「ふぅー…」 6限目の授業が終わり、名前は思わず腕を伸ばしそのまま机にもたれかかった。 ケータイのディスプレイを見て軽く溜め息をついた。 9月22日―恋人である真田明彦なのだが生憎水曜日、彼の所属するボクシング部の活動日。"朴念仁"と呼ばれるあの男の事だ、自分の誕生日の事なんて忘れてさっさと部活に行ってしまっているに違いない。 せっかく真田さんの誕生日なのに…とため息を吐く。 本当は放課後2人っきりで出掛けたかったのだが真剣な彼の邪魔はしたくなかった。 みんなでパーティーの準備でもしようかと考えたのだが、ゆかりや湊は真田と同様部活に行っている。 順平とアイギスを誘おうとしたが順平はチドリに会いに行く為病院へ、アイギスはいつの間にか帰っていたらしく教室から姿を消していた。 「はぁ…」 「何溜め息ついてんの、苗字。」 突然後から声を掛けられ、少し反応が遅れながらも突っ伏していた体を起こし振り返った。 「何だ、友近君か…」 残念そうな顔で見れば「悪かったな、俺で」と口を尖らせていた。 ごめんと誤ると「ま、別にいいけどな」といつもの調子で友近は笑った。 「それよりお前に客人」 「客人?」 普段クラス外の人から呼ばれることはそうそう無い。それこそ風花や最近仲良くなった夏紀くらいである(決して彼女に友人がいない訳ではない) 一体誰だろう…思いながらドアを見た。 「あ、あれ。」 銀髪の芝生頭に、人々の目を引くような赤いベスト。 間違えるはずが無い。 「真田、さん?」 てっきり部活に行っているものだと思い込んでいた名前にとって予想外の出来事だった。 ずかずかと教室に入り、名前の目の前に来るなり「行くぞ」と手を引く。 「ちょ、ちょっと待って下さい。」 一瞬呆然と立ち尽くし、そのまま連れて行かれそうになった##NAME1##だったがすぐに気を取り直した。 何故ここに居るのか。部活はどうしたのか―色々と突っ込みたい事がある。 数歩歩いた所で名前は立ち止まった。 「部活はどうしたんですか」 「今日は休んだ」 こんな事起こるのだろうか。 熱血ボクシングバカ(名前命名)である真田が部活を休む…かなり失礼だがこんな事が起こるなんて思いもよらなかった。 何があっても水曜日の部活には出る人間だったので名前は信じられなかった。 それに、何か様子がおかしい。 理由を聞いてみると自分の誕生日だからと真田は答えたが、はっきり言って自分の事で休むような性格ではないことは確かだ。 「珍しいですね。真田さんって自分が誕生日だからって休まなそうだから。」 「いや、そのだな…」 口元を押さえ急に黙り込んでしまった。どうしたのだろうと顔を覗く。 目が明後日の方向へと向けられている。それに頬が仄かに赤い。 もしかして照れているのだろうか。 「去年までは、普通に部活に出ていたんだが、…その、今年は…今年からは、お前と過ごしたいと、思ってだな…」 聞いている内に自分の顔が赤くなっているのが分かり名前は俯く。 真田の言葉も恥ずかしかったが、何より一番恥ずかしいのはクラスメイトに見られている―いや、凝視されている…という表現があっているかもしれないぐらい見られているという事である。 真田は恥ずかしさが消えたのか吹っ切れたのか、だがまだ頬が仄かに赤いまま名前に微笑む。 「名前、今日は俺と「ストーーーーーーーーーップ!!」 突然の大声での驚きと一番いい所で止められてしまった何とも複雑な気持ちが顔にうかせた真田。そんなことを余所に、2人の傍に立っていた友近が顰めた表情で仁王立ちしている。 目をパチクリとさせながら名前が名前を呼ぶとこいつ等はと言わんばかりの顔で踏ん反り返った。 「この教室でラブコメ禁止!! さーさーホラ早く教室から出て行けー」 突然何を言い出すんだと呆然と立ち尽くす2人の背中をぐいぐいと押し、教室から追い出そうと扉へ向かわせる。 慌てる2人を関係無しに廊下へと追いやってしまった。 名前が文句の一つを言おうとした時友近は何かを投げたきた。 反射でキャッチした物は名前の鞄。 「苗字、もう今日は …という訳で先輩頼みましたー」 反論する暇も無く扉を閉められてしまった。 ほんの数秒の出来事に呆然とし顔を見合わせる。 「…追い出されたな」 「そうですね」 次第に小さく笑い合う。 2人の顔にはもう先程の照れや恥ずかしさは無くなっていた。 「行くか。」 「はい!」 真田の言葉に名前は満面の笑みを浮かべ、差し出された手を握った。 愛は篭って(ry 誕生日ネタは程ほどにしようと思った今日この頃。 . |