練習が終わり空が夕焼け色に染まる中、ブン太は部室の前で部長を待っていた。

職員室に鍵を返しに行くから先に帰っていていいよ?
と言われたのだがブン太としてはやっぱり大好きな人と一緒に帰りたい。
ぐううと鳴るお腹をさすりながら食欲に負けないようにぐっとこらえて幸村が来るのを待った。

夕焼け色から夜の色に変わろうとする空を眺めながらぽつりと呟いた。

「幸村くん……」
「なあに?」
「っうわ!?」

気が付くと横で幸村がにこにこと笑いながらすわっていた。
全く気づかなかった…と思いながらブン太は幸村を見た。
驚いたブン太を楽しそうに見つめる部長であり恋人である幸村。

「そんなにびっくりしなくてもいいでしょ?俺そんなに気配なかったかな?それとも怖かった?」
ふふ、と笑ながら立ち上がる幸村を見てブン太も立ち上がる。

「幸村くんいきなりすぎ!俺が喋る前に声かければいいだろぃ!」
幸村くんって呟いたのを聞かれたのがめちゃくちゃ恥ずかしかった…!とブン太は心の中で思う。
それを気付いているのだろうか幸村はその事をからかう。

「だってブン太眺めるの楽しかったんだよ、可愛い顔だったし。ブン太はなんで俺の名前呼んだの?」
やさしく笑っているが言っている事は少し意地悪だ。

「そ、そりゃ…幸村くんに会いたかったからだろぃ……」

だんだんと声が小さくなり最後はもごもごと何を言っているのかよく分からなくなる。

テニスは自信満々なのに、可愛いなあ…と幸村はブン太の頭を撫でた。
優しく髪をとかしながら幸村はブン太の買おうかなを見つめる。
「ブン太、知っている?キスって五感全部を使ってする行為なんだって、キスしたら五感奪えたりするのかな?」

そう言って幸村は顔を近づけ、優しくキスをした。
ぽわっとブン太の顔が赤くなる。
あたふたとしてからはあ…と少しため息をつくブン太。
「い、いきなりキスすんなって…!心の準備とかが…」
くすくすと可愛く笑いながら幸村は言った。
「ごめんね?でも、いきなりした方がビックリしたブン太の顔が見れるから。つい、ね」

帰ろうか?と幸村が手を出すとぎゅっとその手をブン太が握る。
「幸村くん……」
「なあに?」
「…大好き」
「ふふ、俺も。」

五感全部、俺でいっぱいにして欲しいんだ。

そう呟いてまたブン太にキスをした。


end


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