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▼ 抜け出す事なんて



沖田くんと歩くと殆どと言って良いくらい手を繋いでくる。しかも最近は指を絡めて繋いでくるから、いわゆる恋人繋ぎ状態。すれ違う隊員さん達に三度見くらいされてるのに沖田くんは気付いてないのかな。いやそんな事ないか、絶対気付いてる。今まで手を繋ぐ事なんて無かったから最初は気になってたけど今では銀さんとも普通に繋いでるし慣れてしまった。それよりも、今とても気になっていることがあって、悩んだ結果、やっぱり今日ここを出る前に聞いてみようと決心して口を開く。



「……ねぇ沖田くん。」

「何ですかィ」

「聞こうかどうか迷ってたんだけど、あっ、言いたく無かったらそう言ってくれて全然良いんだけど、」

「いいから早く言いなせぇ。」

「あ、うん、……昨日言ってたお姉さんの、事。いつも笑ってたって。……過去形だったの気になって。あ、いや、こうゆう詮索するようなの良くないの分かってるんだけど、多分嫌だろうなって言うのも分かってて、あっ、気分悪くっ、いっ!……たい、」


デコピンされた……しかも結構痛いやつ。

紙袋を持ちながら左手でおでこを擦って見上げると呆れた顔しながら見られた。


「何遠慮してんでィ。」

「こうゆうプライバシーな事聞くのは、どうかなとも思うわけで。」


「……へぇ。ならもっと親密な関係になっときやす? いちいち遠慮しなくて済むように。俺ァ別に遠慮も何も無い関係だと思ってやしたが、アンタがするなら仕方ねぇ。遠慮なんざしねぇ方が身の為だって、身体に教え込んでやりやすよ。あぁ、安心して下せェ、旦那と違って痛い思いはさせたくねぇんで、たっぷりじっくり可愛がる方にしやしょうか。ねぇ、名前さん?」

「ご、ごめんね!? 私遠慮してたね!ごめんね!! そんな関係じゃ無かったよね! もう本当、びっくりするくらい仲良かった!!」


今明らかに空気が変わった。繋いでる手に力が入ったし、何より口元は笑ってるけど目が全然笑ってない。おまけに空いてる方の手を腰に回されて自分に密着するように押さえた上で額同士を付けてきた。ううん、付けてくるなんて可愛いものじゃない。額で額を思いきり押してきてる。腰押さえられてて後退も出来ないし額の力強すぎて押されるがまま頭が後ろに倒れれば、沖田くんは上から額くっ付けたまま、加えて口元までも近付けて最後に私の名前を言った。まるで脅しをかけるみたいに。もう謝る以外の選択肢は私には無かった。


「そうですかィ? もう少し近付いといた方が頼りやすくもなると思いやすけど。」

「いやいや大丈夫!全然!頼れる!頼るよ!! それに見て、もう、充分過ぎるくらい近いよね!? ほぼゼロだよ!? ねっ?」

「ほぼであってゼロではねぇでさァ。ゼロにしたら分かりやす?」

「しなくても分かった! もう分かった!バッチリ分かった!!」

「本当てすかィ?」

「本当本当!」

「なら良いですけど、じゃ次はゼロで。あ、軽いゼロで終わるとは思わねぇで下せェよ。ガッツリ行かせて貰いやすから。」


目がマジだった。冗談だと思うけど確信が持てないくらいは目がマジだった。


詰めていた距離を戻してくれて、手を引かれながらまた廊下を歩き出す。



「病気で亡くなったんでさァ。いつも笑顔で、俺に甘かった。こんなろくでもねぇ俺を、自慢の弟だと言ってやした。」


「……そっか。ありがとうね、教えてくれて。優しいお姉さんだったんだね、沖田くんと一緒だ。」

「……俺は、別に優しくねぇ。何もしてやれなかった。」

「それは無いよ。人の気持ちを断言は出来ないけど、でもそれは無いって言える。何もしてあげられなかったって思ってるのは沖田くんだけだと思うよ。沖田くんは優しい。お姉さんが自慢の弟だって言うのが分かるもん。」

「時々マジでアンタにちゅーしてやりたくなりやす。」



突然話が変わった。
終わりなの?お姉さんのお話終わっちゃったの? それとも黙れ的な……


「……ごめん、何も知らないのに、」

「なんだアンタもしたいんで?言って下せェよ。別にちゅーくれェいくらでも、」

「うっぁ、ごめっ、違っ、遠慮じゃないよ!? 」

片手で頬を捕まれて勢い良く近付いてきた。
てか、これちゅーじゃないよね!?
口開けて噛み付かんばかりに唇ギリギリまで寄せられている訳で、いやもう噛まれるギリギリ。


「気ィ使うのも遠慮と変わんねェんで。」

「そんなっ、だっていきなり話変わったから、っね、取り敢えず離れよ!?」

「されてェのかと思いやして。」

「違うって!しかもこれ、噛まれそう。」

「ガッツリ行くって言いやしたでしょう」

「だって!話突然変わったじゃんか!」

「照れ隠しでィ」

「え? 照れ隠しだったの?」

「触れてェとは思いやしたけどね。」

「ならハグは?」


そう言うとやっと離れてくれた。繋がっていた手も離れ背中と首の後ろに腕を回して抱き付いてきたので私も背に腕を回して抱き付くと、肩口に頭をぐりぐり押し付けられた。


「……アンタ全然嫌がんねぇな」

「ふふっ、それ今更。」


思わず笑うと「確かに」と笑いながら言う沖田くん。


「別にアンタを姉上と重ねてる訳じゃねェんですけどね。ただ、俺に甘い所とか、被りやす。」

「それは、どうゆう気持ちなの?」

「良い意味」

「なら嬉しい。」

「嬉しいんで?」

「勿論、凄く嬉しい。」

「ふーん。なら遠慮なく行きやすぜ?」

「遠慮したら、女装させるからね。」

「それアンタが見たいだけでしょう」

「バレた」

「そんなに見てぇならしてやりやしょうか」

「え!? 本当に!?」

「いや喜び過ぎ」


だって見たい!凄く見たい!

身体を離して沖田くんの顔を見ると呆れた顔しながらも笑っていた。


「んじゃ今度潜入捜査アンタも来やす? 」

「潜入捜査?」

「危なくねェやつなら女のアンタが居てくれた方がこっちも助かりやすし。女装して潜入もたまにあるんでさァ。」

「女装して潜入! それは素晴らしい!! 邪魔にならないのなら是非っ!」

「こうゆう時はすげェ素直。」

「沖田くん絶対似合うと思う。絶対可愛い。」

「どーも。行きやしょうか、旦那怒ってるかも。」

「え!それは困る!!」


焦って進もうとする私の手を握り、沖田くんも歩き出した






「銀さん!ごめんね遅くなって!」

「いんや、予想はしてた。お疲れさん。」


銀さんは全然怒ってなかった。それ所か緩く笑って労りの言葉までくれた。良かったと思いながら笑って近付くと、


「それは良いんだけどよ、何でお前ら毎回毎回手ェ繋いで来んの? しかも指絡ませやがってよォ。」



近付いてた足が止まりそうになる。
違う所で怒ってた。


「嫉妬ですかィ? 」

「はァ? 違いますけど? 俺も繋ぐしィ? 」

「恋人繋ぎで?」


沖田くんが繋いでる手を上げてそう言うと銀さんは口元を引き吊らせた。

「沖田くん、銀さん怒りそうな空気醸し出してるよ」

「こんなんで怒るようじゃ困りまさァ。」

「オイ、どうゆう意味だ」

「そのまんまの意味ですぜィ。名前さん取り敢えずお疲れ様って事で、また直ぐ会いやしょーね。」

「うんっ、本当に沢山ありがとう。楽しかった!」

言いながら頬に唇を当ててくる沖田くんに気にする事なく笑って挨拶をした。
手を振って銀さんに向き直ると眉間に皺を寄せてこっちを見ていて、


「何ナチュラルにちゅーされてんの?抵抗も動揺も何もねェのな。日常茶飯事だってか? 」

「機嫌悪い……」

「悪くねェし。」

「旦那ァ、乱暴しねぇで下せェよ。」

「しねーつの。挨拶はすんだのか?」

「うん。したよ、」

「んじゃ、帰んぞ。」

「名前さん、次はガッツリしやすからね。」

「おい待て、何が? 何がガッツリ?」

「沖田くんわざとでしょ。沖田くんが何か言うと銀さん機嫌悪くなるんだけど。」

「だって面白ェし。」

「何も面白くない。」

「なァ何がガッツリだって?」

「ちょっ、と!銀さん!!」


沖田くんの方を向いて話していると後ろから首に腕を回されて顔を覗き込むように近付けてきたと思ったら、頬を舐めてきた。さっき沖田くんが触れた所だ。


「なに、俺は嫌がんの」

「はぁ?沖田くんは舐めてこないから!」

「あぁ、ちゅーが良かった?」


そう言って唇を付けてくるけど、これ違う、首に痣付けた時と同じやつ。強く唇を押し付けてきて、そのまま舐めてる、けど絶対それだけじゃない。


「やめて銀さん!何してるの!? 」


銀さんを押してもピクリとも動かない、顔を逸らそうとしても空いてる手で側頭部を押さえられて動かせなかった。


「銀さん!! やめてってば! 絶対違うことしてるでしょ!?」


聞いてないの!? 全然離してくれない。
沖田くんは携帯を手に持ってこっちに向けているし。これムービー撮ってるよね。


聞こえちゃうかな。
大きく息を吸って、


「土方さん!!」

「っ、はァ!? なんでアイツの名前出すワケ? 」

「だって離れてくれないから」


土方さんの名前を叫んだら離れてくれた。流石に本人には聞こえなかったよね、良かった。


「おい、何やってんだ。」

「土方さん!? 」


聞こえたの!?


「は? そこまで大声でも無かったろ。こいつの声聞こえたワケ?」

「たまたま近くに居ただけだ。警察の前で堂々と婦女暴行たァ、余程しょっぴかれてェらしいな」

「土方さん汗スゲェや。どっから走って来たんで?」

「走ってねェよ。これは、アレだ。水浴び。」

「へぇ。まるで全力疾走したみてぇでさァ。今日離れの部屋で書類整理でしたっけ。」

「……は? ちげぇし。ゆっくり歩いてきたし。たまたま近くに居ただけだし。」

「おいおいマジかよ。どんなレーダーしてんの?ストーカー?」

「アァ!? たまたま近くで聞いた奴が連絡寄越して来たんだよ!!!! 」

「連絡受けて走って来たんで? 速かったですねィ。新記録じゃねぇですかィ? 密会相手となると心配にも熱が入るみたいで。」

「なに、お前ら密会する予定あんの? へぇ。ちょっと詳しく聞かせてくんねェ?」


なァ。と言いながら顎を掴まれて無理矢理顔を向き合わされた。

状況が更に悪くなった気がする。


「やめろいい加減にしろよ。」

「あ? なに、こいつに名前呼ばれて喜んだりしてるワケ? ナイト気取りか?」


何これ私のせい? もうどうしたら良いか分からないんだけど。



「旦那ァ、もう帰った方が良いですぜィ。その人疲れてやす。」

困り果てていると沖田くんが救いの手を出してくれた。

その言葉に銀さんは私に視線を下ろし目が合うと、ため息を吐きながら私から離れスクーターに向かって行った。



「旦那」

沖田くんの声に背中を向けて歩いていた銀さんが振り向いた。

あ、私ついて行って無いじゃん。行かなきゃ。

でも足が動かなくて立ちすくんでいると少しびっくりした顔して銀さんが戻ってきた


「悪い、別に怒ってねぇから。んな顔すんなよ。」


人差し指でさっき舐められた頬を撫でられる。
怒ってないのかな。じっと銀さんを見ると、「待ってるし、行って来い」と言われて、2人の元へ向かう事にした。


「帰りますね、ありがとうございました。」

「泣かされたら言いなせェよ。」

「ううん。でもありがとう沖田くん。さっきも、ありがとうね。 土方さん、来てくれてありがとうございました。仕事中でしたよね、ごめんなさい叫んじゃって。」

「いや。笑ってろよ、またこじれんぞ。」

その言葉に笑って頷く。


銀さんは待ってると言ったその場所で待っていてくれて、近付くと手を差し出された。その手を握ると黙ったまま引いて歩いてくれた。






家に帰ると笑って出迎えてくれる2人にほっとして心が温かくなる。
真選組も血は繋がってないけど家族みたいに温かい。私にとってはここが温かい場所。





夜、布団を敷いていると銀さんも同じく敷き出した。

あれから怒ってる訳ではないと思うし特別機嫌が悪い訳でもない。でも何かを考えているのか難しい顔をしてる気がする。気まずいとまではいかないけど、会話らしき会話はしてない。

と、思った瞬間だった。

銀さんの考えてることがまるで分からない。まだ沖田くんの方が分かりやすい。例えば触れてきても、温もりを求めている様な感じがある。話してる途中とか突然後ろからとか抱き付いてくる事はあるけど、悪戯半分って感じだしそこまで疑問にも思わない。

けど、銀さんは分からない時がある。

今、布団を敷いていた腕を掴まれて抱き付かれるように倒された。そして銀さんは上に乗ったまま動かなくなった。そこまで重くないから完全には乗ってないんだろうけど、何で突然。だって会話もして無かったよね。沖田くんみたいに驚かせようとって感じでもない、だからこそ意味が分からない。


「……このまま寝たら怒る?」


何で突然弱々しいモードなの? さっきまで微妙な空気だったよね。


「怒らないけど、でも出来れば横向きが良い」

言うと一度起き上がった銀さんが電気を消しに向かった。
一体何を考えているのか。取り敢えず掛け布団踏んでるし起きなきゃと思うも一瞬遅れてしまい、動く前に銀さんが戻ってきた。


「わっ、」

手を付いて上半身を起き上がらせようとすると横から伸びてきた手が背中と膝の裏に差し込まれ、身体が浮いた。
自分の膝の上に私を置いてから掛け布団を剥ぎ、また浮いて銀さんは布団に上がった。だけど何故か私を下ろすこと無く自分の足の上に乗せたまま。

胡座をかいてその上に横向きで座らせられている。


「……どうしたの?」

「いや、」

何だろう。ハッキリしない言い方だ。


背中を支えられてるだけだから、降りようと思えば直ぐにでも降りれる。でも煮え切らない態度に何かあるのかと思ってしまう。


「何でも無いなら降りるよ。……何かあるなら、言ってよ。」

「……あ−、いや、……されたの?」

「された?何が?」

「いやだから、次はガッツリいくとか言われてたじゃん? あれ、そうゆう意味だろ? だからされたのかなって。」


ガッツリ? ……あ、沖田くんの?

「口にって事? されてないよ……触れて無いからされてない、よね?」

「 触れてねぇんだな?」

「触れてない。」

「ふーん。」


ふーんって。自分で聞いたくせに興味無さそう。

もしかしてここに座らされてる意味って特に無いのかなと思っていた時、銀さんは親指で私の唇に触れた。

突然なに?

じっと銀さんを見続けていると指が離れて今度は頬を包むように手の平を当てた。軽く指先で耳の裏まで触ってきてる。


「ねぇ、くすぐったい、やめてよ。」

「嫌とは言わねぇんだ」

「言って欲しいなら言うけど。」

「なら言わないで。なぁ、頬っぺにちゅーしてくんね?」

「は?」

「だから、頬っぺにちゅーして。」

「なんで? さっきから意味が分からない。」


やっぱりこの体勢に意味は無いみたいだ。何か言いたいことでもあるのかと思ったけど気のせいかな。
ならもう良いや。銀さんの足から降りよう腰を浮かせると頬に触れていた手が離れて太腿に腕を置かれた。しかも力を入れてくるから浮いた腰は一瞬で戻されまた座らされる。


「なに?私もう寝るよ。」

「おー、したら寝かせてやるよ。」

「なんなの? 」

「だからしてって。」


本当に何なの。でも面倒だしいいや。


脚に腕を置かれてて届かないから、両手で銀さんの顔を挟んで近付けてから頬に唇を付けた。


「、これでいい?」

「……まだ。」

「え?まだ? まだするの?」

「うん。」


何故? 顔を引いて銀さんを見ても前髪で隠れて表情が分からない。


「…………、はい。もういい?」

「だめ。」

「え!? いや何で? おかしいでしょ、何回したら良いの」

「俺が満足するまで。」

「なにそれ。もう終わり、寝るよ。」

「じゃあ後1回。次が最後でいい。」

「……したら寝るからね。」


軽く頷いた銀さんを確認して、もう1度顔を挟んで引き寄せると少し力が入り過ぎたのと、簡単に銀さんがぐらついたのが加わって思ったより勢い良く頬にぶつかった。

勢いがあったせいで軽くリップ音まで鳴り響く


「っん、わぁ、ご、ごめん。結構な勢いついちゃた。」

慌てて頬を指で拭いたけど歯はぶつかってないから傷は無さそう。


「音まで鳴っちゃって、ごっ、うわっ!」


突然銀さんが後ろに倒れた。私の背中を支えてた手はいつの間にか頭を庇うように添えられていて銀さんの上に乗る感じになる。上半身を起こして顔を上げると銀さんはもう片方の手で顔を覆って動かない。


「え、どうしたの? 」

何も言わない。乗る体勢から転がってる銀さんの足の間に座る格好に直して眺めるも動きもしない。


「本当にどうしたの? 最後のはわざとじゃないよ?勢い付きすぎちゃって、キモかった?」

「ちげぇよ。」


あ、喋った。


「なら何してるの? ……ねぇもう寝ても良い?」


正直もう寝たい。 銀さんさっきから何がしたいのか分からないし、もう寝ても良いかな。



「ね、布団に足乗ってて邪魔なんだけど、退けてくれない?」

「余韻に浸らせてもくんねぇのな」

「え?」

「別に期待なんざしてねぇけど。……起こして。」


何なの?期待してないのに起こせって? 手を伸ばしてるし引っ張れって事だよね?


「そんな事言われてまで引っ張るの嫌なんだけど。」

「ちげーっつの。別の話。ん、起こして。」


伸ばす手が2本に増えた。

仕方無いから座ったまま手を伸ばしてこちらに伸ばされてる手を掴む。
力を入れて引っ張ると案外あっさり起き上がってくれた。けどそのまま勢い良く顔が近付いてきて頬にぶつかったと同時に先程同様リップ音が耳に届いた。


「わりーわりー、勢い良く起きすぎたわ。」

「嘘でしょ。絶対わざと。」

「寝るぞ」

「え、やっぱりこっちで寝るんだ。」

「横向きになら良いんだろ」


確かに言ったけど。渋ってる私の腕を引き布団に入って抱きしめられた。




「……銀さん、もう機嫌悪くないの?」

「は? あ−、悪いな。迎えに行った時のやつ言ってんだろ? あれはお前にじゃねぇから。悪い、気にすんな。」

「……銀さんの、背中に抱き付くのは好きだけど、背中向けられるのは…………、」

「悪かったって。置いてったりしねぇから、あんな顔すんなよ。」

「……どんな顔。」

「捨てられた仔犬みてぇな顔?」

「捨てられたって一人で生きて行くもん。」

「捨ててねぇし。」

「でも背中向けた。プイってした。」

「……何したって?」

「したじゃん、プイって。突き放した。」

「…………プイって。」

「銀さんは、手元にある物捨てる時って急に要らなくなる? 徐々にじゃなくて、もう要らねぇやって思って直ぐ捨てるの?」

「ごめんな!? ホントごめんな!! そんなトラウマレベル植え付けちゃった!? ちげぇから、マジでちげぇから! あれは自分にだから! お前疲れてんの気付かないで感情だけで動いてた自分に腹立っただけだから!!」

「え? 自分に腹立ててたの?」

「っ、そ、うだよ、……だから、お前にじゃねぇの。」

「そうなんだ。じゃもう自分に腹立てなくて良いから。」

「お、おー、頑張るわ」



どんどん甘えた人間になってるな私。このままじゃいけない、それは分かっているのに。触れられてる温もりにこれ以上ない安心を感じてしまって、もう抜け出す事なんて出来ないんじゃないかとも思う。





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