ホワイトデー
バレンタインほど騒がしくはない今日はバレンタインから一ヶ月経った日。
あのバレンタインは夢だったのか…と思うほど進展する事はなくバレンタイン前と変わらないいつも通りの日常だった。
付き合ってるわけではない。告白されたわけではない。じゃあ、あのキスはなんだったんだろう。
そんな事思いながら迎えた今日は…。
《ホワイトデー期待しておけよ》
ホワイトデー。
「苗字?どうしたの?変な顔して」
「…水谷」
「部活行かないの?」
放課後の教室。とっくに部活が始まっている時間の中、彼女は一人教室に居た。ミーティングを終えた水谷が教室に戻ってくるとそんな彼女を見て心配そうに話しかけた。
「んちょっと…ね」
「どうした?…なんかあった?」
「…なにもない。なにもおきないから悩んでるんだけど…」
「へ?」
彼女は一つため息をついて水谷の方を向いた。
「……水谷はホワイトデーのお返しとかしたの?」
「え?あ、あぁ。篠岡とクラスのやつに貰ったから飴とかマシュマロとか買って渡したよ」
「ふーん…」
「…苗字も欲しかった?」
「いや、私バレンタインあげてないからいらないし…」
「苗字って誰にもあげなかったの?」
「え?いや…あげなかったって言うか、あげたって言うか…、奪われたって言うか…」
「…?」
《ホワイトデー、期待しておけよ》
そんな彼の言葉が頭に浮かんだ。
「別に期待なんかしてない…んだけど…」
そう言ってため息をついた彼女に話が見えない水谷が頭にハテナを浮かばせて首を傾げていた。
「ねぇ今日…寒いくない?」
「え?今日暖かくない?」
「…そう?…すごく寒いんだけど…」
「風邪?熱あるんじゃない?」
「まさか」
そう言って彼女は自分のおでこを触った。
「自分で触ってもわからないだろ(笑)」
「じゃあ水谷さわってよ」
彼女そう言うので水谷は手を伸ばした。が、彼女に伸ばした手はバシッと音を立ててはじかれた。
何事かと思っていたら、先程までいなかった阿部が彼女の前に立っていた。
「……阿部」
「俺のだから触んな」
そう言って彼は彼女の手を引っ張って教室から出て行った。
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「ちょ…阿部」
「……」
「痛いから!」
「……」
「ねぇ、離してっ!」
気がつくと彼女は屋上に連れてこられた。彼女は捕まれている腕を振りほどこうとするが彼が強く握っているのか振り払うことはできない。
すると彼は少し不機嫌な表情をして彼女の方を見つめていた。
「な、何よ…!」
「……」
「っていうか今更何なの!バレンタインにいきなりキスしたかと思えば何事も無かった様にいつも通りだし…」
「……」
「だいたい、俺のものって言われても私まだ阿部の気持ち聞いてな、」
「好きだ」
「…え?」
「何回も言わせんな…。っていうか好きな奴以外からチョコ貰わねぇって言った時点で告白してるもんだと思ってたけど?キスだって好きな奴しかしねぇよ…」
「…でも、阿部いつも通りだったじゃん」
「そりゃぁ、苗字の気持ち聞いてねぇからな」
「……っ…」
「まぁ、聞かなくても答えは一つだろ?」
「っ…んっ…!/////」
いきなりキスしてきた彼。腕を捕まれている為拒むことが出来ない。そのままキスしていると口の中に何か入ってきた。その瞬間、捕まれていた手が離されていたのでバッと彼を押し退け距離をとった。
「な、な…////」
彼女の口の中には飴が入ってた。きっと先程まで阿部が舐めていたものだろう。そう思うと余計に恥ずかしく感じたのか顔を赤らめた。
「ホワイトデーのお返し」
「て、手で渡せばいいでしょ?!///っていうか期待させといて結局、飴とか…」
「ちげーよ。お返しはコレ」
そう言って彼は首元に指を刺した。彼女は自分の首元を見るとチェーンにかかった指輪が首にぶら下がっていた。
「いつのまに…」
「っていうか期待してたんだ?」
「ち、違う!////」
「違う?…じゃあいらねーの?それ」
「……////」
「まだ、苗字の気持ち聞いてないんだけど」
「…聞かなくても答えは一つなんでしょ//////」
微熱なホワイトデー
「顔真っ赤(笑)」
「な、ちが、風邪だから!///」
「熱あんのか?」
「そうだよ!だから顔赤いのは熱のせい!///」
「じゃぁ俺にも移るな。キスしたから」
「なっ!…馬鹿っ!////////」