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▼約束

風に吹かれたて白が視界の端をちらつく

「やっぱり嫌いよ、白いカーテン。」
「何故だい?」
「だって世界から遮断された気分になるもの」

毎日、時は動いているのに自分は止まっているような気がしていた。

「…渡米するのは明後日だったね」
「ええ、そう。でも明日は検査とか明後日に備えて色々するって言っていたから優作に会えるのは今日が最後よ」
「見送りは?」
「来ないで。…それに学校があるでしょ?」

いつも見舞いに来てくれる幼なじみばかりが大人になっていく気がしていた。自分は置いていかれるかと不安だった。


優作も、私も口数が多いほうではない。今も心地よい、慣れ親しんだ沈黙が流れている。けど、それも今日で終わり。私の病気を治すために私はここから離れる。決めたのは他でもない私だ。だから、

「ねえ、優作」
「ミソラ?」
「絶対に小説家になりなさいよ」
「…ああ」

「あんたの小説の最初のファンは私何だから。」
「ああ」

「優作の小説が発売したら絶対にファンレター持っていくんだから」
「ああ」

「例え、何年かかったとしても、絶対に…感想言いに行くから!」
「ああ」


「だから、っ…私が会いに行くそれまでに…絶対に、有名になっていなさいよっ!」
「ああ、分かった。」

「私が傍に居ない間に、あった事とか、面白い話、聞かせてよ!?…っ幸せな話を沢山!!」
「分かった。だから、ミソラ、帰って来いよ?」


これは、賭けだろう。私の病気が治るまでに何年かかるか分からない。生きて帰って来れる確証もない。優作が何処にいるか見付けられるかも分からない。

それでも、

「約束よ!」
「約束だ。」

この約束を果たすためにも、私は、
死にたくない…よ。

ねえ、優作。本当はとても怖いのよ。治るかも分からないのに友達も居ない場所に行くの。凄く、怖いのよ。

それが分かっているのか、優作は涙を隠すために俯いた私の手をとり、優作の手と繋いだ。


約束
この約束が果たせますように。
ねえ、神様がいるなら、そのくらいしてくれても良いでしょう?


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