恥を承知で
結局のところ俺はこの世界の理不尽さに妙な信頼をしているのである。
今俺は、この都市に生きている限り危険度EXでありながら、ここで命を育むものとして日々過ごしている。
しかもメインキャラクターの一人の真横で。
鈴木園子
俺が守るべき、俺の主人。
己を守る術など持たない嬢が、
大金持ちの次女などというあまりにも狙いやすい彼女が、
・・
原作の通りに高校2年生になった世界で、ヒロインの親友として、正義の主人公側のパトロンとして物語に巻き込まれる、原作の通りになることを
どうしようもなく信じているのである。
勿論、この世界は危険度Exなのに代わりは無い。
原作の舞台になる米花町はなにも原作の年になって突然爆発的犯罪都市になったわけではない。確かに原作が始まってから起こる事件数を考えるとあまりにも多すぎるが、それを抜きにしてもこの町は犯罪が多いのだ。
そんな場所で、財閥の娘、通う学校は一般の公立校等という嬢はあまりにも狙いやすすぎる。
対策はしているものの俺とて四六時中嬢の側にいるわけではない。嬢の隣に俺がいないときに起こされる犯罪(特に誘拐)が多い。正直、それに関しては嬢に仕えることが決まった時点で察していた。
だからこそ、と言えばいいのか、それでも、というべきか
"鈴木園子"は死なない。
そう、考えたのだ。
原作に必要な嬢が犯罪に巻き込まれる。死にはしないことを前提に。
そう考えた上で、だからこそ俺は嬢と一つの約束をした。
「怖いことがあったなら、私をお呼びください。絶対に駆け付けます。必ず、園子様をお守りします。
その代わりに私が駆け付けるまでの間、目を閉じて、耳をふさいで、疲れたならお眠りください。次に目を開けたとき必ずお側におりますので」
これは嬢を守るための約束だ
俺が守るは彼女の全て
彼女の命がこの世界に守られているのならば
彼女の心は俺が守ろう
そう決めたのだ。
守るべきお嬢様、鈴木園子が無事であるならば。それだけでいいのだから。
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