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「こんにちは、猫のお嬢さん。」

こう言うと、とても嫌そうな、気まずそうな顔をする。人に見られたくなかったならもっと周りに気を配るべきだろう。頭が足りないのか、抜けてるのか、それともただの馬鹿か。



工藤邸に住むようになってから少し経った頃、工藤邸の近所を散歩中に、ある少女…いや、女性か?大学生程度の女性を見つけた。…というより目に入った。

塀の上にいる猫に必死に手を伸ばしている女子大学生。平日の昼間、講義が入っていないのか、誰もいない住宅街の小道で猫に語りかけながら、背伸びをしていた。


あまりに必死なその様子に猫が諦めたのか、座っていた場所から動きだし、塀の上からその女子学生の足元に降りた。

「にゃんこ!!!」


ひどく嬉しそうな声色に、後ろ姿だけでも分かる喜び様に、気付かれないように注意しながらも笑ってしまった。
後ろを振り向けば俺が立っていることに気が付く程度の距離だが、猫に夢中なその大学生は気付きもしない。それ以上留まっていると流石に気付かれそうだったからその日は来た道を戻って帰った。



そして、

「にゃんこー!おいで〜」
「にゃ〜」
「え、来ないの?」
「うにゃ〜ん」
「おいでよー」
「…」

「…ふ」
「え」

目の前で繰り返されるその会話に思わず笑ってしまった。恐る恐る振り返ったその様子に今まで気付かれていないつもりだったのかと、余計に笑いを誘われる。

此方を目を見開いた状態で固まったまま見ている大学生に、無理矢理笑いを堪えた。

「ね、猫って可愛いですよね!」
「っふ、そう、ですね。」

すぐに意味を無くした訳だったが…。

顔を赤くして、小さく会釈をしたと同時に素早い動きで逃げて行ったその学生は気付いていないのだろう。


既に何度も目撃していることを。


大学生と猫
「こんにちは、猫のお嬢さん」
「…こんにちは(また話かけられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ)」
「今日はいいんですか?猫」
「もうやめて下さい!!!!!(恥ずか死ぬ!!!!)」

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