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この交差点を真っすぐに進め


「城戸!生きてるわね!」
「生きていますが…どうかなさいましたかお嬢様」
「今どこにいるのよあんた」
「家におりますが」
「テレビを!つけなさい!あと今日中に一度こっち戻ってこれる?パパもママも心配してて」
「承知致しました」
携帯に並んだ着信の多さに目を見開いた。
掠れた声は良くないと、起き抜けの体にペットボトルの水を流し入れ、かけ直した途端に繋がった嬢との電話がこれである。
何がだ?
寝惚けた頭で表面上はきちんと会話を成り立たせ、脳内では何も理解が進んでいない。ベッドから起き上がった体は自然と浴室へと向かっていた。


上から注ぎ落ちる水滴を浴びながら、ゆっくりと頭を整理し始めた。…といってもそんなに整理する材料がないのだが。

何か、やった気がする。


寝惚けていた、というよりは寝かかっていた頭に残る記憶があやふやすぎて何をしたのか思い出せない。嬢の焦り様から何かしらがあったことだけは分かるのだが。
テレビを付けろと言われていたことにふと気が付き、だらだらとシャワーと戯れていたのを手早く済ませる。

すぐに出れるように、ズボンを引っかけ、シャツは持ったまま半裸の状態でぺたぺたとリビングへと向かう。冷えきった部屋の中でシャワーで温まった体から湯気が絶えずに立ち上る。

「本日起こった連続爆破未遂事件ですが」

テレビを付けた途端にタイミングよく話し出したアナウンサーの声が耳を通り過ぎた。

本日起こった連続爆破未遂事件、とは??


爆破?…爆弾か……やっぱ物騒だなこの世界。
そう思いながら画面が切り替わっていく様子をテレビの前に立ったまま眺める。手にもったペットボトルを口に付け、水分が喉を通り過ぎるその時、

「現場となったマンションの前に来ています!」

ゴキュン、変な音を鳴らしながら思いっきり水を飲み込んだ。
画面に映るマンションの外観があまりにも見覚えがあったからだ。

「あー、うちだな」

そういえば寝る前、爆弾見付けたんだったか。
漸く何があったのかを把握したが、あまりのことに天を仰ぐしかなかった。



ピンポーン、
タイミングよくなったチャイムが言葉を続けるキャスターの声に被さった。

十分な睡眠を取ったにも関わらず、段々と疲れてきた体ではモニターを確認するのも億劫で。シャツをつかみあげボタンも止めずに羽織るだけ羽織ってから玄関へと移動する。

今度は何だ。


「すみませーん、警察ですが」



くたびれた警察が扉の前で笑っているのを見て、このまま部屋に引き返して二度寝してもいいのではと思えてきた。



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