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世界五分前仮説 (16/18)

「もし世界が五分前に始まったとしたら」

ソファに仰向けに寝転がりながらスマホを弄っていた筈の榊が手を止め、顔の上に乗せた腕で目を隠すようにしながら呟いた。
一人掛けのソファに座り、榊が出したままにしていた小説に目を通していたコナンは聞こえた声に反応し、榊の方に目を向けた。

「世界五分前仮説か…オメェそういうの好きだよな」
「まあいいじゃん、コナンくん。例えばお前が小さくなって今みたいに事件にしょっちゅう巻き込まれてるけど今日は何にもせずに俺んちでだらけてる。現在15:24、この五分前に世界が始まったならお前がそうなってるのも全て世界の設定ってことだ」
「設定って…そもそも世界五分前仮説は思考実験的なものだろ」
「そうだよよくご存じで、流石名探偵」
「バーロ、哲学とかそういう本はそれこそお前の部屋の中に転がってたんだろうが」
「そんでぇ」

呆れた顔で答えていくコナンに対し、やっと顔を向けた榊はわざと憎たらしげな声を出す。その声は散々、新一が子どもの頃からムカつくから嫌いと言ってきた声色で、

「世界が五分前に始まったとしたらコナンであるお前の記憶も偽の記憶かもしれないってことな訳だけど」
「(榊にしては賢いこと言ってるけどこれは…)つまり何が言いたいんだよ…」

「俺今すげぇハンバーガー食いたいんだけどこれも偽の記憶か…??」
「いや………食いに行けばいいんじゃねえの?」


「よし、行くぞ」

この日はこうしてハンバーガーを食いに外出した。