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毎日勘だけで生きてます。


疲れた。


頭のなかに浮かぶのが疲れた、帰りたい、眠い。この3つだけになった辺りで漸く今の俺はやばいな?と自覚した。
流石に約半年休みなしは宜しく無かったか…。休みはあるにはあるが、自宅にてのんびり、とかをするわけではなく鈴木邸にある俺の部屋に居て何かあればすぐに対応出来るようにしていから。朋子様から告げられた休暇の宣言により、一週間の休みが決定した。そしてそれを聞いた途端に気持ちが弛む。…そう、弛んだから疲れが出てきた。
何時も通り、普段通りに過ごしていれば「疲れた」なんて考えは出さないのに。それが出てきたのは執事としての焔ではなくただの焔に思考が寄ったからだ。

まだまだ未熟者だな、万が一にでも俺を教育していた先生どもに見付かったらそう笑われて何時間に及ぶ執事的教育指導を浴びるであろうその考えに、一つ溜め息が漏れてしまう。

そして今、朋子様からの休暇宣言から流れるような速さで俺が休みに入ることを伝達されたのであろう嬢から「ちゃんと羽を伸ばしなさいよ!」との声と共に投げられたポテチ(未開封)を入れた袋を右手に。適当に片付けて持って帰ってきた荷物を左手にぶら下げて、エレベーターの中で何とも言えない浮遊感に揺られている。


「あー…疲れた」

無人の箱の中、もはや隠すことを止めて呟いたそれは、当然ながら誰にも返されること無く虚しく消える。軽快な音とは反対に、ゆっくりと開いたエレベーターのドアを待っている間の僅かな時間で瞼がくっつきそうである。簡単に言うと物凄く眠い。

酷くのんびりと開いたエレベーターを降りた先にある廊下を進めば久方ぶりにその姿を見る俺の部屋の扉。態々マンション等に部屋を借りずとも鈴木邸に住み込みで働いているため、本当に必要性は無いのだが、それでもこのマンションに部屋を持つ理由はただ一つ。


鈴木財閥ってスゲェ。


それだけである。
要するに、

「ボーナスなんかでは補えないほど園子の面倒見てくれてるんだからとりあえずマンションあげるね」

これである。拒否権は無かった。なんなら最初は一階につき1部屋、みたいな高級マンションを買おうとしていた鈴木夫妻をめちゃくちゃ止めた。
使用頻度が少ないのが分かってるのにそんなダイナミックお買い物しないでくださいお願いします、と言うのをめちゃくちゃ論理立てて説明したのは後にも先にもあの時だけである。それでも分類的には高級マンションのこの部屋を与えられたわけだが…。何年関わっても金持ちの思考は着いていけない時がある。



とまあ、そんなわけで久方ぶりに帰宅してきたマンションで。自分の部屋のある階でエレベーターを降り、そして、進めていた足を止めた。


「紙袋…しかもあからさまに怪しい」

こんな時間に、こんな場所に、如何にもな紙袋。
寝惚けた頭に面倒事をぶっ来んで来るなと舌打ちが漏れたのはしょうがなかろう。

疲れた、帰りたい、眠い
その三つが頭の中で躍り狂っているのを自覚しつつ、その紙袋の前にしゃがみこみ、中身を確認。
点滅する電気板が視界に入ったことで右手が握り拳を作った。



爆弾って叩き割っちゃダメか???



ダメだよな………。ねっむい。



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