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落ちこぼれは落ちこぼれである。

そしてそんな俺達は家の嫌われ者である。むしろ嫌われ物である。術式を持たず、持つものを持たない俺達は、人として認識されているのかどうかも怪しい扱いをされてきたわけで。烈という個人の人間に対して興味を持つ所か認識すらしようとしない生家は早々に俺を勘当した。有り難いことに、ヤバイ奴らがヤバイ奴らの方から手を切ってくれた訳でそれに関してだけは感謝している。それ以降遠縁の親戚で腫れ物扱いされながら小学校に入学し、禪院甚爾に出会い、喧嘩しては遊びに行き仲を深め、中学に入学し、日々を過ごしていくなかでふと気が付く。



何をしてやろうか、と。



誰に?

勿論、生家及び親族及びその関係者に。



餓鬼の頃であれば思考も未熟だから何をしても大したことにはならないとでも思っていたのだろうか。生家で幼少期に受けた虐待に近い訓練擬きや罵詈雑言はきちんと覚えている。忘れていることもあるにはあるだろうが、負の記憶は心に根付く。生家を出たからと言って自由になれたわけでもなく。生家からの監視がなくなった代わりに俺が得た物は何をするにも無関心に静観してくる遠縁の親戚である。あいつらは何がしたいのか。呪霊の前に放り出され、ボロボロになって地を流す餓鬼に向かって「期待はずれ」だ?そもそも期待していないくせに何を言う。少し自分のことを理解して呪力の流れが分かるようになったから呪霊を倒したら「半端者が」だと?黙れよ雑魚。体を休めるのが家ってやつらしいのにそんなのは物語の中にしか存在しないらしい。

例え俺が暮らす離れの部屋に"偶々"倉で封印されている筈の呪物が転がっていたり、呼び出しだと連れ出された先に"偶々"呪霊が大量発生していたとしても何もせず。報告をする俺を温度の無い目で眺めてくるだけの仮宿だ。これだったら馬小屋とかの方がマシなんじゃないかと思った日に公園の遊具の下で野宿したら戻ったときに爪剥がれたし。
甚爾は家が禪院様だしもっと酷そうだなとは思っている。



本当にこの世は呪術家系も大人も人間も全てクソだ。



態々そんな生家が生業にしている呪術師を育てる高校に行く価値は無い。まじでない。てか行っても嫌がらせめちゃくちゃされるのは分かっている。仮に上手くことが運んで呪術師になったとしても階級は絶対に上に上がらない。実力がないからとかそういう不安を言っているのではなく、圧力とか嫌がらせ的な意味で早いところで頭打ちになる。普通に考えて三級にいければ良い方、奇跡が起きて準二級だろうな。


ならば何故、呪術高専に入学しようと甚爾に言ったかと聞かれれば答えは一つだけなのだ。



嫌いな奴らを嘲笑う為。



大嫌いな生家及び親族一同を見下げて嘲笑することぐらいは夢を見ても許されると思う。上から見下げてくる奴の足を掴んで引き摺り落とす。

嫌いだ。家も呪霊も呪術も術式の無い自分もそれを理由に要らないものを押し付けてくる馬鹿共も。

嫌いだ。


「なぁ甚爾、俺さ…呪術高専行こうかなって思うんだけどお前も行くぞ」

だから唯一好ましい甚爾を巻き込んで進んでいこう。
大丈夫だよお前は逞しいから。なんて勝手に笑ってやれば甚爾はなんだかんだ考えてくれることは知っている。

向かってきた拳に文句垂れながらも、どうしても口角が上がってしまっていた。そんな俺をみて甚爾は勿論気味悪がっていた。酷い。