クレオメ
今日もお昼のチャイムが鳴った。
胸を高鳴らせながら彼女は弁当を持って走った。
今日は<あの日>。大好きな彼に会える日。誰もしらない、私と彼だけの秘密の日
ある教室まで彼女は走って行くとピアノの音が聞こえた。
ガラッと音楽室のドアを開けると彼の手が止まりコチラを見てニコッと笑った。
「走ってきたんっすか?」
「…だって早く聞きたかったんだもん//」
「苗字先輩、音楽好きですもんね」
音楽じゃなくて花井くんのピアノが好きなんだけどな…、
彼女はそう思っていると彼はピアノから席を立って空いてる席に座った
「飯食いましょうか」
「うん」
彼と彼女は一週間に一度こうやって一緒に音楽室で弁当を食べている。弁当を食べ終えたら必ず彼のピアノを聞くのが彼女にとって幸せのひと時だった。
彼女と彼の出会いは単純なものだった。昼やすみにフラッと歩いていた彼女。どこからか聞こえてくるピアノの音につられて向かった先は音楽室。繊細なんだけど力強いその音に惹かれて廊下で立って聞いていた。そんな日が続いたある日、彼が彼女に気がついて「よかったら中で聴いていいっすよ」と教室に入れたのが始まりだった。
「花井くんって本当すごいね。容姿端麗、頭脳明晰って感じ」
「なんすかそれ//」
「最初なんかギャップ感じてびっくりしちゃったよ。野球部キャプテンがピアノ弾いてるんだもん」
「…似合わないっすよね;;」
「いやいや、そんなことないよ。私は好きだな花井くんのピアノ//」
そう言ってニコッと笑うと彼は照れてるのか顔を背けた。
「あの…、」
「ん?」
「…俺ばっかり弾いてるのアレなんで先輩もなんかしてください」
「え?!一緒になにか弾けってこと…?」
「…ダメっすか?」
「だ、だめじゃないけど…私花井くんみたいに上手くないから足手まといになるし…。あ、それに楽器ないしね!」
「……じゃぁピアノ一緒に弾いて下さい」
「連弾…はちょっと…」
「……ダメっすか?」
「…うっ……ダメじゃない…けど…」
そい言うと彼はどこからか椅子を持ってきてピアノの前に置いた。
「どうぞ」
「…本当に弾くの?下手だよ?」
「大丈夫っすよ。楽譜ありますし」
「……今日、準備してあったの?」
「……さぁ?」
そう言って笑ってごまかす彼。仕方なく隣の席に座って楽譜を見た。…これならイケるか。
そう思って隣を見るとちょうど彼と目が合ってしまった。
近いし…、腕とか触れそう…///
「大丈夫っすか?」
「あ、うん。…」
「じゃぁ弾きますか」
そう言って彼が合図をして一緒にピアノを弾いた。
隣には大好きな彼がいて一緒にピアノを弾いてる。それだけなのに何故か変に緊張して焦って変に恥ずかしくなって集中できなかった。曲が終わると彼は少し笑った。
「な、何?」
「いや、上手いのに演奏中は面白い顔するなーっと思って(笑)」
「し、集中できなかったの!///」
「…?、なんで?」
「それは…、その……、花井くんが…」
「俺?」
「…な、なんでもない//」
「……まぁ俺もあまり集中できなかったから人の事言えないけどな」
「…な、なんで?」
「…先輩が近すぎてキスしたくなるから」
「ダメ…?」
「…ダメ…、じゃ…ない……///」
そう言って彼は彼女に近づいた。
秘密のひととき