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▼最後の日こそ赤裸々に

はあ、と息を吐けば白く染まるほど寒い夜空の下を歩きながら、長らく見ることもなかった11個並ぶ数字を一度だけ確認してボタンを押す。

短いのか長いのかも分からない間を開けながら通じる電子音。

機械的な音が何度が繰り返されたとき、ぷつりとその音が止んだ。


「秀くん久しぶり」

「…ああ」

聞こえたのはもう随分と聞いていなかった声。付き合っている筈だけどそれにしては歪なほど連絡を取っていなかった。

「もう大晦日になったね、一年、過ぎるの早かったです。」

「そうか」

だからこれは私から彼への小さな…ううん、多分初めて彼に内緒で動いた大きな意趣返し。

「もうずーっと秀くんに会っていません!」

「…すまない」

秀くんの仕事柄仕方ないのは分かるけど、一言くらい何かを言って欲しいっていうのは私のわがままなのです。

「だからね、秀くんから別の格好いい男性に乗り換えることにしました」


「………は?」

あら、秀くんにしては珍しくとぼけた声が聞こえました。でもこれは決定的事項。私の決意は堅いのです。
耳元で色々と聞いてくる声が聞こえましたがそこは考えずに言いたいことだけ伝えましょう。


「私は秀くんが大好きです。だからこそ、今のお付き合いは私にとって不本意なの。それでね?最近とっても素敵な方を見かけました。その方とお付き合いをするつもりです。」


言いたいことは伝えました。秀くんが何かを言っているのは聞こえるけれど、耳からスマホを話した私には聞こえません。

目の前に現れたインターホンを鳴らして門に向かって覚悟を決めます。

これはもう決めたこと。
いつも秀くんには言われているけど私も自覚はあるのです。私の長所はマイペースな所。
そこにあなたが惚れてくれたのなら、

「夜分遅くにごめんなさい。こんばんは、沖矢昴さん。あなたのことが好きです」

その裏付けにある頑固さも許してください。
あなたが好きだと言ってくれたこの女は、ただじっと待っていることは出来るけれどそれも期限付きなのです。私はもう待つことに飽きました。だから勝手に行動します。

真っ直ぐ目を見つめていれば僅かに寄った眉に思わずくすり、と笑ってしまいました。

だってそれは本当に、秀くんそのままの姿だから。

細めた目から見えた瞳に、動揺を色濃く映したあなたをみて、してやったりとか思ったりして。


行動にすれば分かること
「ミソラさん…これは」
「ごめんなさい、その呼び方は嫌なんです」
「…ミソラ」
「はい、なんでしょう、秀くん」

「すまなかった」
「ふふ、はい」


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