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▼ お家に帰ろう



「送ってくれてありがとう、行ってくるね。」

「お―、全力で振り撒いても最初の約束は忘れんなよ」

「ふふっ、分かってるよ―」


今日はここでのお仕事最終日。銀さんに見送られていると、ふと目線を私の後ろに向けまた私に戻して笑った。

きっといつも門まで迎えに来てくれる彼が来たと言う合図。

全力で笑う。そう昨日銀さんに宣言した。

聞こえてきた足音に口角を上げて銀さんを見上げると、笑って軽く頷いてくれた。どうやら笑顔は合格らしい。


直ぐ後ろまで来た足音にくるっと振り向き沖田くんを見る。頬はやっぱりまだ赤い。
じっと私を見つめる沖田くんに、にっこり笑って挨拶をする。


「おはよう、沖田くん!」

「……おはようごせェやす。」

少し間を置いて笑って挨拶を返してくれた。

「合格?」

「追試は勘弁してやりやすよ。」

「やった。」


笑いながら銀さんに振り向くと頭をポンっと撫でられた。


「んじゃ行くわ。」

「うんっ、ありがとうね。」



手を振って銀さんの背中を見送る


「旦那のお陰ですかィ?」

「うん、昨日星を見に連れて行ってくれたの。あのね沖田くん、今日時間あるかな?前言ってた質問に答えたいと思うんだけど。」

「良いですぜィ。なら買い出し付き合うんで、そのまま休憩貰って下せェ。」

「うん、分かった!」






「失礼します。コーヒーをお持ちしました。」

「あぁ、入れ」

「こんにちは、土方さん。相変わらず煙部屋に籠っているみたいで。そろそろ下界の空気吸った方が良いんじゃないですか?」

「………俺だって下界に暮らしてるわ。」


私の言葉にびっくりした顔して振り返った土方さん。昨日ご迷惑をかけて、しかも凄く心配してくれた。


「ふふっ、失礼します。」


部屋に入って近付きいつもの場所にコーヒーとおにぎりを置いた。


「昨日はご迷惑をお掛けしました。醜態を晒してしまいまして、本当に申し訳ございません。」

「何だいきなり。やめろ気持ち悪ィな。」

「ひど、本当に反省してるのに。」

「いいっつの。悪いと思うなら笑ってろ。」

「……甘い。土方さんも相当甘いです。駄目ですって、私あちこちで甘やかされてるんですから、誰かが厳しくしないとつけ上がりますよ。」

「ほぉ、なら小屋掃除してきてくれるか。没収した代物で溢れ返ってんだ。あんまり使わねぇから電気も何もねぇけどな。」

「…………土方さんに、おにぎり作ってみたんです。マヨネーズ混ぜ込んで、具もマヨネーズたっぷりですよ。」

「なに話題変えてんだよ」


だって電気つかない小屋の掃除とか嫌だよ。怖い。厳しくしないとって言ったのは私だけど、でもその厳しさはいらない。


「どうぞって」


フン、と鼻で笑いながらおにぎりを口に入れたら目が少し大きくなり、ゆっくり咀嚼した後、横目で私を見た。


「どーですか、副長。」

「……うめーわ」

「ふふっ、頑張りました! じゃ、小屋掃除はナシと言う事で!」

「しゃーねーなぁ。」


きっと最初からさせる気なんて無かっただろうけれど。


「お菓子沢山ありがとうございました、皆で食べましたよ。」

「あ? あぁ、皆でって、奪われたの間違いじゃねぇのか?」

「いえいえ、私も食べましたもん。新商品のお高いチョコまで入ってまして、めちゃくちゃ美味しかったです!」

「知らね―よ適当に選んだ。」

「沢山、ありがとうございました。本当に。5日間あっという間でしたけど、凄く楽しかったです。ここで働けて良かったです。皆さんに会えて良かった。」

「まるで別れの挨拶見てぇだな。」

「だって真選組とか簡単に来れる所じゃ無いですもん。沖田くんと土方さんには特にお世話になったので、挨拶は大事かなと。」

「遊びに来れば良いだろ。」

「え?いや、何言ってるんですか副長。一般人が気軽に遊びに来れる場所では無いですよ。」

「一般人じゃねぇだろ。ここで働いてたんだ。」

「……でも、依頼で来ただけですもん」

「依頼だろうが何だろうが仕事は仕事。それにお前持ってんだろ?制服。」


……持ってる。
返さなくて良いと言われたから家に置いてある。でもあれは流石にもう着ないよ?


「遊びに来たいなら来りゃいい。好きにしろよ。」



やっぱり甘いな。何でこう皆甘やかしてくるのかな。



「……副長室にも?」

「煙部屋だけどな。」

「ふふっ、」


でも知ってる。私が来る前に窓開けるようにしてくれてる事。最初に来たときよりも換気されているから。


「じゃ―遠慮なく。後でやっぱり邪魔とか言うのナシですからね。」

「お―、オメーが居ると総悟が大人しい上に探す手間が省けるからな」

「え、 まさかその為に? 私沖田くんホイホイ?」

「ははっ、それイイな。しかも効果抜群だ。」

そう言いながら襖を指差したので目を向けると、直ぐに開かれた。


「やっぱりここですかィ。」

「……沖田くん。」


まさかの噂の人物が現れて土方さんを見ると「ホラな?」と沖田くんに聞こえないくらいの声で笑いながら言ってきた。


「いつまでもこんな所に居たら病気になりやすよ」

「大丈夫だよ。土方さん私来る前に換気してくれてるし、煙草も咥えてるだけで火ついてないもん。」

「……うっせェな。」

「あ、今の返し銀さんそっくり。照れ隠しのうるせぇな。」

「アァ!? 」

「え、怒った。そんなに嫌ですか。」

「胸糞悪ィ。」


え−似てるのに。


「買い出し行きやすよ。」

「うんっ。じゃ失礼しますね、土方さん。」

「お―」








買い物を済ませてからと思ったけど手荷物になるから先に話すことにした。

ここは最初に沖田くんと会った橋。その下の河原まで降りてきた。


「初めて沖田くんと会った場所だね。まだそんなに時間も立ってないのに凄く懐かしく感じる」

「あの時は、まさかここまでアンタに入れ込むなんて思いやせんでした。」


立ったままコンクリートに背を預けて話す沖田くん。わたしはその横に腰を下ろした。

真っ直ぐ前を向いて思い出す。あの日の事を。


「私は沖田くんに会ったあの日の前日の朝、突然この世界に現れたの。」


沖田くんは何も言わない。
川の音だけが静まり返ったこの空間に流れている。
表情は確認せず前を向いたまま言葉を続けた。



「理由は分からない。でもここは私の知っている世界じゃなかった。似ているようでやっぱり違う。過去でも未来でもない、全くの別の世界。そこから私は来た。」


大丈夫だと思っても、やっぱり不安で沖田くんの顔を見ることが出来ない。
こんな話、普通なら頭のおかしい人だと思われる。


黙って前を見据えていると隣で立っていた沖田くんがその場に腰を下ろした。


「最初に会ったのが旦那って訳ですかィ?」

「っ、そう。」

「……なにビビってんでィ」

「ご、ごめん。」


構えすぎて沖田くんが声を出した瞬間に一瞬肩が跳ねた。一瞬だったのに……


「俺が疑うとでも思ってるんですかィ?」

片手で顎を捕まれ強制的に顔を合わせられた。
眉間に皺を寄せた沖田くんの顔が目の前に見える



「いや、大丈夫、だと思って話してるよ。でも少しね、ほんの少しだけやっぱり不安も残ってて。だってこんな話普通信じないでしょ、頭おかしい人だもん私。」

「頼れっつったでしょーが。疑ってんじゃねぇ。」

「うん、ごめんね、」


謝るとため息を吐いて手を離してくれた。


「で?何処で旦那に会ったんでィ。そもそも最初は何処に?」

「目が覚めたら銀さんの布団の中だったの」

「は?」

「自分の布団で寝てた筈なのに、気付いたら目の前に銀さん。そして知らない世界。」

「あ−そりゃ、随分災難で。」

「うん、最初はね、パニックになった。でも今は良かったと思ってる。薄情でしょ? 私もう自分の世界に帰る方法とか調べてないんだよ。帰れなくても良いとすら思ってる。過ごした時間は短いのに、ここでの生活がとても大事。大切な物が出来すぎた。」

「なら良いじゃないですかィ。ここに居れば。何の問題もねぇ。……アンタの脆そうな理由は……?」

「……私は、この世界の人間じゃない。理由は分からないけど突然ここに来たの。だからきっと戻る時も突然。何の前触れも無く元の世界に戻るんだと思う。これでも前ほど不安には思わなくなったの。でも脆そうってきっとそれじゃない? 無意識に不安が漏れてるのかも。」


沖田くんは私から視線を逸らした。そして少し間を置いてまた私に向けられる。



「話は分かりやした。なら俺は帰る方法、来た理由を探しやす。」

「……ありがとう。でも私は、」

「先言っときやすが、俺はアンタを帰すつもりはねぇ。帰る方法を見付けて、断ち切りやす。帰りたくねぇってんなら結構でさァ。覚悟しときなせェよ。もう帰りたいっつって泣こうが喚こうが帰さねぇですぜ。アンタはずっとここで笑ってれば良い。」


呼吸の仕方を忘れたみたいに息が止まった。
そんな事言って貰えるなんて思わなかったし、帰る方法を断つ?そんなの考えなかった。
でも、そんな事を私が望んで良い訳がない。だからと言って、人にさせて良い筈もない。


「良いんでさァ。アンタは何も気にしなくて良い。俺が勝手にやる事なんで。」


本当に皆甘いな。

その甘さにすがるだけなんて、


「、断つ時は私がやる。私が自分で断つ。」


もうウジウジするのは止めよう。いつ来るか分からないその時が、もし私に選択肢があるのなら、私はこの世界を選ぶ。
でも突然なら、いつその時が来ても後悔しないように、今を精一杯生きよう。


「イイ面じゃねぇですかィ。」

「沖田くん泣き顔好きなんじゃ無かったっけ?」

「自分で泣かせた面が好きなんでィ、勝手に泣かれても面白くねェや。」

「うわぁ、可愛い顔してとんでもない事言ってる。」


顔を見合わせて笑った。


「一応近藤さんと土方さんには報告して大丈夫で?」

「勿論!ありがとう沖田くん、信じてくれて。」

「疑う理由がありやせんよ。」


そう言って立ち上がった。そろそろ買い出し済ませて帰らないと。

黙って差し出された手を取り歩き出す。







5日間の仕事を終えると女中さん達が沢山のお菓子をくれた。また来てね、と嬉しい言葉まで添えられて。


話があるからと、仕事終わりに副長室に呼ばれていた。きっと昼間沖田くんに話した事だろう、最後に挨拶したかったから丁度良い。


ノックをすると入れ、と土方さんの声。
これを聞くのも最後かと思うと少し寂しくも感じる


「失礼します」

襖を開けて入ると沖田くんも居た


「近藤さんも後から来る。取り敢えずお疲れ、5日間ありがとな、助かった。」

そう言って封筒を渡された。

そっか、お金。私仕事してたんだもんね。
何か働いてるって感覚じゃなかったから、


「こちらこそ、とっても楽しかったです。ありがとうございます。お世話になりました」


封筒を有り難く受け取ると土方さんは座れ と座布団をくれた


「総悟から聞いた。特殊な事例だかフォローはする、何かあれば直ぐに言え。」

「……はい、ありがとうございます。」

「なんだよ」

「いえ、当然の事のように信じてくれるんだな、と。」

「まぁ、最初に言われてりゃ疑ったかもな。でも今更だろ。ただ、この話は他でしない方が良い。天人に目を付けられる可能性がある、用心しろよ。」

「はい、ありがとうございます、気を付けます。」

「総悟が調べるっつーからこっちで調査するが、お前からは依頼しないと思って良いんだな?」

「はい、私はもう調べてませんので。」

「良いんだな、本当に。依頼があればある程度動ける、分かってんだろ、この世界は物騒だ。お前を見てる限りそっちは違うだろ?」

「そうですね、刀初めて見ましたし。」

「帰った方が安全に暮らせんだろ」

「土方さん、アンタ何が言いたいんで?」

「お前は黙ってろ」


沖田くんの言葉を制して真剣な顔で私を見つめる。

分かってる。土方さんの言いたい事。


「私はここに居たい。私に選択肢があるのかは別ですけどね。物騒なのは重々承知しています。それでもどんな目にあっても叶うならば私はここに居たいです。」


「……そうか、なら好きにしろ。突然消えるなら対処しようが無ぇが、少しでも変化があれば言えよ。出来る限りの事はしてやる。」

「ありがとうございます、この世界の人って本当に皆甘いですよね。しかも心配性、いや過保護?」

「オメーが危なっかしいからだろ」

「私しっかりしてるって言われるんですって。」

「否定はしねぇよ、だが訂正もしねぇ」


それって結局危なっかしいって事じゃん


「だけど名前さん、少し気を付けた方が良いかもしれやせんね。この堅物も酷い入れ込みようで。面倒なのにまで目ェ付けられねぇようにして下せェよ。」

「おいどういう意味だ。俺は別に入れ込んでなんかいねぇ。」

「昨日散々慌ててたくせに何言ってんでィ、喜びそうな菓子買い集めて鬼の副長が聞いて呆れやす。」

「は!? べ、別に喜びそうなの探した訳じゃねぇし!適当に買っただけだし!」

「へぇ?わざわざ店員に好み教えてですかィ?」

「はァ!? 何で知ってんだよお前は!?」

「しかも何ヵ所か店回ってやしたよね。」

「見てたの!? 俺の後付けてたの!?」



どうりで美味しいと思った。
苺チョイスだったし。



「土方さん、ありがとうございます。私本当に遊びに来ちゃいますからね、土方さんが良いって言ったんですから、邪険にしないで下さいよ。」

「土方さんそんな事言ったんで? いつでも遊びに来いだなんて密会でもするつもりですかィ? 」

「ちっげぇよ!! いつでもなんて言ってねぇし!!」

「え、いつでもじゃなかったんですか。」

「……別に好きにすりゃ良いだろ。」

「どっちなんでィ。自分の都合良い時だけ来て貰いたいんで? 」

「私都合の良い女だったんですね……」

「だから!好きに来りゃ良いって言ってんだろ!?」

「入り放題ですぜ」

「やったぁ」


こちらに手の平を向ける沖田くんに私も手を近付けてパチンと音を立てながら喜ぶと「何なんだよお前ら」と呆れた声が聞こえた


「いやぁ丁度出勤時間で、お待たせして申し訳ない!」

突然襖が開き近藤さんが入って来た、けど、相変わらずのボロボロ。
出勤時間ってお妙ちゃんの?


ため息を吐く2人。
近藤さんは普段とてもストーカーしてるだなんて思えないくらい親切で器の大きい人だった。
でもお妙ちゃんの事になると思った以上にストーカーで毎日ボロボロになって帰って来る。


「近藤さん、普通にしてたらモテそうなのに。」

「え!? ホントに!?俺普通にしてたらモテそう!?」

「優しいし、器大きいし、笑顔抜群に素敵ですし、お妙ちゃんの前でも普通にしてたらそこまで酷い事にはならないでしょうに。」

「……俺、凄く誉められてる……!ありがとう!名前ちゃん優しいなぁ!」

「近藤さん程じゃないですよ。」

「あっ、そうだ、今日で仕事終わりだろ? プレゼント買ってきた、男ばっかりで大変だったろ、なのに一生懸命頑張ってくれてありがとう。」


そう言いながらニカッと笑顔を向けてくる近藤さん。本当普通にしてたら絶対モテる。


「ありがとうございます。」


何だろうと思いながら紙袋を開くとモコモコの何かが見えた。


「わ、何だろ、モコモコだ。……え? なんで、」


部屋着だ。モコモコの部屋着。しかも耳付き。
ぶちの入った猫耳付きのパーカーが出てきた。袋を覗くとショーパンらしきものも入ってる。

パーカーを広げて立ちすくんでいると後ろから土方さんの声。


「は?服か? 近藤さん何買ってきてんだよ。」

「だってこうゆうの好きって聞いたから! ダメだった!?」

「……いえ、めちゃめちゃ好みです。手触り抜群だし、くったりする柔らかさの猫耳最高です。」

「……お前どうした? 何言ってんの?」

「でも、なんで? 」


銀さんしか知らないよね、私がこうゆうの好きなの。銀さんが? いや、そんな事ないと思う。私の部屋着トークを近藤さんとしてるなんて想像出来ないし。なら何で?


「近藤さんが何買ったら良いか迷ってたんでアドバイスしたんでさァ。」


そう言いながら沖田くんが隣に並んでパーカーを撫できた。


「スゲー手触り。今度これ着てお泊まり会しやす?」

「え、これ、沖田くんが? 何で、」

「アンタ好きでしょ猫耳。 前どっかのフェスタで耳生やして喜んでたじゃないですかィ。」


フェスタ、猫耳。覚えがある。て言うか忘れもしないあの感動。


「居たの?あの会場に。」

「いやした。一応お偉いさんも来やすからね、警備してたんでさァ。」


そうだったんだ。全然気付かなかった。

「フリルのエプロンも似合ってやしたよ。」

「え!?それも見てたの!?」


どんだけ見られてたの!?

でも疑問は解決した。


「近藤さん、これありがとうございます!凄く嬉しいです!」

「いやぁ喜んで貰えたなら良かった!絶対似合うと思うよ!」

「大事にしますね!」


疑問が無くなったらもう喜び以外ない。
モコモコだけじゃなくてスベスベした感じがとても良い手触り。これ高いやつだ。


「お妙さんこうゆうの着ないからなぁ、選んでて新鮮だったよ!」

「あ、そっか。皆浴衣みたいなの着て寝るんですもんね?」

「名前さんの所は違うんですねィ」

「うん。浴衣はお祭りの時だけだし、着物も袴も殆ど見ないよ。寝るときはパジャマとか部屋着とか。」

「お前、それ着て寝るつもりか?」

「銀さん今更私がこうゆうの着ても多分引いたりしないと思うんですけど、でも最近やたらと一緒に寝たがるからショーパンは、微妙ですかね、」

「一緒にって、お前らやっぱり付き合ってんの?」

「はい? 違いますよ、一緒の布団で寝てるだけです」

「……何もされねぇの?」

「何もと言うのは? あ、あ−そうゆう関係じゃないです。えっと、身体だけのみたいなのですよね?セフレ的な。」

「いやハッキリ言ってやすから。隠せてねぇでさァ。」

「え、あ−、何て言えば良いの? ……取り敢えず違うです。」

「そうゆう意味じゃねぇんだけど。」

「えっ、あ、違いました? ごめんなさい、え?ならどうゆう意味ですか?」

「だから手ェ出されてねぇのかって」

「手? ……え?そうゆう意味では?セフレ違うですけど……」

「もうやめて!? セフレとかやめよ!?ましてや名前ちゃんがそんな事する筈ないじゃない!!」

「いや、そうじゃなくて。つか何でセフレ? 手ェ出されたら即セフレ認定なのおかしくね?」

「しょうがねぇでさァ。だって名前さんですぜ?」

「待ってどうゆう意味? 私尻軽な感じに見えるの?」

「いや何で。照れもトキメキもしないアンタがどうやって尻軽になるってんでィ。」

「あ、なんだびっくり……ん?いや、照れるってば。私だって恥あるからね?」

「そっちじゃねぇ、ドキドキの方。」

「あっ、ドキドキの方。……するよ?この間暗闇に居たとき凄く心臓バクバクしてたもん。」

「土方さん分かりやした?」

「あぁ、もういい分かった。」

「良かった、分かって貰えました?」

「お前には欠落している事が分かった。」

「なにが?」



え?なにが?

近藤さんに至っては何やら絶望した顔をしているし、……あ、そっかドキドキって銀さんがいつも言ってるやつの、心臓潰される方のドキドキ。


「何だか、こっちの世界の方々は乙女チックな思考が強いんですかね。」

「いやお前が無さすぎんだろ。本当に女か?」

「酷い!」

「そうだぞトシ!名前ちゃんは可愛い女の子だぞ!」

「そもそも土方さんだってドキドキしないですよね?ときめき持ってるんですか?」

「必要ねぇ」

「私だって必要ないですもん」

「いや、名前ちゃんは必要でしょ!? 女の子なんだから!」

「必要性を感じた事が無いので別に要らないですよ?」

「えぇ!? そんな!要るよ!!必要だよ!!」

「旦那は? 何とも思わないんで?」

「銀さん? んーどうなんだろう、私が照れたと言っても銀さんは違うって言うの。だからもう分かんなくって。何か照れさせようと頑張ってるよ。」


笑いながら沖田くんを見ると哀れみの顔して見られた。

「軽く同情するわ」

「別に私、現状に困ってないのでそんな感情無くても生きていけますよ」

「お前にじゃねぇよ」

「え?」


なにこの空気、私が悪いの?


「名前さん、何かあったら俺ん所来て下せェ。話聞きやすから。絶対自分だけで抱え込まないで下せェよ、面白そうなんで。」

「最後の何? 面白そうな所あった?」

「そろそろ迎え来やすね、行きしょうか。」

「あ、そうだね。5日間本当にお世話になりました!」

「いつでも遊びにおいで!」

「はいっ」

全力で手を振ってる近藤さんと、軽く手を上げた土方さんに笑顔でお辞儀をして部屋を出た。

ここは皆が家族みたいだ。そう考えると無性に万事屋で待っててくれる3人が恋しくなった。


さぁ、お家に帰ろう


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