バレンタイン








甘い物が好きだ。チョコとか生クリームとかケーキとか。だからバレンタインは毎年待ち遠しくてたまらない。姉ちゃんや母親からチョコ貰ったりクラスの女子とか義理チョコを配ってくれたり。毎年どんなチョコが貰えるのか待ち遠しかった。

今年は特に待ち遠しい。

同じクラスの同じ部活のマネージャーである彼女。俺は彼女が好きだ。だから義理でもいいから彼女の手作りチョコが食べたいと思った。




そんな今日はバレンタイン。














ガラッと教室のドアを開けて自分の席に向かって走った。今日の朝練に彼女は参加してなかった。もしかしたら先に教室来て机の中に入ってるかもと思った。

彼女の姿もなければ机の中にもチョコらしきものは入ってなかった。

しばらくすると篠岡が教室に入ってきた。可愛く包装されたチョコを阿部達に配っていた。阿部だけリボンの色が違うんだけどな。

そんな事を思いながらサンキューと言って篠岡からチョコを貰った。

だけど俺が欲しいのは篠岡のチョコじゃない。

彼は机に鞄を置いて教室を後にした。





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数分して教室に戻ると彼女が来ていた。ちょうど阿部達に義理チョコを渡していた所だ。

「苗字、はよー」
「あ、水谷くん。おはよー」

そう言うと彼女は自分の席に戻ってしまった。

「…へ?」
「ぷっ…ククッ…水谷ざまぁww」
「あ、阿部!」

そんな風に笑っている阿部の手には義理チョコ。そんな阿部を注意している花井の手にも義理チョコ。
どちらも同じラッピングがされた彼女のチョコ。

「ま、まぁ、そろそろホームルーム始まるし後で渡すんじゃねぇの?ほら、実は水谷が本命で皆がいる場所だと恥ずかしいから後でこっそりととか…」

そう言って慰める花井に阿部が腹を抱えて笑っていた。






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昼休み。
彼女は弁当も食べずにどこか行ってしまった。そんな彼女を見ていた俺を阿部はまた笑った。

「ククッ…。まぁ水谷元気だせww苗字から貰ったチョコ半分食うか?ww」
「い…っ。いらない」

そう言って彼も教室を出て行ってしまった。

「おい阿部。あんま水谷からかうなよ」
「だってアイツおもしれーんだもん」
「…だからってなぁ。水谷に言ったほうがいいんじゃないか?不憫になってきたぞ」「アイツの為だ。言うなよ」





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放課後。今日は運がいいのか悪いのか部活がない。ミーティングもない。教室では生徒達は帰る準備をしていた。彼女は誰よりも早く先に教室を出て行った。

「…マジかよ」
「ハハッ…水谷、乙ww」
「阿部!あのな、水谷…」
「あー…。もういいよ。うん。俺ちょっと一人になりたいから先帰ってて」

そう言うと阿部達は彼を残して教室を出て行った。


本命とかそんな期待はしていない。義理でいい。でも義理さえも貰えない俺は嫌われているんだろうか。

そんな事思いながらゆっくりと帰る支度をして教室を後にした。






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もしかして下駄箱に入れてあるとかそんな期待もすぐに裏切られて校舎から出た瞬間だった。


「たにー!!…水谷文貴ー!!」


どこからか自分の名前を叫ぶ声が聞こえ辺りをキョロキョロと見渡した。

「2階!教室のベランダ!こっち!!」

言われて2階にある教室のベランダを見ると彼女が立っていた。
いまさらなんだと思っていると彼女はどこからか箱を取り出した。皆と同じラッピングがされてあるチョコだ。そう確信した時だった。


「野球部レフト!フライキャッチ行くよー!!」


その瞬間、彼女が持っていたチョコの入っている箱が宙に舞った。

「マジかよ!わ、あ、おっ!」

ゴトッと音をしてチョコは地面に落ちた。

「クソレフト!!今からそっち行くから待ってて!」

そう言って彼女はベランダから姿を消した。
怒ってる?!マズイ!そう思って落ちたチョコの箱を拾ってオロオロしていると彼女が校舎から出てきた。

「…水谷くん」
「落として、ごめん!」
「いや、落とすの知ってて投げたからいいよ」
「…それってどういう意味?」
「えっと…。それ…、皆と同じチョコなんだよね」
「え?あぁ義理チョコってことだよね」
「…それもあるけど。…それ市販のチョコなの」
「あ…そうなんだ」
「あの…、そのチョコ返して」
「え?」
「水谷くんフライ落としたからあげれない」

そう言われて彼は彼女にチョコを返した。
結局チョコ貰えないのか。そんな事思っていると彼女が手に持っていた紙袋を差し出した。

「え?」
「代わりにコレあげる…。手作りだから」
「え、え、それって、え?」
「…水谷くんが昨日言ってたから手作りに作り直したの…。」


彼女の言葉に昨日の事を思い出した。


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昨日の部活帰りの事だった。

「千代ちゃんもうバレンタイン用意した?」
「したよー。名前ちゃんも?」
「ばっちり!今年告白する?」
「しないしないっ!///名前ちゃんは?」
「しないつもりだよ。てか千代ちゃん手作りなんだよね、凄いなー。私、お菓子作り苦手なんだよね」
「そうなんだー。じゃぁ市販?」
「うん。いつも買ってる所で…」

その時、ちょうど阿部と花井と一緒に水谷が彼女達の前を通った。

「チョコ?やっぱ手作りだよね。義理でも手作りなら最高。本命で手作りならもっと最高にうれしい!」
「水谷甘いもん好きだもんなー」
「市販でもいいんだけど市販なら自分で買えるじゃん?やっぱバレンタインは手作りがいいなぁー」



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「って水谷くんが言うから昨日の今日で急いで作ったの!///朝は遅刻して部活休むしお昼はラッピングが終わってなかったらお弁当食べれなかったしギリギリで作れたのに水谷くん帰ろうとするんだもん!」

「…え?…でもさっきの市販って事は阿部達の義理チョコは市販ってことだよね?」

「だから…っ!義理チョコでも市販は嫌って言うから…」

「俺のだけ手作りってそれもしかして…」

「…本命だったら…受けとってくれないの…?//」


彼女のその言葉に彼は顔を真っ赤にしながらチョコを受けとった。


















クソレのバレンタイン

「やったぁ!ありがと!マジうれしい!」
「…そういえば阿部くん達は?」
「え?なんで?」
「チョコ完成するまでバレないようになんとかごまかしてって言ってあったんだけど…」
「阿部…(アイツ知ってて笑ってたのか!!)」



ネタ化してすみません…



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