チューリップ(黄)





「あれ?花井くん?どうした?」

昼休み、ガチャと図書室のドアを開くと彼女が不思議そうにこちらを見ていた。

「…いや本でも読もうかなーって」
「そっか。」

そう言って笑った彼女。
別に本を読む為に来たわけじゃないけど…と思いながら彼は本を物色し始めた。その横で彼女は本の整理をしていた。
チラッと彼女の方を見ると彼女と目が合ってしまった。

「〜ッ…なぁ、」
「ん?」
「…苗字今日元気ねぇな」
「え?」
「…なんかあった?」
「……何もないよ」
「本当か?」
「…花井くんは優しいね」

そう言って笑った彼女。どこか寂しそうな表情をしていた。そんな表情を見て彼は何も言えなくなった。


「あ、ねぇ見てこれ」

そう言った彼女はどこからか花瓶に入った黄色いチューリップを持ってきた

「どうしたんだそれ?」
「中庭歩いてたら貰ったの。学校の花壇にチューリップが咲いてるなんて知らなかった」
「ふーん」

そう言って彼女は花瓶を棚に飾った。

「…ねぇ知ってる?」「ん?」
「黄色のチューリップの花言葉の由来は【西洋では黄色い花が好かれなかった】からなんだってさ」
「へぇ」
「…私は好きだけどな…、黄色いチューリップ」

「やっぱ、なんかあったのか?」


そう花井が言うと彼女は少し俯いて口を開いた…



「好きな人に好きになれないって言われたの。ただそれだけのことだよ」

「それだけって…」

「…黄色いチューリップと同じだよ」


今にも泣きそうな彼女。そんな彼女の表情が見ていられなかった。とっさに叫んでいた。




「俺は好きだ!!」



「え…?」


「…〜っ黄色いチューリップが」

「っ…ぷっ、はははっ!!」

「…笑うなよっ///」

「ははっ…ごめんっ。だって、はははっ」

「…///」

「…ありがと、花井くん。」



そう言って笑った彼女。笑った彼女に彼はホッとした。

望みがなくたっていい。好きになってもらえなくてもいい。

ただ君が泣く姿は見たくない。



望みのない恋





 



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