結婚事情1

週末の夕方、仕事での疲れやストレスが溜まった者達はそろって居酒屋へと足を向ける。
安い酒ででも日々の鬱憤をはらしたりするにはちょうど良いらしい。
そんな中 イルカは片手に酒やつまみをぶら下げながら、繁華街を通り過ぎた。
向かう先は、最近親しくなりはじめたカカシの家。
「いらっしゃい。待ってましたよ」
チャイムを鳴らせば すぐさまにこやかな笑顔で出迎えられた。
「お邪魔します」
三ヶ月程前に、たまたま居酒屋で居合わせてからというもの 二人の仲は良好で、
ついにカカシの家によばれるまでに至ったのだ。
「カカシさんの部屋って結構片付いてますね」
「いやいや、物の数が少ないだけですよ」
確かに、少ないと言われればそう感じたけど それでもきちんと物が配置された部屋に カカシの人柄が伺えた。
(やっぱりこの人と飲む酒は上手い!)
酒を飲む度に 何度もそう思った。
カカシは話題に富んでいるだけじゃなく 階級が上でも威張らなかったり 時にはイルカの愚痴さえ嫌がらずに聞いてくれる。
今まで一人で飲んでいた時間が惜しいくらいに。
「そういや、来週結婚式がありましてね」
酔ったイルカには、カカシの顔から笑みが消えた事に気づけなかった。
「仲の良い同僚のなんですけど、その嫁さんがまた綺麗な人で。独り身の自分からしたら羨ましいですよ」
「‥‥‥」
「まぁ、カカシさん程の方なら 引く手数多でしょうし、羨ましいなんて思わないかもしれませんけど、‥‥‥カカシさん?」
いつもなら相槌や返事を返してくれるのに 、と隣を見遣れば
本当に自分と同じ量の酒を飲んだのか、と問いたくなるくらい真剣な表情だった。
「実は、イルカ先生に相談というか‥‥協力してほしい事があるんです」
「はぁ、」
イルカはまさか この相談が自分を苦しめるものとなるなんて、夢にも思わなかった。

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