出会いは小さな飲み屋から。
酔っぱらい同士の出会いにしてはあまりにもしっかりと理性が残っていた
だからこそ、その瞳が寂しさを映していることに気付いてしまったのか、それともそれさえも勘違いだったかもしれない
仕事に疲れた日には帰りに飲み屋に立ち寄って嫌なことを忘れるのが習慣だった。だから常連になっている飲み屋はいくつもあるし、居酒屋で出会った気のいい飲み友達だって沢山いた
いつもなら簡単に話して、お互い気持ちよく酔った所で帰る場所に帰るか、何軒目かのはしご酒に跨がるはずなのに、その日だけはその瞳に魅せられてしまった
そこで出会わなかった良かったのかもしれない
そうすれば今こんなに胸が締め付けられることもなかったかもしれないのに
瞳孔が開いた瞳は笑えるくらい目付きが悪いのにそこに少し乗せられた感情に心が動いてしまった
チリン…と、
その時…小さく耳の奥で、頭の中で鈴の音が聞こえた気がしたんだ
「おにーさん、名前は?」
何でそんなに寂しそうにお酒飲んでるの、なんて聞けやしなかった
[ 2/7 ]
[prev] [next]
[目次]
[しおりを挟む]
novel top