空も飛べるはず (13/18)
部屋の窓から見える天気は、気持ちいいぐらいに晴れてはいるものの、それと同時に室内からでも大きな風の音が聞こえるほど暴風だった。
「なぁ新一」
「なんだ榊」
「こんな暴風見るとガキの頃思い出すわ」
「やめろ…やめろよ、」
「空…飛べなかったよなー…」
遠い目をして外を見た榊と暗い顔をして下を向いたコナン。思い出されるのは二人が小学3年の夏休みのとある1日の記憶。その日もちょうど、暴風が吹き荒れていた。
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「新一!外見ろよ!」
「外見ろっつっても大荒れだろ?」
「風やべえな…これ飛べそうじゃね?」
「榊お前何馬鹿なこと言ってんだよ」
「いや傘さして飛べばそのまま飛ばされそうじゃん…やろうぜ」
「…はぁ?」
呆れた声を出した新一に対して、榊は嬉々として言葉を続けた
「新一だってやってみたいだろ?俺はやりたい。楽しそうだし飛べたら絶対楽しい!」
「そもそもいくら子どもの体重っつっても風で飛ぶか?」
「ノリ悪いぞ新一!暴風は大人も立ってるの厳しいって父さん言ってたし出来るって!
あ、それともなに?新一怖いの?」
うわーとわざとらしく引いて見せた榊の挑発に苛ついた新一はムキになり玄関へと向かったのだ
「バーロ…んなわけあるか」
「だよねー!よっしゃ!空飛ぶぞ!!」
そんな二人はそのまま傘をつかんで外へと駆け出した
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「有紀子さん怒ると怖いよな…」
「まあ…あれは怒られてしょうがないだろ」
ボロボロになった傘と、泥だらけで体に傷を作りながら帰って来た新一と榊は両親にそれはもう厳しく叱られた。それで怯む二人ではなかったが、
高校生となった今ではあのときの危険性も理解しているためしょうがなさも感じている。
「空を簡単に飛ぶのなんて…怪盗キッドくらいか」
大きなため息をついた榊をコナンは呆れながら放置した