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二度はあったが三度はなかった

持ち歩いている子電伝虫を繋げながら目の前に座らせた男を見る。此方を睨んだまま動きもしない白ひげ海賊団のクルー…テンガロンハットを被ってる半裸の男を一度睨んでから、繋がった電伝虫の向こう側に声をかけた。

「あー…久しぶりだな、不死鳥さん。お宅の馬鹿が食い逃げしたから金持って引き取りに来いよ」

返答がある前に通話を切り子電伝虫をしまう。変わらず此方を睨み続けてる目の前の男に溜め息が出そうになるが、抑えつけながらも気分は最悪だ。

俺、今、お休みなんですけどねぇ…何してくれてんのこの食い逃げ犯。
荒っぽくなった口調はご愛嬌。

「てめぇ…海兵か!」

「本来なら動くはずもなかった海兵だが、なにか?」

だって俺は休暇中。本来なら仕事なんてしねえよ。なんで休日にも正義背負わなくちゃいけねえんだ。あのマント重たい、肩こる。
ただねぇ…目の前で食い逃げが起きたのにスルーすんのもどうかと思ったからわざわざ、働いてやってんの。寧ろ感謝しろっての。

「だから海賊ってのは嫌いだ…」

人使いの荒い海軍も嫌いだけどな!給料いいから勤めてるけどな!海賊も海軍も正直面倒くさいわ!!
呟くように言ったにも関わらず、目の前で食い逃げ犯は目敏く…いや、耳敏く?声を拾ったらしい。

「マルコ呼びつけて何する気だよ」

威嚇するように低い声を出した食い逃げ犯………マルコって誰?……あ、不死鳥か。へーマルコって言うのか。

「来れば分かるだろう。そもそもお前が居るのが悪い」

何故に俺が飯を食おうとした目の前で食い逃げするんだ。せめてほかの店でやれば良かったのにな。
何が癇に障ったのかは分からないが余計に酷い目で睨んでくる食い逃げ犯から視線を外し、周りを見渡していれば視界に映った青い鳥。

「思ったより早かったな」

「うちのが悪かったねい」

「何謝ってんだよマルコ!そいつ海兵だろ」

「こいつとはちょいと縁があってな。帰ったらサッチにでも聞けよい」

適当に放り投げられた袋の中に入っているベリーを確認し、不死鳥に向かって食い逃げ犯の手首に付けていた海楼石の手錠の鍵を放り投げる。

「その食い逃げ野郎のこときちんと躾とけ」

躾…ってか叱っとけのほうが正しいのか?一般人殺す野郎どもも居るんだからそれに比べれば随分マシだが、目の前で起きた食い逃げを見過ごすのもちょっと…。腹減ってたから苛ついてたのもあるが、休暇中に起きたことだったから見逃してやる。
…いや、休暇中じゃなくても見逃してたかも知んないけどさ、体裁として追いかけるしか無いわけよ。あー面倒くさい。これだから上官になるのは嫌なんだ。ろくな正義も掲げてない俺みたいなのが少将ってホント救えない。

「3度目はないぞ」

無いことを祈るの間違えだけどな。1回目のフランスパンと2回目の食い逃げ犯。3回目もあるならホントに白ひげ海賊団とはろくな縁じゃないな。

ギャーギャーと騒いでいる食い逃げ犯を置き去りに、不死鳥に一度だけアイコンタクトをして背中を向ける。


不死鳥が投げた袋の中にあるベリーは、食い逃げ犯の食べた金額より多めに入っているようだし、店に金を渡して残った金で飯を食おうと心に決める。
タダ飯万歳!


___


「おいマルコ!!」

「遭遇したのがジオで良かったよい」

「は?」

「あいつは海軍本部の少将、理不尽な正義、とやらを掲げてるジオだよい。相当な気分屋らしいからな、前にサッチも見逃されて…というよりは助けられてるんだよい」

「……は?」

「まあいい、帰るよい」

「……俺、あいつ嫌いだ」


エースとジオは相性が悪いらしい

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