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逃したチャンス


一先ず部屋に戻り、荷物を投げ入れ。鞄の中から取り出した解体道具を手袋を嵌めた指で掴み取る。
帰宅したら即シャワーを浴びてベッドに倒れこむ予定だったが、そうも言ってられないのが現状だ。不満しか出そうにない唇に頑丈にチャックをかけて踵を返した。

実は気のせいでした、紙袋なんてものはありませんでした、幻覚でした

そんな都合の良い話だったら嬉しいと、わざと視界に映さないように扉を開ける。鍵をかけるでもなくただ扉が閉まるのを確認してまで緩慢に動いた甲斐もなく、振り向いた先の廊下にはポツリと紙袋が置かれたままだ。


「はー…帰りたい」

疲れたねむい帰りたい。
三拍子が揃った身体は踵を引き摺り、スローモーションの様な動きで膝を付いた。紙袋にかかった指を、丁寧に、慎重に改めて内容を認識する。

爆弾。

はい、出た。ついに出た。
俺てっきり自分が培った爆弾解体テクは嬢のために使うものだと思っていたのだが違うようだ。嬢ではなく俺のため。めちゃくちゃ私用。なんでだ…。


警察に連絡…したら避難勧告出るから寝れない…な。あらかた解体してから連絡で良いだろう。早く眠りたいと叫ぶ体と録に働かない頭でぼんやりと考える。
鞄の中から引き抜き持ってきた工具を床に散らばせ、地面へと座り込んだ。
鈴木邸から此処に至るまでの道中で外していた眼鏡をかけ直しながら呼吸を調える。


さて、やるか。


_____


着々と解体を進めていたその指が止まったのは、遠隔操作が可能であることに気が付いたその時のことだ。
まじか、と小さく呟いてしまったのはしょうがない。
たかだかそこら辺に転がっている程度の爆弾ならこの世界だし有り得るだろう、と思っていたのだがもしかしてこれわりと大きめの話とかだったりするのだろうか。
劇場版では信号が青に変わるのと同じように当然のように爆発が起こるから何とも言えないが、それ以外では爆弾が出てくるような話は少なかった覚えがあるのだが…。

遠隔操作をするために携帯電話と繋がれているコードを前に、手を止めた。
これ解体してるの犯人にバレたら危ない感じの状況か…?
遠隔操作が効かなくなっていることに犯人が気づき、どんな行動を起こすのかがよく分からない。
下がっていた眼鏡の位置を人差し指で直しながらポケットへと手を伸ばす。
指先に触れた携帯電話を起動して、ボタンを数回押せばすぐにその番号へと繋がった。


「もしもし、警察ですか?現在爆弾を解体中なので15分以内に回収に来ていただけると助かります。住所は…」


特記事項だけを伝え、通話口が騒がしくなったのは知らないふりをして連絡をさくっと終わらせた。
ぱちり、ぱちりとあっさりと残りの三本のコードを切り離し息を吐く。



「…終わった。寝よ」
手早く道具を纏め立ち上がったその足は自室へと迷い無く進んでいく。眠すぎてふらふらしているわりには上手く解体できた自分のスペックが恐ろしい。俺すごい。そんな浮かれた考えが頭に浮かぶ程度には思考が止まっている。
一仕事を終わらせて滑り込んだ部屋で足早にシャワーを浴びてベッドへと倒れこんだ俺は、騒がしくなっている廊下だとか、鳴らされたチャイム等には気が付かずに夕方まで深い睡眠を取り。鳴り響いた携帯の着信音で漸く目が覚めた時には、画面に写る嬢からの不在着信20件という文字で一気に眠気を吹き飛ばすこととなる。



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