したい事あったんです。」

「あ?何だよ」

「題して、ドSって実は人肌恋しいの? です。」

「は?」

「前から思ってたんですけどね、ここに居るドS属性の2人。今更ですけど、人にベタベタするようなタイプには見えないんですよね。でも実際はくっ付いてきます。別に良いんですけど、意外だなって2人を知れば知るほど思うんです。」

「まぁ確かに俺も驚きはした。後ろの馬鹿は知らねぇが、総悟はこんな風に人に懐いてんのは初めて見た。いや、1人居たけど、」

「お姉さん、ですか?」

「……知ってんのか。」

「少しだけ。沖田くんに聞きました。病気だったと。」

「あぁ、当時は結構落ちてたけどな。今じゃ元気すぎるくらいだ。それでも、お前に会ってから良く笑うようになった。」

「そうですか。」


下を見ればあどけない顔をしながら眠っている顔。その栗色の髪をそっと撫でるように動かすと身体がこっちに向き顔を埋めるようにすり寄ってきた



「これからも、傍に居てやってくれ。」

「…………可能なら、私もそうしたいですよ。」

「……変化はねぇのか?」

「はい、今の所は。」


だけど、ずっとこのままって事はきっと無い。


「人肌恋しいのは寧ろ私の方かも知れないですね。」


いつか、この温もりが遠ざかる、それが分かっているから触れられて安心するのかも。


感情に更けていると横から頭を押されて傾いた。押した犯人である土方さんを見ると煙草を吸いながらお酒を飲んでいる。


「しけた面してんじゃねぇよ。今はあんだろ、前にも後ろにも。」

「……横にもあります。」


付け加えるように言うと、煙草を加えたまま口角が少し上がった。



「ん−なに恋しぃならァ、たっぷり触ってやろォかぁ?」

「銀さん起きたの?」


急に起き上がった銀さんは背中にぴったりくっ付いて後ろから両手首を握ってきた。



「 ちょっと何? 両手掴まれたら飲めないんだけど。」

「人肌足りてやす−?俺の体温も使って良いですぜィ」


いつの間に起きてたのか、膝に居た筈の沖田くんは私の正面に座っていた。テーブルが少し遠ざかってる、そこまでして何で正面に来たの。


「っ!ちょっ、何!? 銀さん!!」


後ろから首の横側を舐められた。手首を掴まれているから抵抗が上手く出来ない。


「いい加減に、っは? え、沖田くん何してるの?」


胸の下辺りに顔を寄せてきた沖田くんは抱き付いている訳ではない。だって手は腰に触れているのが分かる。しかも直に。


「沖田くん? 何してるの?」

「名前さんスゲェいい匂いしやす。」

「え、ありがとう?」



何これ、匂い嗅いでるの? 何故? と言うか良い匂いする訳無くないかな?絶対お酒臭いと思うんだけど。
そして腰触るのは止めて欲しい。くすぐったいし、軽くお腹もかすってる。止めて欲しい、お腹は駄目だよ。


「沖田くん、そろそろ離れ、……」


やっと分かった。酔ってるんだ。しつこく首舐めてきてる後ろの人も酔ってるんだ。
顔を少し上にずらした沖田くんは今噛んでいる。下着の縁を、服の上から。

通常なら有り得ない。沖田くんは触れてきてもこんな事してこない。


土方さんに目を向けると、横になって倒れていた。
何者かに攻撃を受けたかのようにお酒のコップを近くに落とし倒れている。きっと犯人は目の前の酔っぱらい。



「ねぇ、いい加減にしてよ。離れて。」


未だ手首を掴まれてて沖田くんを引き剥がす事も出来ない。掴んでる当人は首から顎のラインを舐め始めた。

何なのこの人達。例え酔ってるとしても何でこんな変態的行動をしてくるの?
まだ近藤さんのよう上半身裸で踊ってる方が可愛い。



「本当にいい加減にしっ、なっ!?ちょっとやめっ、」


耳に生暖かい感触。前からは腰にあった手が服の中を上って下着の直ぐ下まで来てる。



「っ、…この、いい加減に、しろ!!!!!!」


頭を前に倒し、思いっきり後ろにある顔に後頭部を当てる。そのまま胸元にある頭を膝で挟んで離し、こっちにも頭突きを一発。



「酔ってるからって何しても許されるとでも思ってんの?」



後ろに倒れた銀さんのお陰で両手が自由になった。振り向くと意識は無いのか動かない。

前にいる沖田くんも私に寄りかかるようにして倒れてる。こっちも意識は無いみたい。



「散々好き勝手して寝たの?」

「いやお前が気絶させたんだろ。」


声のした方に顔を向けると土方さんが頭を擦りながら起き上がっていた。


「土方さん大丈夫ですか?攻撃受けたんですよね?」

「あぁ、つかお前が大丈夫か? 」

「こんな変態的な酔っぱらい方するなんてびっくりですよね。」

「そうじゃねぇよ、いやそれもそうだけどよ。頭痛くねぇのか?かなりの音したぞ。」

「痛いですよ。思いっきりやりましたから」

「……らしいな。」

「凄いね名前ちゃん。沖田隊長やられちゃったの? 」


預かると言って隣にしゃがんだ山崎さんに抱きかかえたままだった沖田くんを引き取って貰った。

去り際に額を確認すると赤くなってはいるけど、まぁ、大丈夫。


「沖田くん、またね。楽しかった。」


聞こえてないだろう沖田くんの頭を撫でながら言って、山崎さんが背負って立ち上がる。


「万事屋の旦那はどうする? 」

「銀さんは私が見ておきます。ありがとうございます。」



後ろで床を広々使って倒れてる銀さんをそのままにはしておけない。せめて移動してもらわないと。

土方さんの手も借りてなんとか自分の近くに寄せた。
枕は無いから膝の上に頭を乗せて毛布をかける。
額はやっぱり赤くなってるけど、これも、まぁ大丈夫。


「ふぅ、やっと飲める。」

「まだ飲むのか。」

「だって美味しい。土方さんお酒強いですね。」

「気ィ付けて飲んでんだよ。だからあんま注いでくんな。」

「えー、何で気を付けるんですか?まさか土方さんも変態的行動を?」

「アホか、んな訳ねぇだろ。収集つかなくなったら困んだよ。」


そう言って顎で指した先を見ると近藤さんがズボンを脱ぎ出していた。


「えぇ、酔っぱらいだぁ。」

「あ、ヤベーな。あれ全部脱ぐわ、お前ちょっと目ェ瞑れ。」

「え?」


近藤さんは既に下着1枚。筋肉凄いなぁと呑気に考えていたら、その下着にまで手を掛けた所で目の前に白いものが映り込んできて続いて背中を打った。



「っ!びっくりしたぁ、…銀さん? 」


一瞬の事で状況を理解するのに時間がかかった。
銀さんが自分の胸元に私の顔を押し付けるように後頭部に手を置き、そのまま覆い被さるように倒れてる。

お酒は?私の持ってたコップは何処行ったの?

何とか銀さんをずらしてテーブルを見ると土方さんが私のコップを持っていた。
倒れる前に、手から取ってくれたんだ。


「銀さん?」

「急に、…動いたから、気持ち、わりー、」

「えぇ?大丈夫?吐くの?」


唸りながらも私を抱き寄せる銀さんは、きっと近藤さんが脱ごうとしたから視界を遮ってくれたんだろう。
意識無かったのに、具合悪いのに。


土方さんが近藤さんを止めてる声を聞きながら銀さんの背中を撫でる。


人肌恋しいのは、本当どっちかな。




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