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▼失くしてしまった宝物

誰が、悪かったのだろう。


「ミソラちゃん聞いてる?」
「うん、聞いてるよ、猿飛君」

あなたと同じ声で、あなたと同じ姿で、あなたと同じ温かさで、優しさで、台詞で、
今の貴方を見ている筈なのに、どうしても昔のあなたを探してしまう。

「ミソラちゃんの髪の毛サラサラだね」
「ミソラの髪、俺様好きだわ」

触れる手から伝わる温度が、馴染めない。同じあなたの筈なのに、

「ミソラちゃん」
「ミソラ」

昔と変わらずに優しく呼んでくれるのに、

「ミソラちゃんのこと、好きだよ」
「もう、離さない」

最後にあなたと交わした言葉が頭から、離れない。

今の貴方は覚えていないけれど、ずっと昔から、佐助様のことは好きなのです。一介の女中であった私に気をかけてくれた、二度と忘れられない、好いた人なのです。

だからこそ、

「ごめんなさい、猿飛君。」


昔のあなたと今の貴方を重ねてしまう、私には
頭に、貴方ではない人を浮かべてしまう私には

貴方を愛することが出来なかった。


零れそうになった涙を隠すように、その場を立ち去った卑怯な私を、
許して下さい。


失くしてしまった宝物
「ね、ミソラ」
「何ですか?佐助様」
「もし、次の世でも逢えたなら。俺のこと忘れない?」
「ええ、…勿論。佐助様は覚えていて下さらないのですか?」
「覚えているに決まってるでしょ?俺様優秀な忍よ?ミソラのこと、忘れる筈がないでしょ」



題名:秋桜様の「僕を忘れた君」から

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