きらびやかな世界の裏側に隠れるように行われる非道な行為、それさえもが周りを喜ばせることとなることもあるでしょう
見るものを魅了するステージを続けるとあるサーカス団にはひとりの小さな少年がいました。
年の頃は成長しきれていない10歳にも満たないような少年です。
その少年は不思議な力を持っていました。
剣で腕を落とされても血を噴くことはありません。
何発もの弾丸で体を貫かれても死にません。
傷がついた部分は青い光と共に回復しました。
少年は悪魔の実を食べた能力者でした。
育った島で「化け物」と罵られた少年は、サーカス団の団長に引き取られました
「見せ物」として。
大勢の民衆の前で腕を切られますが、少年の腕は光と共に元に戻ります。
硬い鞭で叩かれますが、血が出るはずの肌は傷つきません。
それを見た民衆は歓声を上げます。サーカス団の「見せ物」は評判でした。
─陰で泣いていた少年の声は誰にも届くことは無かったけれど。
痛くないわけではありません。傷が治りはしてもその時に感じた痛みは傷として残ります。
痛くないわけがありません。少年の心はボロボロでした。
なんで、なんで?
自分が悪いのでしょうか?
「見せ物」であるけれど少年が望んでなったわけではありません。
どうして自分が?
悪魔の実を食べたのが間違えだったのでしょうか。例えそうでも過去には戻れません。
誰も助けてくれないの?
この街で「見せ物」は好評でした。サーカス団は人気でした。誰も少年の声には気付きません。
─だって少年は「見せ物」だから
少年は声を上げることを止めました。助けを望むことを止めました。
悲しむことを放棄した少年は、笑顔を浮かべるようになりました。
感情を隠せる笑顔というお面を被りました。
「見せ物」を望む民衆が、喜ぶようなお面を。
─今日も少年は「見せ物」のまま。
その少年の名は、マルコと言いました。
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