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残念少女


レッドフォース号、それはこの偉大なる航路において四皇と名を馳せる男が率いる海賊団の船である。
「ムフフ………いいねェ、いいねェ。その笑顔最高だよ。あ、肩に手も置いちゃう!?ますます萌えるね!!」
そんな船に、怪しき様子の女が一人。
物陰に隠れることもせず、にやけた顔を隠すこともなく、甲板にいる二人を眺めている姿はどこからどう見ても変態である。
口から零れる言葉は変態性を増長させている。
しかし、誰もそれを咎めることも指摘することもしない。
なぜなら、変態はこの船のクルーだから。
変態もとい彼女は名前。
こんな変態でも歴とした赤髪海賊団の一員であった。

名前、彼女は赤髪のシャンクスにその実力を見初められ、本人もまた乗ることを志願して乗船している。
見初められているので実力は折り紙つきで、暗殺に用いられるような技と武器を使いこなす戦闘スタイルで、気配の消し方は中々のものである。
また、見た目が良くかわいらしいという言葉がよく似合うような美少女でもあった。
しかし、彼女はそれらを帳消しにするほどの変態であった。
男同士のクルーが取っ組み合っていればニヤニヤし、シャンクスとベックマンが何か話しているのを見かければニヤニヤし、口から「萌えるわー」や「どっちが受けかな」などブツブツ呟いているのであった。
そう、彼女は筋金入りの腐女子だったのだ。
乗船希望理由は「シャンクスさんとベックマンさんに(カップリング的な意味で)惹かれました!!」である。
端から聞けば憧れなのだろうが、この変態性を見たクルー達はあれも下心だったのだの後に気がつくこととなった。
美人なだけに、その変態性で大変がっかりされたのだった。



そんな彼女は乗船当初はベックマン×シャンクスを押していたらしい。
しかし、今彼女は新たな萌に目覚めていた。
「ルフィ!元気そうだな」
「あっ!シャンクスだ!!なあ、おれも船に乗せてくれよ〜」
「ばぁか!ガキは乗せられねェよ」
「おれはガキじゃないぞ!!」
これである。
最近の航海で拠点としている東の海の、フーシャ村の子どもの存在である。
名をルフィ。
海賊になりたいらしく、シャンクスによくその話を持ちかけているのが見かけられ、それを軽くあしらい楽しむシャンクスも同時に見かけられるようになった。
「やべェよ。これはあれだ、ルフィ君の将来が楽しみすぎるでしょ!?大きくなったルフィ君がシャンクスに会いに来てエンダアァアアアーーーーー!!ルフィ×シャンクスこれキタコレ!!!………あ、でもシャンクス×ルフィでいつまでも憧れの存在でとかもあり!?……ムヘヘ…」
本人曰く、妄想が弾むとのこと。
「おい、名前!ベックはもういいのか?」
「そうだぜ、ベックが悲しんじまうぞ」
ベック本人がいたら拳骨もののからかいである。
しかし、ベックやシャンクスのことを考えればこのからかいは産まれて当然とも言えた。
名前の変態性はクルーにしてみれば最早当たり前の事なので、心の広い海の男達はからかって遊ぶという方向で受け入れ始めていたのである。
「え……悲しむの?自分が妄想に使ってる身だから言うのもなんだけど、普通嫌がるでしょ?こういうことされるのって。やめられたらむしろ喜ぶんじゃ…?」
「おれは今、お前に常識っつーもんがあって驚いている」
「常識くらいありますー!」

ヤソップにからかわれるしいを中心に騒がしいクルー達を見ながら、相変わらずシャンクスはルフィをからかっていた。
「……くそぅ。シャンクスいつか覚えてろお!………ところでシャンクス、あの姉ちゃんきれいな人でおもしれーんだな!」
名前を見つめるルフィの瞳はキラキラと輝き、ルフィの気持ちを雄弁に語った。
「おー、いつかを楽しみにしておこう!…………ほう、名前に目をつけるとは中々だな。だがあれはダメだ。あれは俺のだからな」
それに気がつかないシャンクスではないので、シャンクスの瞳もまた別の輝きを持ち変わった。
二人の視線はぶつかり合い、先程までのふざけた空気はなくなっていた。
「ふーん…じゃあいつか俺がもらう!!」
「そりゃ海賊になるより無理な話だな!」
「〜っ!!なら今奪う!!」
「へっ!そんなパンチ当たらないよ〜……いだっ!」
お互いがやり合おうとしたその瞬間、シャンクスの頭に拳が落ちた。
「お頭、何も子ども相手に本気でかかるな……」
「ベック…」
「悪りぃなルフィ、お頭は子どもなんだ」
「おい!誰が子どもだって!?おい、ベック……ちょっ、聞けよ!!」
「だけどな、ルフィ。名前は確かに譲れねェもんだ。おれも…………な」
「え〜!副船長もかよ〜!」
「そういうことだ」
ルフィに言い聞かせながらも、きちんとライバル宣言をするベックは油断ならない男である。
ルフィはブスくれたと思ったら、すぐにいつもみたいに笑い言った。
「でも誰がライバルでも関係ないね!だって海賊は欲しいものは奪っていくんだろ!?」
「こいつは…」
「言うなぁ…ルフィ…」
三人は静かに火花を散らしていた。


彼女は変態でした
しかし、彼女は愛されていた


「!?何かあそこで三人がいい感じになってる!?え、これはまさかの三角関係!?あー、その手があったかー。考え付かなかったわー。これはあれですか、現実は小説より萌なりってやつですか?現実で三角関係起こっちゃう感じですか!?興奮しちゃうねー。ハァハァ………」
しかし本人はその事に気がついていなかった。


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