「お久しぶりです、荒垣先輩」

"荒垣"と彫られている墓の前で、名前はしゃがみ花を添えた。
本人が居れば渋い顔をしそうな可愛らしい花。嫌そうな顔が想像できて小さく笑う。

「もう一年ですね…。先輩が私たちの前からいなくなって」

今からちょうど一年前―9月4日。
作戦日に天田に呼び出された荒垣はポートアイランド駅のはずれへ向かう。

二年前の荒垣のペルソナ暴走によって亡くなった女性が天田の母親であった。
荒垣に復讐する為、天田は作戦日―そして母親の命日であった9月4日に呼び出す。

天田の復讐が果たされようとした時、そこにストレガのリーダー的存在―タカヤが現れる。
タカヤに銃口を向けられ撃たれそうになった天田を庇った荒垣は撃たれた。
作戦を終えたS.E.E.S.メンバーが急いで駆けつけるも、彼は帰らぬ人となってしまった。

「ごめんなさい。あれから一回も来られなくて。
今の今まで気持ちの整理が付かなかったから」

荒垣が死んだ日から、名前はショックを受け精神的に危険な状態でタルタロスはおろか学校にも行けないところまで陥ったのだった。
その後メンバーのお陰で回復するものの、荒垣の事になると精神が不安定になった。

それから数ヶ月が経て、なんとか気持ちに踏ん切りをつけた名前だったが、行ける時間が無く一年経ってしまった。
だが命日である今日、この日は必ず行こうと前々から決めていた。

「あれから色々ありましたよ。真田先輩から聞いたかもしれませんけど」

桐条武治の死、チドリの死。チドリが生き返った事。
各メンバーのペルソナの覚醒。
ニュクスが目覚め、世界に終わりを告げた事。
因縁のストレガとの決着、ニュクスの命を懸けた戦闘。
有里湊の大いなる封印によってニュクスを封印、人類の危機を免れた事。

そして、その封印の代償として有里湊が永遠の眠りに就いてしまった事。

楽しかった事よりも、悲しい出来事の方が多かった気がする。

「……先輩、あの時私に言いましたよね、"泣くな"って」

死の間際、##NAME1##に対して言った言葉だ。

ボロボロと涙を零していた律の頬にそっと手を添え「そんな顔してんじゃねーよ…」と
小さく笑った。

『俺の為に泣くな、笑ってくれ。じゃなきゃお前の事が心配で心残りが出来る』

宥める様に、叱る様に。荒垣が名前に残した最期の言葉。

「"俺の為に泣くな"か…」

あの時、小さく笑いながら逝ってしまった荒垣の顔が浮かぶ。

「ごめん、なさい。先輩に…言われたこと、守れなそうです」

頬に涙が伝い、地面に小さな染みができていく。
地面に落ちずあごに留まっている涙は赤い日に照らされ、きらきらと輝いていた。

涙を拭き、これ以上零れないように空を見上げるがそれでも涙は溢れる。
整理は付いたと思っていたのに―だが墓を前にすると駄目だった。涙が止まらない。

「会いたい、会いたいよ…」

か弱い、弱々しい声。
赤く染まった空を見つめながら呟く。

「会いたいよ、真次郎さん…」




がっきー先輩なぜ死んだしorz
俺は悲しすぎて何週やっても号泣します。大好きだ先輩…!!

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