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つらつらと

傘のなか (18/18)

「雨降りの傘の中ってお互いの声が一番綺麗に聞こえるらしいぞ」
「それ今言う必要あったか」
「ないね!」

榊が突然思い付いたことを口にすることはよくある。榊からするとその逆もしかりなのだが。
新一と榊が出会ったころからお互いに思い付いたことを好きなように話しているため遠慮も配慮も何もない。そして今日、榊がその豆知識を口にしたときの状態は、
傘がひとつしかない中で突然降り始めた雨。荷物を濡らすのも自分が濡れるのも嫌がった結果、コナンのこどもの姿を利用してコナンが荷物を抱え、榊が荷物を抱えたコナンを抱っこするものだった。
傘のなかでそのような状態になっているにも関わらず態々出してきた情報がそれかと呆れが滲み出るのもしょうがない

「つまり?今聞いてる榊の声が一番綺麗っつーことか」
「そーらしいよ、ええ声で囁いてあげようか…新一」

「……うわ、鳥肌立った」

「ひでぇ」
コナンの反応を見て呼吸が乱れるほど爆笑している榊が笑いすぎて溢れてきた涙を拭いながら息を整えるために吸い込んだその時

「榊…」
追い討ちをかけるように嫌に格好つけた少年声で榊の名前を囁いたコナンの声に榊は笑い袋が狂ったように傘のなかを笑い声で木霊させたのであった