ナンテン








〜♪

携帯の着信音で目が覚める。まだ外は薄暗い。
携帯の画面を見ると、彼氏の名前が表示されていた。瞼が重たい…。そう思っていると着信音が止んだ。
そのまますぐに眠りにつきそうになるとまた音楽が聞こえてきた

〜♪

仕方なく眠たい体を起こして電話に出る

「…もしもし…」
「もしもしじゃねぇ!すぐに電話でろよ!」
「今、朝の何時だと思ってるの…」
「知るか、朝練行くぞ」
「マネジは断っ…「もう家の下にいるから早く降りてこいよ」



そう言い切ってブチッと電話が切れてしまった。
部屋の窓から恐る恐るカーテンを覗くと彼の言った通り家の下に彼の姿があった。家の下から彼女の部屋を覗いているのか目が合いそうになりパッとカーテンを閉めた。

はぁ、とため息をついて準備を始める。早く行かないとそれこそまたなに言われるか…。そう思いながら出来るだけ早く支度して玄関に向かう。
外に出ると不機嫌そうな顔の彼がこちらを見ていた

「遅い!」
「勝手に迎えに来といて…」


そう言いながら自転車の準備をしようとすると彼が彼女の荷物を奪って自分の自転車に乗せた


「ちょ…、隆也」
「お前は後ろ」
「え?」
「後ろに乗れって」


そう言って彼は自転車の荷台に手を置いた。彼女が乗るのを躊躇っていると、これもトレーニングだからと言ってきた。
ため息つきながら自転車の荷台に乗ると、離すなよ、と彼が手を引っ張ってきて自分の腰に回した。










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キーンコーンカーンコーン…


「苗字ってマネジになったの??」

昼休み、一緒に弁当を食べていた水谷が聞いてきた。


「違う!!!隆也が勝手に!!!」


そう言って彼のほうを見ると知らない顔をして黙々と弁当を食べていた。見かねて花井が水谷にお試しだってと言った。
モモカンと話した結果、彼女にやる気があるわけではないのでもしできるのであればお試しにマネジをやってみてどうかと提案された。
ここで断るとまた彼が不機嫌になるのでお試しなら…と仕方なく始めた。

慣れないマネジ仕事で体が痛いのか自然と自分で肩を揉んでいたら、水谷くんが揉んであげようか?と聞いてきた。

お願いしようかと思っていたら伸びてきた水谷の手を叩く音が聞こえた。彼がまた不機嫌そうな顔で水谷を見ていた

「俺のに触んな」
「た、隆也」
「…保健室に湿布貰いにいくぞ」


そう言われると彼に引っ張られるように教室を後にした









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保健室つくと強引にベッドに押し倒され、気がつくと彼に唇を奪われていた。怒っているのがわかるような強引なキス…


「んっ…ぁ」
「っ…」
「たかっ…」
「黙れよ…」


彼を見ると、顔を赤らめながら辛そうな表情で顔を歪ませてた。息が苦しいのか、深いキスの合間に漏れる彼の吐息にドキッとする…。
しばらくキスをしていると彼の手が彼女の腰を撫でるのがわかった。

「隆…、也!ダメ…」
「…無理」
「やだ…、学校じゃやだ…っ!」
「っ!!」


そう言うと彼の手が止まった。
手が止まったのに気づいて彼の顔を覗くと辛そうな顔をしていた。

「それに…試合前は集中したいからって隆也が言ったんだよ…」


付き合う時に決めたこと。
恋愛より野球を大切にしたい。そう彼女に話してから決めた付き合い。自分から言った約束事だった。


「…悪ぃ」

そう一言いうと保健室の棚から湿布を探してくれて彼女の肩に貼ってあげた。

「隆也…大丈夫?」

心配そうに彼女が彼の顔を覗く
あぁ、と頷くように彼が苦笑いした。







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「じゃぁ名前ちゃんはドリンク作ってもらおうかな。千代ちゃん教えてあげてくれる?」
「はいー」


カキーンと音が聞こえるグラウンドを背に篠岡がドリンクの作り方を教えてくれた。ジャグを自転車で運んで数学準備室で作るんだよと言って今回は一緒に数学準備室に向かってくれた。
数学準備室にある冷凍庫から氷を取り出してジャグの中にジャンジャン入れていく。

「氷が溶けるとだいたい通常の2倍の量の水で溶いたくらいにするんだよ」
「へぇー」

メモを取りながらマネジの仕事を覚えていく。それに気づいたのか篠岡がお試しなんてやめてホントにマネジになればいいのにって言ってきた。


「私には無理だよ」
「なんでー?阿部くんが言ってたけど中学の時、野球部のマネジしてたんでしょ?」
「それはそうだけど…」
「名前ちゃん、今日朝早くから一緒に朝練してたでしょ?だから野球好きなのかなって思ったんだけど…」
「それは隆也が…。ちょっと待って、そういえば千代ちゃん何時に来たの?」
「私?7時半前かなぁ?」
「マネジって皆と一緒の時間じゃなくていいの?!」


そうだよ、とニッコリ笑う篠岡に唖然とした。
無理矢理起こされて朝5時にグラウンドに来た私はなんだったのだろうか。と思えた。そしてその後に彼に対する怒りを覚えた。







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一通りの練習が終わって、みんな帰る準備をしていると彼がこちらに向かってきた。彼を見ていたら今朝、無理矢理起こされたのを思い出してムカムカしてきた。それに気づいたのか、彼が少し心配そうに顔を覗いてきた。

 
「なんか、怒ってる?」
「怒ってません」
「怒ってるじゃねぇか」
「怒ってません!!」

そんな言い合いをしていたら花井と栄口がこちらに歩いてきた。


「痴話喧嘩かー?」
「…るせーよ。なんか用か?」
「阿部じゃねぇよ。苗字に用だよ」
「私?」

聞くと、お試しでもとりあえず部活の連絡用として主将の花井と副主将の栄口と連絡先交換しといてとモモカンに言われたらしい。

「俺が知ってるからいいじゃねぇか。俺も副主将だし」
「んな、二度手間だろうが。連絡が行き渡ったかも確認するのも必要だし苗字からの連絡だって主将や副主将の連絡先はしっておいたほうがいいだろ?」


そう言われて鞄から携帯を取り出そうとする彼女。それを見て彼がまた不機嫌になる


「だったら、マネジやめさせる」


その台詞にビックリして手が止まった。花井も栄口もビックリしているのか開いた口がふさがっていなかった。
恐る恐る彼を見ると不機嫌がMAXなのか今にも切れそうになっていた。


「隆也…、自分が何言ってるかわかってんの?」
「そうだよ、阿部が朝練の時にマネジにするからって連れてきたんだよ?」
「…るせーな!!!帰るぞ」


また彼女は彼に引っ張られるようにしてその場を後にした










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気がつくとそこは彼んちの彼の部屋にいた。家族に挨拶をそこそこに無理矢理彼に引っ張られ、部屋に入れられてた。彼がドアを閉めて鍵をかけると、彼女の腕を引っ張り自分に引き寄せて唇を重ねた


「ん…っ!」
「……名前、」
「たか…や…、ね…ぇ、」


唾液が交わる音や漏れる吐息が響くように聞こえる

「はぁ…っ…名前」

彼女の名前を呼ぶと彼のキスが唇から首もとにうつる…。首元に軽くキスをされたかと思ったその時、首筋をゆっくりと彼の舌が舐めずる
彼女の口から甘い吐息が流れてビクッと体が跳ねた。


「隆也…、ねぇ…っ、んっ」
「……っ」
「隆也、…どうしたの、怖い…よっ」


彼女の目から涙が溢れていた。それを見た瞬間、彼の手か止まった。


「隆也…、今日おかしいよ」

「……」

「隆也ぁ…っ」

「…………好きだ…、」

「…え?」

「好き過ぎて…狂いそうになる…」


彼の表情は苦しそうで、本当に辛そうなのが伝わる。


「好きなんだ…よ…。好きすぎて野球に集中できねぇ…なんて…」


自分で決めた決まり事も守れず、自分が野球してる間、彼女が心配になりいっそのことマネジになって行動時間を一緒にすればいいと思った。


「名前は…俺だけ見てろよ…。お願いだから…」


他のやつに触れられるのも嫌だ。連絡先交換するのも嫌だ。
ずっと俺だけを見て俺だけのものであってほしい。


「隆…、んっ」

「このまま、お前を逃げないように縛り付けて…俺だけのものになればいいのに…」

唇で唇を塞ぐ。自分のものだとわからせるかのように強引で深く深く口づけをする。

「…っん…ん」

「っぁ……俺だけ…、見て……名前」




















 




私(俺)の愛は増すばかり


どれだけ抱いても足りない…
狂おしいほど、愛してる







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