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 彼を救う方法があると知ったので、一片の迷いも無く駆けていた。

 直属の医師からは、もう手の施しようが無いと言われていた。
 彼の為に呼んだ隣国の医師も同じ事を言った。
 自分の責任だ、と嘆いた彼女は、部屋に一人籠っている。
 しかし、自分には彼の命を長引かせる事が出来ると確信した。

 きっと彼はまだそこにいるだろう。
 階段を駆け降りて、重い鉄格子の扉を開けた先、彼は眠っていた。

 その手を握れば、彼は応えてくれた。
 彼の瞳に、私は映っただろうか。

 明日にはきっと、彼女も笑顔を見せてくれるだろう。
 私も含めて、多くの人間が彼の誕生と成長を望んだのだ。
 彼の歩む道に幸福が訪れることを、私はずっと祈っている。

 だから……、お前も同じだと言ってほしい。



「……お前は何故、死を選んだ。お前が居なくなろうと、お前を望む者が居なくなるとは限らないというのに」

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