バレンタイン
今日はバレンタイン。
女の子達はチョコを作ったり買ったりして好きな男の子にチョコを渡す日。
そんな今日は学校中の生徒達は皆、浮き立っていた。
一人除いて。
「こんな所で何してんだよ。」
「阿部…」
部活サボって屋上でまったりとしていたら同じクラスの阿部が話かけてきた。
「部活は?」
「後で行く。苗字こそ部活は?」
「あー…。サボり」
「なんで?」
「なんか苦手なんだよね。」
「何が?」
「バレンタイン。みんな浮かれててバレンタインの話をしてキャーキャーわーわー騒いでさ。いくつ貰ったとか誰かにあげたとかさ。だから逃げてきた」
「…それは?」
そう言った阿部が指指したのは彼女が手に持っていたチョコレート。
「これ友達から貰ったやつ。友チョコ。食べる?」
「いらねぇ」
「じゃあ、あげない」
彼女は手にもっていたチョコを口の中に入れた。
「…苗字が持ってるチョコはそれだけか?」
「そうだよ。だって興味ないし」
「んだよ…」
「あ、もしかして貰えると思った?」
「……そうだと言ったら?」
「え…?」
「…だから、俺が苗字から貰えると思ってたらどうすんだよ」
そう言って阿部がジリジリとコチラに近づいてきた。彼女の背中には金網。逃げる暇もなく阿部は手を伸ばして正面から彼女の左右を塞いだ。彼女は動くことも出来ずに彼から視線をそらした。
「…どうなんだよ」
「どうって言われても…。阿部、ち、近い…//」
「……」
「…っ、他の子から貰ったんでしょ?」
「受け取らなかった」
「え?」
「あぁいうのって好きな奴からじゃないと受け取っちゃダメなんだろ?」
「わ、わかんない…。…どっちにしても私チョコ用意してないから…」
「…チョコならあるだろ…」
「…え?」
そう言うと彼は彼女の持っていたチョコレートを彼女の口に入れた
「な、なに…?」
「口の中に入れちまえばお前のチョコだ」
そう言って彼は彼女にキスをした。
初めてのキスは甘ったるくて口に広がっていくにつれてチョコも身も心も溶けていくようだった。
強引なバレンタイン
「ホワイトデー、期待しておけよ」
そう言って彼は部活へ行った。