ホワイトデー








バレンタインから一年と一ヶ月が過ぎた。あの日、交わした約束…忘れずに彼は待ち続けていた。




寒い冬も終わり、暖かい風が吹きはじめてきた3月14日。
小さな蕾が実りはじめている桜の木の下で彼は今日も待っていた…




ホワイトデー。













「約束って言ってた癖にどれだけ待たせんだよ」


去年のバレンタインに交わした約束。去年渡せなかったホワイトデーのプレゼントを握りしめて彼は待っていた。

約束のバレンタインから毎日…ずっと。


あの日別れて一年間、何も連絡もなく…もしかしたら約束なんて忘れてるんじゃ…なんて何回も思った。
せめてホワイトデーが過ぎる今日まで待ってみようと彼はここにいた。


「……」


携帯を開いて時間を見た。
何時間待っただろうか…、彼はため息をついて空を見上げた。もう、太陽は傾いていて沈もうとしていた。


「……ッ。来るわけねぇか…」








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「朝早くに呼び出してどうした?」


去年のバレンタイン。


「…これ…受けとってくれる?」
「え?…」
「チョコ…。本命なんだけど…」


幼なじみからの突然の告白。


「俺に…?いいのか?///」
「…うん。今日で最後だから」


そして、突然の別れ。


「最後って…」
「海外行くんだ。…だから…」
「…な…、聞いてねぇよそんなこと…」
「言ってないもん…」
「いつ…行くんだよ…」
「今日…」
「なっ!…なんで言わねぇんだよ!」


「だって…、両想いだって知ったら行きたくなくなっちゃうでしょ…」


そう言って悲しそうな顔をして笑った彼女。必死に涙を堪えてるのがわかるぐらい辛そうに笑っていた。


「…そろそろ時間だから、行くね」

「いつ…帰ってくるんだよ」

「…わかんない。1年は向こうにいるから…。その後の事は…」

「…ッ帰ってこいよ!」

「…!」

「待ってるから…!」

「梓…、」

「待ってるから絶対に帰ってこい」

「……また、…来年にチョコ渡してもいいの…?」

「あぁ」

「…約束だよ」



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パチンと携帯を閉じてポケットに閉まった。

「バレンタインから一ヶ月も過ぎてんだ…。もう…来ねぇか」


彼はそうつぶやくと手に握られていた彼女に渡すつもりでいた小さな箱を桜の木の下に置いた。


(じゃあな…)


彼は心の中でそうつぶやいて、その場を去るように歩き出した。



























「野球部キャプテンー!受け取れー!!」


「…?!!!」


バシッと音をたてて飛んできた箱をキャッチすると「ナイキャチ!」と言って手をふる彼女の姿が見えた。


「…遅ぇよ馬鹿」

「…ただいま!」

「…おかえり、」











再会のホワイトデー




「…待ちくたびれたぞ」
「待ってくれてありがとう」
「…投げてきたコレは?」
「一ヶ月遅れのバレンタインチョコ。チョコ渡す前にホワイトデーのお返しはどうかと思うよ?」
「あ…!それ!!」
「木の下に置くなんてロマンチストー」
「うるせー////」
「どう?似合う?」
「……い、いいんじゃねぇーの?///」


お返しは想像にお任せします



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