「〇始め」

除夜の鐘が鳴り響く師走の空に、帰りを急ぐ 影が一つ。
(来年こそは‥‥!)
年末さえも任務の為に恋人との時間をつぶしてしまった男、はたけカカシは そう胸に誓った。

+++++
〇始め
+++++

午後11時53分。
イルカはせっせと年越蕎麦の用意をしながらも どこか浮かない顔をしていた。
「今日も無理かなぁ」
クリスマスや年越しといった行事がある時は 必ず人手が足りなくなるわけで。
当然、忍であるカカシもイルカも駆り出される。
結局、カカシはクリスマスの数日前からすぐには帰ってこれない任務を言い渡されてしまった。
「ボーーン、」
脳天に響くような清々しい音も、一人で聞くとなぜだか虚しく感じる。
器にもった蕎麦をこたつへと運ぶと、自然と彼の特等席であるこたつの向かい側が目につく。
「俺はずっとそばにいたいですよ」
そう呟いては だれもいない玄関を見つめた。


「イルカ先生!」
いきなり玄関とは反対側の窓から 冷たい風が入り込み、イルカは振り向いた。
「‥‥‥かかっ」
「ただいまー。あ〜寒かった」
冷たい躯で飛びかかってきたカカシに イルカも負けじとしがみつく。
「〜〜遅いです」
「ハハ、これでも頑張ったんですけど」
窓が開けっ放しにも関わらず 二人はくっついたままで 窓を閉めようだなんて考えが頭にないのだろう。
「おかえりなさい」
ちゅっと カカシの下唇にキスすると、驚いた顔をして カカシは固まった。
「年越蕎麦できていますけど、先にお風呂入っちゃいますか?」
やっとイルカが窓に気がついて閉めにいく。
「‥‥〜が、」
カカシの肩がほのかに震えている。
「?」
「イルカ先生がイイです」
「え、ちょっ。待っ‥」
「一週間以上待ったんですから、これ以上は無理ですよ!」


こうして、二人の正月は寝正月となったそうです。

::::::::::
今年一年ありがとうございました!
年末年始からお目汚し失礼します。

拍手:2010/12/31
移動:2011/01/17 黒月 カイム
- 23 -

[*<<] | [>>#]
ページ:
[戻る]
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -