バレンタイン








毎年やってくる冬のイベント。
友達以外に渡す人なんかいないから友達の分キッチリ作ってラッピングした。
今年も友達同士とチョコを交換して終わる。そう思っていた…










バレンタイン。

















「はよー」
「おっす」

いつもの時間に学校に着くと隣の席の泉が机の上に沢山置いてあるチョコを黙々と食べていた。

「…泉くん、それ全部チョコ?」
「なんか机の中に入ってた」
「…すご。それに比べて」


近くにいた浜田に目をやるとチョコを貰ってなさそうなので哀れんだ目で見つめた。

「な、そんな目で見んなよ。なんだったら苗字が義理チョコでもくれよ」

「私は友達の分しか作ってないから無理」

「マジか…、今年もチョコ無しか…」



そんな事を話ながら教室に入ってくる友達にチョコを渡していると、背中に強い衝撃が起きた。

「た…、田島くん…」
「おーす!」
「…毎回言ってるけど後ろから急に抱き着かないでよ。ビックリする」
「だって苗字、小さいから抱き着きやすいんだもん」
「……」


いつものことなのでため息をつきながら他の友達にチョコを渡そうと彼をズルズル引きずりながら教室を歩いていると彼が話しかけてきた。



「なー、」

「何?」

「俺には?チョコないの?」


無邪気に抱き着きながら聞いてくる田島に「無いよ」と言うとあっさりと抱き着いていた手をパッと離した


「…っ…?」


いつも中々離してくれないので驚きながら後ろを振り返ると鞄から何か取り出していた。


「用意してないと思ってたから俺が用意しといた」


そう言って差し出してきたのは可愛くラッピングされた箱。


「え?な、何?」

「…?…バレンタインって好きな人にチョコを渡す日だろ?はい」

「…へ?…そ、それって…//」

「バレンタインチョコだけど?」


いきなりの告白に焦って戸惑っていると彼は少し悲しそうな顔をしてこちらを見ていた。


「受け取れねぇの…?」

「そ、そういうわけじゃ…//」

「俺のこと…嫌い?」

「…嫌いじゃ…ない…けど//」

「じゃぁ…、俺のこと好き?」

「……、……っ/////」


答えはもう決まっていた。
恥ずかしがりながらも彼女は彼が差し出したチョコを受け取ると、
その瞬間、スゴイ歓声が聞こえてきた


「ヒューヒュー!!」
「田島やるなー!」
「おめでとー」
「な、ななな…//////////」

そういえばここ教室…と今更ながら余計恥ずかしくなり顔を下に向けていると急に彼が腕を引っ張ってきて耳元で何か囁いた後、チュッと音をたてて彼女の頬にキスをした。
















無邪気なバレンタイン


《幸せにするから、ゲンミツに!》







 



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