ものごとすべてはほどほどに4

「無かったことに‥‥したいんですね」
その台詞は尋ねる風にではなく、一人納得したような いや自分に言い聞かせていたのかもしれない。
とにかく カカシさんは一人でに解釈しているみたいだった。
「カカシさん。何か勘違いを‥」
「イルカ‥‥せんせ‥ぇ」
今にもこぼれ落ちそうな程、目に涙を溜めたカカシさんに詰め寄られては 後ずさりして
とうとう俺は寝室の一番端っこにまで追い詰められた。
部屋がどうとかの話じゃない。
このままじゃ確実にまずい!
「な、無かった事にするつもりじゃないから!だからカカシさんに尋ねてるんです!」
咄嗟に出した言い分に 言い終わってから自分でも驚いた。
「‥‥ほん、と?」
くつろいでいる間に額当てや覆面をはずしたのだろう。ギリギリまで詰め寄ってきたまっさらな素顔に 今までとは別の意味で躯が煩いほど脈打った。
「でも‥‥先生、オレの言うこと信じてくれます?」
俺が頷くより早く カカシさんの陶器のような頬に涙が伝う。
「それじゃぁ」
カカシさんは壁から少し離れた所に腰をおろし、俺も力が抜け つられてその場に座り込んだ。


「昨日の飲み会に、オレは任務で遅れていきました」
涙で潤んだ目を擦りながら昨夜の話は始まった。
「任務あがりで殺気だっていたことで、せっかくの宴会だというのに オレは一人隅っこで飲んでいました」
「‥‥‥‥」
カカシさんを慕う者なら、男女問わずわんさかといるというのに。
それ程 昨日は近寄りがたい空気だったのだ、と予想できて 少しだけカカシさんが "かわいそう" と思えてしまった。
「そんな時に、イルカ先生が話しかけてきてくれて」
淡々と語るカカシさんを余所に その時点で既に記憶がない自分はかなり不甲斐無い。
「"元気ないですね"と声をかけられただけで嬉しいのに、そのうえ"どうしたら元気が出ますか?"なんて尋ねられたから‥‥‥‥」
「そしたら‥‥?」
カカシさんは顔を真っ赤にして俯いていた。
きっと口布をしていたままなら気づかなかっただろう変化に、胸の動悸は強くなる。
「‥‥‥‥オレ、ずっと前からイルカ先生の事が好きで‥‥それで、つい"キスしてくれたら元気出ます"って、言っちゃったんです」
それを聞いた俺は躯中の筋肉が凍りついて動けなくなった気分だった。

好き?誰が?カカシさんが?俺を?
ダメダアタマガツイテカナイ。

「その時は冗談だとしかうけとってもらえないと思っていたので、先生からキスしてもらえた時は天にも昇る気持ちでした。」
俺はそれが事実だとは出来れば信じたくなかったが、
カカシさんのうっとりとした様子は虚言を言ってるようには見えなかった。

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2011/03/17 黒月 カイム
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