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普段怒らない人間が怒ると怖い。

今その言葉が最も身に沁みる状況へとなっていた。
凍りついたその場に聞こえるのは転がる酒瓶と、酔って寝落ちた野郎の寝息。それ以外の全員が、凍りついたこの場の元凶へと視線を向けていた。

「ライト……今、なんつったよい」

「マルコ嫌い」

いつものことながら無表情なライトだが、いつもなら周りを惚けさせるような穏やかな空気を纏っているのに今は雰囲気が刺々しい。
どうしてこうなった…そしてやばいぞこれ…
周りの心情が一致するその状況に、一石投じたのはまあまあ空気の読める双方の友人サッチである。
サッチからしても今の二人に関わりたくはないのだが、近くに座ってた野郎どもに押され、輪の中に無理矢理引きずり込まれたのだからしょうがない。

「おいおいライトよぉ?どーしたってのよ」
「どうもしてない」

声をかけながらも睨んできたライトの視線の冷たさに関わりたくないという思いばかりが増していく。冷めた瞳はほんの僅かにサッチに向いたがすぐにゆらりとその蒼い瞳をさ迷わせた。

いやもうほんとにマルコお前なにしたの
そう口のなかで転がしてはみるものの口には出すまい。ブリザードを生み出しているライトにこれ以上関わりたくない。何故俺は寝ていなかったんだ馬鹿野郎…酔い潰れて朝起きて気持ち悪くなる方がよっぽどマシだろう。
少しの現実逃避も許さないというように後ろの野郎にまた押される。ふらついて一歩出た足、顔を上げてライトの顔を確認…って、あ、これ

「マルコもしかしてまたやったのか」
「……」
「なるほどなぁ〜そりゃライトが怒るのも分かるかも」
「サッチ黙れよい」

余計なことを言うなと目で制してくるマルコを知りながらもニヤニヤと笑い始めたサッチの姿に周りで様子を伺っていた家族も事の収拾が付きそうなのを察知していつもの雰囲気へと戻っていった。
この場で未だに空気を固くしているのはたじろいでいるマルコと頑なに態度を変えないライトのみである。

「マルコ…俺は嫌だよ」
「知らねぇよい」
「なら俺もマルコなんて知らないからな」
「……」

「マールーコ、分かってんだろうが」
「うっせぇよい…」

過去に何回繰り返したのか。マルコもライトも懲りないものだとあ呆れを見せる家族など気にも留めず、マルコの瞳が映すのは踵を返し遠ざかるライトの背中のみ。
そんなマルコに気付かず、船内へと消えようとするライトを引き留めるのは他のクルー。気軽に手を伸ばした指先が肩に触れるまであと数センチ

「ライト!!」

耐えきれず、叫んだマルコの姿に隣のサッチが吹き出してしまったことは置いておいて。
振り向いたライトがそれ以上進みも戻りもせずに立ち止まる。

「俺はお前だけが好きだよい!!」

赤面したライトが逃げ出したのを追いかけ始めたマルコの後ろ姿は妙に楽しげで。きっと捕まえた先でイチャイチャし始めるんだろうなぁと顔から表情が抜け落ちるのを自覚する。なんでそんなこっぱずかしいことを堂々と…真っ昼間から盛大に叫んでるのか。一番隊隊長さまの威厳もなにもないなと笑いにもならないむず痒さを我慢したサッチは自分を褒め称えた。こいつらの痴話喧嘩に付き合うのはこりごりだと毎回のように思うのだ。

「大した理由もないのに毎度毎度喧嘩するなよな…」

どうあがいても被害を被るのはサッチなのであるからして。
三度の飯より君が好き


title:秋桜