鬼ごっこ3

 
「カカシ先生、俺はまだ飲むつもりだったんですが」
「え?"はい"って答えたじゃない。」
イルカの抗議に目を丸くしてカカシはほざいた。
(あの"はい"は語尾が上擦ってたから疑問形だろ!)
上忍 相手にそんな口の聞き方をすれば、どうなったもんだかわからないので イルカはただ心の声を押し殺し続けた。
「それなら、飲み直しにいきましょう。連れ出した詫びにオレの奢りで」
「いやそんな、悪いですよ」
そんなつもりで言った訳では無いと恐縮してると
「いいえ。あのくの一達にうんざりしてたところだったので ちょうど良かったんです。」
と、手を繋がれたまま イルカは見るからに高級そうな料亭の一室へと連れ込まれた。

「か、カカシ先生。ここ凄く高そうなんですが」
高そうなのではなく、実際に高いのだ。
お冷やとおしぼりを出されて、二人きりになった部屋の中で イルカは酔いがさめるばかりか顔面蒼白になっていた。
「言ったでしょ、オレの奢りだって。それにイルカ先生とは一度ゆっくり話してみたかったんです」
「えっ、」
意外な台詞だった。
「そんなに意外ですか?ナルト達は初めての生徒なので、どう接したら良いのか。とかオレだって悩んだり相談したくなったりするんです」
イルカは口布を下げながら笑った表情を見て、やっとカカシの気持ちが分かるようになってきたと思った。
しかし緊張はおさまらず、カカシの想像を超える整った顔立ちに更に酷くなってしまった。
「そ、そうなんですか。お、私で良ければ相談くらいいつでも構いませんよ」
ぎこちない笑みを返してしまったと思いながらも イルカはそう言った。

どれくらい経っただろう。
酒が運ばれてくる毎にだんだんとイルカの緊張は解れていき、話しも盛り上がってきた。
「いやー、久しぶりですよ。こんなに誰かと話しできたのは」
「俺もです」
そうとう酒が回ってしまったのか、イルカは自分の一人称が「私」から「俺」になっても気にもとめなかった。

「そういえばイルカ先生は子供の頃、どんな遊びをしましたか?」
「遊び、ですか?」
「はい。オレまだ上手く子供達と馴染めてない部分があって、子供の時に任務に明け暮れていたせいかな、と考えましてね」
どこか淋しそうな薄い笑みに イルカは胸の奥を突かれるような感覚を覚えた。
「そうだなー、例えば缶蹴りとかかくれんぼとか、あとは鬼ごっこなんかを」
「あー、それなら一度やったことあります!」
イルカの言葉を遮ってまで主張した顔は今日、いや今まで見てきたカカシの表情の中で一番輝いていた。
「その様子だと、楽しかったんですね」
ついさっきまで、何を考えているのかすら分からなかった人間を相手に ここまで楽しんでいる現実が夢のように思えた。
「そういえば俺も、鬼ごっこには一つかなり印象に残る思い出がありまして」

イルカは酔いのせいなのか カカシとの関係が良くなって浮かれていたせいなのか
ペラペラと昔を語りだした。



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