チューリップ(白)
白いチューリップを持って彼は立っていた。
思い出の場所。
約束の場所。
記念の場所。
毎日のように彼女のことを思い出す。
ここで彼女と出会った。
ここで彼女に告白した。
ここで彼女と約束した。
沢山笑いあって、喧嘩して、泣いて、仲直りして…また笑いあった。思い出の場所。
彼女の好きなチューリップの花束を持って彼は空を見上げた。
「…名前、」
そう彼女の名前を呟いてチューリップを地面に置いた。
彼女はもう隣にはいない。
どれだけ後悔しただろうか…。どれだけ苦しい思いをしただろうか。時間が戻ってくれればいいと何度思ったことか…。
どれだけ後悔しても彼女は戻ってこない。
前に進まなければいけない。
わかってる…。けど…
「…好きな気持ちは簡単に消えないよな」
彼はまた空を見上げた。
失われた恋
ずっと忘れないから…。空から見守っててくれよな。…なんて心の中で呟いて彼は歩き出した。