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▼ 初飲みかんぱーい



買い物の帰りに土方さんを発見した。

昨日お世話になったし挨拶したいけど、こんな高頻度で話し掛けたら迷惑かな?と思いつつも歩き始めてる足に自分で苦笑いが漏れる。


「お疲れ様です副長。」

「あぁ、野郎の顔は克服出来たのか。」

「え、あ、はい、お陰様で。」


後ろから突然話し掛けたのに普通に返された。


「驚かないんです? 仕事中に話し掛けんな、とかも無いんですか?」

「はぁ?俺を何だと思ってんだ。近付いて来たの見えたしな。」


あ、知ってたんだ。


「昨日はありがとうございました、話し聞いて貰って、布団まで借りちゃって、あとお菓子美味しかったです!」

「大したことじゃねぇよ。」

「わぁ男前−」

「お前馬鹿にしてんな?」

「ふふっ、見廻りですか?」

「あと総悟探してる」

「ありゃ、おサボりで?」

「だろうな」

「じゃあ私も探しますね、何か呼び寄せるお菓子でも買って来ます」

「犬猫じゃねぇんだぞ。そもそもお前がその餌の役割果たせんだろ。」

「そう言えば私ホイホイでしたっけ…………何ですかね?」

「揉め事か?」


ガラスの割れる音が聞こえた、振り返って見えたのは窓が割れている高そうな車と、その近くに女性が1人。


「あ、運転手降りてきた、車のトラブルっぽいですね。」

「あ−、不味いな。」

「何がです?」

「相手が不味い。」

「相手、 え? 何あれ? 宇宙人?」

「天人だ。しかもお偉いさんに関わりのある奴らだな」


あぁ、天人。地球じゃない星から来た人。人?

お偉いさんに関わりあるなら入っていけない感じなのかな


何があったんだろう。車の窓が割れてるけど、女性が割っちゃった? 怒られてるっぽいし。それもかなり怯えてる、オドオドしてるのが見て分かるしずっと下向いている。


「仕方ねぇ、変装でもして行くか。」

「え?女装?」

「何でだよ、普通に男の格好で行くわ」

「なんだ残念。なら私が行ってきます。」

「は?」

「あの人かなり脅えちゃってて謝れてないし、その態度にも怒ってるのかも。車弁償ってなっても大丈夫です?」

「あ?それはこっちで何とかするが、本気で行く気か?」

「はい、刀持ってないし。私が駄目だった時は土方さんが女装して行ったら良いんじゃ無いですかね?」

「だからしねぇって。はぁ、気を付けろよ。」

「はい」




近付くと怒鳴り声の内容が聞こえてきた。


「何だぁその態度は!? 人の車傷付けといて謝りもしねぇのかよ!? 俺を誰だと思ってんだ?下市民の分際で!!」


貴方が誰か私も知らない。

格差って何処でもあるんだな、取り敢えず下手に出て謝れば良いよね。こうゆう人は自分が上だと認識が欲しいんだろうな。いきなり現れたら不自然だから多少大袈裟に行っとこう。



「お姉ちゃん!! 」

勝手に設定作って走って近付いた。


「お姉ちゃん? 申し訳ございません、姉は男性恐怖症で話す事も出来ないんです。代わりに私がお引き受け致します、姉が窓ガラスを割ってしまったのでしょうか?」

「あぁそうだよ!! そいつが瓶持ってぶつかって来やがってなぁ!!」

「そうでしたか、大変申し訳ございません。出来る限りの事はさせて頂きたいと思います、」

「はっ、お前ら下市民に弁償出来る代物じゃねぇんだよ」

「……では、何をさせて頂いたら宜しいですか?」

「頭下げろや。下市民らしく地面に這いつくばって詫びろ。」

「かしこまりました。 この度は大変申し訳ございません。」


言われた通り土下座して謝った。土下座しろって言う人本当に居るんだな。TV以外で初めて見た。


地面に座り頭を下げる私の元へ近付いてきたその人は目の前で止まり、私の髪を掴んで引っ張り顔を上げさせた。上げたと同時に顔に水を掛けられ反射的に目を瞑る。

乱暴に手を離され、後ろに手をついで倒れるのを防いだ。


「お似合いの格好だなぁ。お前らみたいなのと関わってる時間はねぇんだ、これっきりにしてやらぁ」


そう言って車で去って行った。





「っ、大丈夫ですか!? すみませんでした、今、タオルをお持ちします!」


怒鳴られてた女性が走って店に入って行った。目の前のお店この人のだったんだ。



あれ、待ってこれ水じゃない?



「おい!大丈夫か!?」

「うまっ!これ、めっちゃ旨っ」

「は? 」


お酒だ!これかけられたのお酒だった!しかも美味しいやつ!絶対高いやつだよ!


頬に伝う滴を指で掬い舐めると、やっぱり美味しいやつだった。


「うま、」

「……」


隣で黙った土方さんを見上げると引きつった顔して見られてた。


「お行儀悪いですよね、でも美味しい、あっち向いてて下さいな。」

「下さいなじゃねぇよ、あ−、まぁいい。大丈夫か?髪引っ張られてたろ、怪我は?」

「怪我無いです。あ、これかな?」


瓶が落ちてる、かけられたのこのお酒?


「まだ半分くらい入ってる。」

「おい飲むつもりじゃねぇだろうな」

「……駄目です?地面に触れてないから綺麗ですよ、」

「そうゆう問題じゃねぇよ。つーか瓶ごと飲む気か?」

「だって美味しい、勿体無いですもん。下市民が手出せないようなやつですよ、きっと。」

「下市民言うな。」

「せめてコップで飲みなせェよ」

「あっ、沖田くんだ!」


いきなり横から声が加わったかと思ったら沖田くんが歩いてきていた。


「探す前に来ましたね!」

「酒かけられて笑ってる女初めて見やした。」

「えっ、それは引いちゃった感じ?」

「昨日みたいな顔してるよりは狂ってて好きですぜ?」


そう言ってコップを渡された。何処からコップ出したの? でもコップが手にある。


土方さんを見上げると、呆れたため息を吐きながら、好きにしろ と許可が下りた。


「わーい。っん、うまっ!」

「名前さん、酒好きだったんですねィ。」

「うん、お酒好きだよ。」


美味しいお酒は尚好き。


「じゃあ今度飲みに行きやしょう。」

「うん!……うん? いや、駄目じゃない?沖田くん未成年だよね?」

「大丈夫でさァ。」

「そうなの?」


こっちの世界では未成年飲酒大丈夫なんだ。


「俺がルールなんで関係ねぇ」

「関係あるね、私が捕まっちゃう。」


やっぱり万国共通か。


「なら屯所で飲みやしょう。」

「警察で堂々と? 身内贔屓して貰えるの?」

「俺に錠かけれる奴なんかいやせん」

「隣に副長様がいらっしゃるよ」

「俺の方が強ぇ」

「ふざけんな、誰がてめぇに負けるかよ」

「あ−、揉めないで、ごめんね、」


「あ、あの、タオルを、」

「あっ、すみません、ありがとうございます。」


先程の女性がタオルを持って戻ってきた。
美味しいけどベタベタするから、有り難くお借りしよう。


「本当にありがとうございました。私、何も出来なくて、」

「大丈夫ですよ−、と言うか、お酒屋さんの方ですか?このお酒貴女のですよね? 私勝手に飲んじゃって、」

「あ、全然大丈夫です!それ、かけられてたやつ、すみません、」

「いえいえ、寧ろありがとうございます、美味しいお酒飲めました。」


勝手に飲んどいてあれだけど、払えって言われたら困る。高そうだし、


「あ、ならお礼にお酒差し上げます! 丁度取り寄せた良いものあるんです、少しお待ち下さい!」


そう言って走って行った女性の方。


「え、そんな、お礼の為にした訳じゃないのに……」

「自分の欲望には結構素直な所も好きですぜ。」



嬉しそうな顔しちゃったかな。だって良いお酒って、これが美味しいから絶対美味しいじゃんか。


「お待たせしました!これ、どうぞ!」

「えっ!? いや、1本で良いです、」

「1本は貰うんだな。」

「いえ!貰って下さい! 2つ種類違うんですよ、それが好きなら両方とも好みだと思います。」

「え、………………ありがとうございますっ」

「こちらこそ!本当にありがとうございました!」


仕込みがあるからとお店に戻った女性の方。とっても良い人だった。ここの女将さんらしく、遊びに行く約束もした。



「どうしよう、嬉しい。」

「結局2本貰ったな。」

「かなり自分の中で格闘してやしたが。」

「だって違うお酒って言うんですもん、気になるじゃないですか。一緒に飲みますか?」

「一緒に飲むときはこっちで酒用意しやすよ、良い酒見繕っておきやす」

「え、楽しみ。」

「パトカーで帰れ、送らせる。」

「え?いえいえ、大丈夫ですよ」

「酒の瓶2本抱えて買い物袋持てんのか?」

「あ、」


買い物袋の存在忘れてた。

「貸しなせェ。俺も行って旦那に説明しやす。」

「あ−、ありがとう、」

「これ羽織ってけ。」


そう言って土方さんは上着を被せてくれた。


「すみません、ありがとうございます。洗って返しに行きますね。予備あります?」

「あぁ、急がねぇし気にすんな。ありがとな、俺達じゃ動けなかったし助かった。」

「いえいえ、いつも助けて頂いてますから、役に立ったのなら良かったです。」


しかもお酒も貰っちゃったし。






「お前トラブルメーカーなの?」


私を見るなり目を見開き驚いた顔した銀さんは沖田くんの丁寧な説明により、呆れた顔に変わった。

屯所で飲みの約束をして直ぐに戻って行った沖田くんの背中を見送ってると銀さんが呆れながら言ってきた。


「でも、見てっ!お酒貰っちゃった!」

「……良かったな。」

「美味しいやつらしいよ!銀さんもお酒好きでしょ? 一緒に飲も!」

「あ−、」

「もしかして昨日の気にしてる?グラタン食べたしもう良いってば、銀さん飲まないなら私1人で宅飲みする。」

「いや、飲むって。」

「おつまみ作るね! 夜楽しみ−!お風呂入ってくる!」







神楽ちゃんが寝てから楽しむってのも何だか可哀想な気もするけど、未成年だし、ここはごめんねと言うことで軽くおつまみを作ってテーブルに持って行く。


「わーい、お酒。はい、どうぞー」

「おー、つーかお前と飲むの初じゃね?」

「あ、本当だね、バイトしながら飲んでても私仕事中だし一緒にでは無いもんね。んじゃ初飲みかんぱーい。」

「機嫌良いな」

「美味しいお酒を前にして機嫌良くならない人居る−?」

「まぁ確かにな。お、マジでうめぇな」

「ね!うま−!絶対飲み行こうあのお店。」

「酒屋だったんだって?」

「そうなの、一緒に行く?」

「行く。」


他愛ない話をしながら飲んでたらあっという間に1瓶が空になった。


「まだ大丈夫? 」

「……お前全然酔わねぇのな。」

「そんな事ないよ?気分良いもん。開ける?止めとく?」

「全然余裕だし。」

「んじゃ、開けまーす。」


あ、こっちも美味しい。お姉さんのお酒選び最高に好みかも。


「ねぇ、まだ酔ってない? 」

「ん−、微妙。なに」

「いや、昨日の事。私に言わせる意味あるって言ってたから何だったのかな−と思って。それとも無かったのかな? やっぱ覚えてないよね?」

「あ−、断片的には思い出した。」

「えっ、思い出せたんだ?凄いね?」

「お前記憶飛んだりもしねぇの?」

「しないねぇ。そこまで飲んだことはないかな。」

「すげぇな、」

「そうかな、それで? 意味は? 」

「ん−、確認?」

「確認?なんの?」

「ん−、」

「……ふーん、まぁ良いよ。分かった。はい飲も、」






酔わねぇように気を付けて飲んでるものの、こいつの注ぐペースが結構速くて負けそうになる。

俺の曖昧な返しに深く突っ込まず納得してないだろが納得したって事にしてくれたんだろう。


確認だった。こいつが俺を突き放せばまだ大丈夫じゃねぇかと思って、全然大丈夫じゃ無かったけどな。


上機嫌に酒を飲むこいつの頬を無言で触る。


「なに?」

「いや?」


意味はないと分かれば気にしなくなる。アイツにも普通に触られてるしな、今更か。


持ってる酒をテーブルに置き、腰を引き寄せ抱き締める。それすら抵抗しない。……いや、これもアイツにされてるか。アイツにされてねぇ事ってねぇの?昨日一緒に寝てたっつってたし、マジでねぇのかも。


…………普通、こう抱き締めたりすると甘い空気になったりすんだろ。まぁ、こいつがそんなもん持ってねぇ事ぐらい知ってる、知ってるけどよ。この状態で酒飲むか?耳元でゴクゴク聞こえんだけど。俺の肩の上で飲んでるよねこれ。マジかよコイツ、なんなの?


身体を離し顔を覗き込むと、案の定酒を飲んでいるこいつと目が合う。


「え? なに? 」


なにじゃねぇよ。そして唇舐めるのやめろ。


「……移動するか、今日天気良かったし星見えんじゃね」

「そうだね!寝室行く?」

「……おー。」


つまみはもう良いか、酒の瓶と自分のコップを持って立つと一緒に立ち上がり小走りで寝室の襖を開けに行った。


スゲーな走っても平気かよ。

俺普通に歩いてるけど結構キテる。こいつ飲むの速ぇから。



「星凄い! 丘で見たほどじゃないけど綺麗、」

「お前ん所はあんま見えねぇの?」

「私の家付近は街灯多いし、大きい道の近くだから明るいんだよね。」

「暗いと帰れなくなるもんな」

「そうなの、わざわざ明るい所選んで部屋借りてるから尚更。」


窓際に張り付いているこいつの後ろに腰を下ろし、腕を引いて外が見えるように向かせたまま足の間に座らせる。


目の前にある髪を弄りながら自分の膝の上にコップを持った手を置くと、即座に酒を注いでくる。だから速い。折角ゆっくり飲めんだそ?しかも二人っきりで。若干、いや、結構眠くなってきた。
髪から手を離し頭に頬をつける。



「ん? 眠い?」

「……うん」

「なら寝よっか。お酒ももう無いし。」


マジか。日本酒2本空かよ。


「私片付けてくるから、銀さん寝てて。」

立ち上がってスタスタ歩くこいつは、やっぱ全然酔ってねぇのな。


その場で後ろに転がり横になる。布団まで行くのだりぃ。でもここで寝たら多分怒るな。


ウトウトしてると襖が開いて目が覚めた。


「そんな所で寝ないでよ、ちゃんと布団行って寝て。」

「ん−、」

「はい、お水持ってきた。飲んで。」


なに、俺が酔ってんのに気付いてんの?

渡されたコップに口を付ければ腹は膨れてるのに渇いた喉が水を求めて一気に飲み干した。


「まだ飲む?」

「いい」

「なら布団行ってね、動ける?」

「うん」


この間程じゃないにしろ若干ふらついてるのが自分でも分かった。


「大丈夫?ごめんね、飲ませ過ぎた。」

「いや、へーきだって。まだ飲めるし」

「えー? ふふっ、ならまた飲も。楽しかった、おやすみ銀さん。」

「……こっちで寝ればいーじゃん。」


俺を布団まで誘導し寝かせた後に自分の布団へと向かう腕を掴んで止める


「私の布団直ぐそこなんだけど。」

「昨日1人で寝かせてやったろ。」

「どうゆう事?それが普通だよね」

「俺ねみーから。早く。」


少し強めに腕を引けば大人しく布団に入ってくる。しっかりため息は聞こえたけど。


後頭部に手を差し込んだだけで撫でれてた気がしないまま意識が飛びそうになってた頃、微かに声が聞こえた気がした。



「……んぁ?なに?」

「あ、ごめん寝てた? やっぱり明日にする」

「いや、おきた。何だって?」

「お仕事探そうかなって。身分証無いし難しいと思うけど、外で探せたらなって。」

「しごと?」

「そう。真選組で働いて思ったの。やっぱり外で稼がないとなって。緩めの何か探してみようかな。」

「ん−、まぁ身分証は無くても、割りといける。」

「え?そうなの? そっか、なら探してみるね」

「あんま無理すんなよ。」

「うん、ありがとう。ごめんね、もう寝て良いよ。」


確かにここだけじゃ好きなもん買ってもやれねぇし、いや既に自分で結構稼いでるけどなこいつは。


地に足着けようとしてんのは良い進歩だとは思う。



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