財前光の彼女日記

6/18(月)

憧れだった先輩と付き合うことになった。
付き合うって具体的に、何をすればいいんだろうね? なんて言うけど、俺も実はよく分からない。

とりあえず一緒にご飯を食べて
とりあえず一緒に帰宅した。

彼女の家の近くにある公園で暇を潰す。帰りたくない。どっちもそう考えていた。
家まではあと500メートルくらい。辺りが暗くなって、流石にこれ以上はウチの親も怒るし、彼女の親も怒るだろう。
短い距離だけど、小指だけを絡めてきた彼女の手のひらを、しっかりと握った。

何か少し、恋人っぽくないですか。


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6/22(金)

先輩には自分という個性があまりなかった。
電子機器も洋楽も興味がないのに、見たいといえば良いよしか言わなかった。

だから、先輩が行きたいところに行こうと思った。
どこか行きたいところありますか
先輩は少し考えて、

俺が行きたいところでいいよ だって。

冗談で、先輩の家って言ったら
良いよと返してきて、可愛いけどヒヤヒヤする。

冗談だから、映画に行こうと言えば
先輩は少しだけ微笑んで、行きたいと言った。


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6/23(土)

ラブコメディなんて見てもしょうがないし
隣の人と恋に落ちるなんてキャッチフレーズは少し下品だと思う。

何が観たいの、ときかれたから
先輩が観たいので良いと答えた。
そうしたら、財前くんが観たいやつと言って
シリーズものの洋画を指差した。
この前少しだけ、この映画を観たいと言った話を覚えていたようだ。

吹き替え版のチケットを買おうとすれば、
吹き替え嫌いでしょと言って、字幕のチケットを買われた。
英語苦手なくせにと言えば、
日本語出てくるから大丈夫だよと笑った。

俺のことをこんなに見てくれているのに、
俺は先輩のことがあまり分からない。
唯一分かったことといえば、彼女はポップコーンは塩ではなくキャラメル派だということだった。


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6/27(水)

こんな梅雨の時期に、折りたたみ傘も忘れたらしい。
空を眺めて戸惑っている先輩は、俺が持っていた傘を見て、目をキラキラとさせていた。
大きめの傘を選んで正解だった。
傘を開いてどうぞと言えば、
先輩はありがとうと言って俺の隣へ来た。

俺の鞄の中には折りたたみ傘が入っていたのは、ここだけの話ということで。


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7/1(日)

昨日の雨が嘘のように晴天だった。暑い。大阪も梅雨明けが近いのかもしれない。関東は梅雨明けしたらしい。

アイスが食べたくなってコンビニへ行ったが、お気に入りの、白玉5個入りのあれがなくて、げんなりする。
適当に安いヤツを買ってコンビニを出たら、先輩とばったり会った。

デートの時は少しだけオシャレをしてて(かわいかった)、でも今日は、ちょっと出かける用みたいなラフな格好で(かわいい)、先輩は恥ずかしそうに笑った。

何か買いに来たのと聞かれたから、白玉のアレがない話をしたら、あっちのスーパーで見かけたよ、と言われて
目撃情報をくれた先輩と手を繋いで、スーパーに行った。ありがとう休日。あ、でも用事なかったなら、デートしてくれても良かったんですけどね。


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7/5(木)

七夕の日は雨だと相場が決まっている。

今年は土曜日だから、6日にクラスに飾ろうという話を今日された。今日。アホじゃないか。アホだと思う。

先輩のクラスも同じだったみたいで
何を書いたのかと尋ねれば、少し困ったような顔で、

コンビニに白玉のアイス置いてくれますように

だって。だって。思わず聞き返した。
聞き返したら、冗談だと言われて結局、何を書いたかは聞けなかったけど。

予備で貰った短冊に、先輩と遊ぶ時間が増えますようにと書いて渡せば
明後日、どっか行こうかと、初めて先輩からデートに誘ってくれた。


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7/7(土)

休日のショッピングモールの広場には、場違いな短冊コーナーがあった。
それを目印にと言って、集合時間より5分だけ遅く向かう。
いつも怒らない先輩を怒らせたかったけど、
そのせいでナンパをされたようだ。
俺を見た瞬間、困ったように眉を下げる先輩は本当に可愛かったけど、
俺の彼女なんでと腕を組んでそいつを退治した後、バカ、と大きい声で言われた。
控えめに言って、怒る先輩も可愛かった。
すんません。もうしないんで。

どこにいくわけでもなく適当に歩けば、どこもかしこも短冊ばかりだった。
そういえば、互いに何を書いたかはヒミツだったのを思い出して、
聞くのも諦めていたから、あの店で適当に書こうと誘った。
2人で書いた短冊を、できるだけ高い位置に飾って、2人で笑う。

『365日会ってやる』

織姫と彦星を嫉妬させてやる。
なんだか、今がいちばん幸せだ。


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7/11(水)

先輩が駅のホームで泣いていた。
偶然通りかかってしまった。
もちろん声をかけたが、先輩は怖がるように腕を振り回して、やがてごめんと呟いた。

タチの悪い痴漢に遭ったらしい。やっとの思いで話してくれた先輩の手を引っ張って、近くのカラオケ店に入った。
その頃にはもう泣いていなかった先輩を抱きしめると、また泣いてしまったらしい。
何度も大丈夫だと言えば、その度に先輩は頷いた。

1時間くらいそうして、勿体無いのでそのまま流行りの曲を入れれば、快く歌ってくれた。普通に上手かったし普通に可愛かった。


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7/18(水)

今日は先輩と付き合って1ヶ月記念日だ。
部活をサボって(大事な時期だけどこっちも大事すぎる時期だ)、放課後に先輩とデートした。
相変わらず欲しいものも行きたいところもないと言ってきて、
それでもやっぱり今日は、先輩の行きたいところに行きたかった。
そう伝えればすごく控えめに、
海に行きたい。だって。
少し時間かかるけど行きましょうか。そんなことを言った気がする。
駅に向かえば、水族館が良いと訂正された。ホントしゃあない。
けど、先輩が行きたい所を言ってくれて、本当に嬉しかったんすよ。今度は海に行きましょうね。


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7/20(金)

先輩。今日なんの日か知ってます?
正解。俺の誕生日です。
ちゅーわけで、何かください。

甘えるような声を出すなんて、人生で初めてだ。先輩は目を丸くして、困ったような、優しい顔で笑った。
用意してないわけないでしょ。そう言って誰にも見られないように、こっそり渡してくるのだから、とんだ恥ずかしがり屋だ。

先輩、今から海に行きましょうと言ったら、
快く良いよと言ってくれるのだ。
先輩は、世界一優しいと思う。誕生日だからと後付けされたけど、誕生日じゃなくても一緒に来てくれるだろう。どこにだって来てくれるだろう。
だけど誕生日だから、特別な思い出だ。

来年もまた、同じ場所に来ましょうね。