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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
▼相棒

前夜祭だ!年越しだ!と年を越す前から宴は始まり1日丸々騒ぎ続ける家族達。その間に何度と祝いの言葉を掛けられたか分からない。そうして今まで家族達に揉みくちゃにされ続けたエースは誕生日を跨ぎ日にちが変わった頃漸く解放された。そのままやっと先程姿を見つけたユウの元へと近づいた。


気配に気付いたのか、足音が聞こえたのか此方を見たユウは僅かに笑いながら手にしていた酒を置いた。
「よおエース。やっと解放されたか」
「そう言う位なら助けろよ」
「馬鹿言うな、何で態々俺が」
何時ものようにくだらない話をしながら渡された盃を手に取る。
この船で誰よりもエースと付き合いの長いユウは今まで1度もエースの誕生日当日に祝ったことはない。昔酒が入ったほろ酔い状態で1度聞いてみたら「まだお前が確実に年を重ねたかどうか分からねえ時に祝ってもしょうがねえだろうよ。」と言われただけだった。俺の頭じゃ理解出来なくてマルコにそれとなく聞いたところ「要するに、例えば朝祝ったとして、そいつが生まれたのが昼だったら祝われた時はまだ誕生してねえから誕生日じゃないってことだろうよい。それなら完全に日にちを跨いでから祝えばいい。…変に捻くれてるユウらしい考え方だよい。」…らしい。
エースの誕生日はすでに終えている。そうしてエースもユウも酒を傾ける。
ほどよい静けさのなか口を開いたのはユウだった。
「今年もエースの面倒見ねえといけねえのか。」
「ってめ!!ユウ!!どういう意味だよそれ!!」
「っは、そのままの意味だ。」
相変わらず憎たらしい事しか言わないユウに少し苛つきはするものの
「…まあ今年もよろしくな、相棒。」
この日にしか聞けないユウの素直な言葉に満足やら気恥ずかしさやらを感じながら、やっと誕生日を迎えた気分に、エースはなるのだ。


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