ハナビシソウ






強い日差しがカーテンから溢れてくる。
「孝介ー!起きて!」
「んぁ…?」


聞き馴染みの声が俺を呼んでいるみたいだが、すぐ睡魔に襲われてまだ瞼を開くことはできない。
「孝介!!朝だってば!!ったく誰のためにこんな朝早く起こしてるとおもって…」
「…るさいな、お前も寝ればいいだろ」


そういってグイッと彼女の腕を引っ張って自分の布団の中に引っ張りこんだ
「お前いい匂いする…」


そう言うと彼は頭を彼女の肩に埋めた。彼女は恥ずかしいのか顔を赤らめて逃げようとするが強い力で腕を握られていて離れることができない。
「 …名前 」


埋めてた顔を上げて彼がこちらを見てくる。寝ぼけているのだろうか、視線を外すことができない。
ジッと見つめていると彼の顔が近づいてきてることに気づいた


「え、ちょ…孝…」

「お前ら、何やってんの??」
コンコンっとノックと同時に声が聞こえた。部屋のドアの方を見ると見慣れた男性が立っていた。


「お兄ちゃん」
「…兄貴」

「孝介が起きねぇから下で呼んでこいって母さんが…。邪魔した??」
そう言って不思議そうにこちらを見ていた


「じゃ、邪魔じゃない!!孝介が寝ぼけててセクハラしてきただけだから!!」

そう言いながら顔を赤らめて部屋から逃げていった彼女。
逃げていった彼女を目で追いかけてから、不機嫌そうに彼が兄を見つめる


「んだよ。俺が悪いの?むしろ母さんじゃなくて俺が呼びに来たことに感謝してほしいね。…あんまひっつきすぎんなよ、お前ら双子だろ…」


その言葉に彼は顔を歪ませた。

俺たちは双子。
俺たちは姉弟。
俺たちは家族。

そう、何回心に刻んだだろうか。一番近い存在にいるのに、一番なりたい存在になれない…。








>>>>>>>>>>>>>>>>>




キーンコーンカーンコーン…

「やったー!昼飯だー!」
田島が嬉しそうに弁当を持って席までやってきた。その後ろにいつものようにキョドりながら三橋の姿もあった
ただ、今日は彼女の姿が見えない

キョロキョロと辺りを見渡していると浜田がやってきた。
「名前は?」
「……いねー」「購買?」
彼がシラネーと言いかけた時、田島がさっき誰かに呼ばれて教室出てったよと言ってきた
男?と浜田が聞くと、田島が頷いた

「見たことねぇやつだったから上級生かもな」
「昼に呼び出しって…、告白とか…?」
「こ、こここ、コク…ハク!!」

おいおい、告白ぐれぇでキョドんなよと浜田が三橋に言った


「まぁー、名前可愛いしなぁー」
そう田島が言うと、わかると浜田が言い、三橋が同意するかのように頷いた


「あんな彼女欲しいよなぁ。泉はいいなぁー、いっそ彼女じゃなくてもいいから、可愛いお姉ちゃん欲しい」
「よくねぇよ…あんなやつ」
「んじゃ、ちょーだい」
「あ、いいな、俺にも頂戴」


ビックリして田島と浜田の方を見る
「はっ…、あんなやつどこがいいんだよ」
「泉は姉弟だからわからねぇかもだけど、すげぇ可愛いじゃん。なぁ?」
「可愛いだけじゃねぇ、性格もいいよなぁ。この間、田島の下ネタを笑顔でスルーしてた時はビックリしたわ」


田島と浜田が二人で彼女について語ってくる


(…可愛いなんて俺が一番知ってんだよ……)
「スタイルもいいよなぁー」
(…やめろ)
「この間のプールの時やばかったな!」
(黙れ…っ)

バキッ!と音がなった。
音のなる方をみると彼の手に持っていた割り箸が折れていた。
ちょうどその時、教室のドアが開き、彼女が入ってきた
あー、お腹すいたと言い彼の隣に座ろうとしたが妙な空気を感じた


「どうしたの?みんなして?」
「いや…なんでもねぇんだけど…」
「そ、そういえば、さっき呼ばれてたのは告白?」

話を切り替えようと浜田が彼女に問いかけた

「あー…うん。」
「返事は?!返した??」
「返そうと思ったんだけど、なんか時間かけて考えてって言われて逃げられちゃった」
「うわー…やるなぁー。先輩だったでしょ?かっこよかった?」
「どうするの?付き合うの?」


質問攻めに戸惑う彼女
「んーー…かっこよかった…けど…」

ふと彼女が彼の手元に気がついた
「孝介、割り箸折れてるよ?」
そう彼の手に触れようとした時だった。
触れようとした手が音を立てて弾き返された


「触んな!!!」
「孝…介…?」

彼女がビックリしながら彼を見ていた。「…今日のミーティング、体調悪いから休むってモモカンに伝えといて…」

そう言って彼は鞄をもって教室を出ていった




>>>>>>>>>>>>>>>>>







その日から彼女は彼に避けられていた…。
朝起こそうと部屋に行っても彼はもう学校に行ったと兄に言われた。

お昼も別の部員と食べてるのか、チャイムが鳴るとすぐに教室から出ていく。
学校から帰ってきても目を合わせず部屋に引きこもってしまって無視された。


そんな状態が数週間続いた…。










「お前ら喧嘩してんの?」
放課後、教室でボーッとしていると浜田が心配そうに近づいてきた


「…なんか、嫌われちゃったのかな…」
泣きそうになる…。
ずっと生まれてからいつも一緒にいたのに、喧嘩しても自然と仲直りしていたのに、こんなに口を聞かないのは初めてだった。


「私…孝介になにか…した…のかな…っ」
「な、泣くなよっ、おい…」

下を向く彼女。自然と涙が溢れていた。
浜田は彼女の頬に手を当て、自分の服の袖で彼女の涙を拭いた

「ほら、下向くなよ…。上向いて、泣くな…」
「浜田…くん」

その時、教室のドアが開いた音が聞こえた。

「…何してんだよ」


ドアの方に目線を移すと彼が不機嫌そうな顔でこちらに歩いてきた

「何って…」
「名前に何してんだって聞いてんだよ!」

その言葉にイラっときたのか浜田が彼をにらみ返してきた

「お前が言うか?お前が泣かせたんだろ、お前が傷つけたんだろ?!」
浜田がそう言うと彼は逃げるように目線を外した


「浜田には関係ねぇ…」
「だったら…泣かせるなよ。姉弟だからって…」
「俺は姉弟なんて思ったことねぇ!!」


気がついたら叫んでた。
彼女は彼が何を言ってるのか理解ができなかった。
姉弟と思えないほど私事が嫌いなのかと…、また涙が溢れてくる


「…あー…くそっ」
「泉…お前今何言ったのかわかってんの?」
「……るせぇな!!わかってんだよ!!!でも、誰にも渡したくねぇ!!」

そう言って彼は彼女の腕を引っ張って教室を出ていった




>>>>>>>>




「痛い……っ、離して…、ねぇ!」

彼女の腕を離さずにズンズンと歩き進める彼。どこかの校舎の一角にある空き教室に入り、ドアの鍵を閉めた

何も言わずにただ彼女を見つめる彼。まだ彼女の腕は握られていた


「孝介…、私の事…嫌いなんでしょ?」

必死で彼女が手を振り払おうとするが強く握られた彼の手を振りほどく事ができなかった
泣かずにいられなかった。自然と涙が溢れて止まらなかった。
ずっと一緒だと思っていた。
見えない絆で繋がってると思っていた。


「なんで…っ…姉弟と…思ってないんで…っ!!」
「んっ…」

彼の唇が彼女の口を塞いだ。

「…っん…、こう…っ」

彼女の声が塞いだ口から漏れる。

「んっ…」
「少し…黙ってろ」


そう言って長い口づけをした…。
唇が離れた頃には彼女の息が切れていた

「はぁ…っ…なん、で」
「ずっと好きだったんだから…姉弟だと思ったことなんてない」
「…孝…介、」
「なのに…名前はどんどん俺の手から離れていこうとする!!」
「孝っ…んぁ」


また再び深い口づけをされる。
握られている方とは反対の手で彼を押し退けようとするが力が入らない

「離すかよ…っ」
「や…、孝介…んっ」

彼も握った手とは反対の手で彼女の腰に手を回す
触れられた腰がゾクッとする

「……告白、され…てんじゃねぇよ…」

そう言って彼は動きを止めた…。握っていた手をゆっくり放して彼女の腰に回した手で彼女を抱き締めた

「浜田に触られてんじゃねぇ…」

小さい声でそう言うと彼は彼女の肩に顔を埋めた。


「孝介…、どうしたの…急に…」
「急じゃねぇ…。ずっと好きだったんだ…。俺だけだと思ってたのに…、名前が離れていこうとするから…。」

俺だけ知ってればいいんだ…。可愛い顔も華奢な体も名前の全部、俺だけが知ってればいいのに…
ずっとそんな風に思いながら姉弟だからと、家族だからと何回自分の心に嘘をついたか

「もう、無理なんだ…、名前が好きすぎて、我慢すんの限界…」

チュッと軽い口づけをしてまっすぐ彼女の事を見つめる…


「俺たち、本当は血が繋がってないんだ…」
「え…?う…そ」
「嘘じゃねぇ…。だから、俺はもう隠すのやめる。ここで、俺を拒絶するか、俺を受け入れるか決めて」
「…そんな、急に…」
「もう後戻りできねぇんだよ…。俺を受け入れてくれるならこのまま…抱くから。でも、俺を拒絶するなら、もう二度と名前に触れないって約束する」
「なっ……」
「決めて…名前」


そう言って彼は抱いてた手を放して一歩身を引いた


「ずるいよ…」
「……」
「孝介ずるい…っ!それって拒絶したらこの数週間と同じ態度を取るつもりなの?」
「あぁ…」
「そんなの…、私が耐えられると思ってるの?」
「……」
「なんで…孝介が泣きそうな顔するの…っ」
「…ごめん」
「ずるいよ…孝介…」


彼女が泣きそうな顔を隠そうと下を向いた


「ごめん……。…名前。」

彼女の顔を覗きこんで彼女の瞼にキスをする。


「…顔、上げて…」
「……んっ……ぁ」
「はぁ…っ…、名前」



顔あげた彼女に深い深いキスをする。もう戻れないように。自分の痕を残すように、少し乱暴で優しいキスを…












 










私(俺)を拒絶しないで





好きすぎて…どうにかなりそうで
どうしようもない。










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