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失敗は成功の元にならなかった

ジオ少将が率いる戦艦にのる海兵たちは少々特殊だ。

ジオ少将の下に就いている海兵たち…特に、ジオ少将が大佐になる前から部下となっている海兵たちは少将のことを崇めてるとも言える。ジオ少将の執務室に入れるのは極僅か。少将の隊の中でも上から数えたほうが早いような強さを持った先輩方だ。少将が決めた訳ではないが自然と決まった暗黙の了解として…。その先輩方だって、今までの実績を言えば少尉や中尉程度…もしくはそれ以上の階級を持てる方だっているのに、「ジオ少将の下でなければ意味がない」というような信者だ。新兵が少将の部屋に入れることなど緊急の時以外無い。

少将の下に配属された海兵は、そんな先輩方から指導される。船の上での仕事は勿論、戦闘時の動き方、報告の仕方、訓練兵の頃も厳しかったが、先輩方がジオ少将に憧れれば憧れるほど指導に熱が入る。
そんな先輩方を見ても少将が何も言わない所を見る限り、これが少将の隊の常識なんだろう。


それで根を上げればそこで終わり。2度と少将とお近づきになれる機会はないのだから、ジオ少将に憧れてこの隊に配属された海兵は必死になる。
例えそれまでに1度も少将に見られることさえ無くとも少将の隊に配属されている間にジオ少将に認められれば、それ以降、話しかけられることがあり得るのだから。


ジオ少将に認められれば、といったが、簡単には言えば、名前を呼ばれたら、だ。

ジオ少将は自分が認めた人間以外の名前を一切呼ばない。だからこの隊の中では通過儀礼のようなものなのだ。ジオ少将に名前を呼ばれるか、否か。


そんななか、今日、俺は、ジオ少将に名前を呼んで頂けた!


今日ジオ少将が率いる俺たちが乗っている船艦は、よくあることだがジオ少将の命令で途中から予定ルートを外れながら巡回をしていた。そして此方へ向かって大砲を打ってきた海賊と戦闘になったのだ。

自分の持つ銃を扱いながら、向かってくる敵の剣を避け、敵に銃口を向けて指をかけた瞬間に、あ、ハズレるって直感的に思った。案の定外れた弾を見て俺は絶望したんだ。俺が敵とやりあっていたすぐそこにジオ少将がいた。その少将に、弾は向かっていて。ジオ少将は強いけれど、能力者ではないんだ。生身の人間。これが当たったりしたら…って絶望したその時に、

背中を向けてたはずのジオ少将が、弾を、避けた

そして少将が避けた弾は、それまで少将が対峙していた敵を貫いた。
そのまま周りの敵を、持っていた刀を振るい倒した少将は、此方へ一瞬だけ視線を向けたが、そのまま敵に向かっていった。

頭の中ではパニックになっていて、海賊を全員倒すその時まで、体は動かしていたが、頭の中にはジオ少将のことばかりが浮かんでいた。


海賊を倒し終わり、その処理へと命令しているジオ少将の元へと駆け寄り、謝ろうとした時、俺が口を開けるより早く俺に気が付いた少将が、

「ベル、さっきはよくやった」

俺の、名前を呼んだんだ。
正直、怒られると思っていたし、少将の身を危険に晒したんだから除隊されても当然だと考えていた俺は本当に驚いた。
そのまま去っていったジオ少将の背中を見ながら気が付いた。ジオ少将は俺があのときはずすと気が付いた上で利用したのか、と。そんなことが出来るなんて思いもよらなかったが、少将が俺のことを褒めたということはそういうことなのだ。
そうして出来た新たなジオ少将の武勇伝と共に、名前を呼ばれたことを自慢しようと同僚のところへと突撃した。


_海兵Bの自慢

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