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でる杭は打たれなかった

「だるい」

書類に向かっていたが、集中力がどっかに消えたせいで、思わず呟いた。
その瞬間にソファが整えられ、枕代わりのクッションとブランケットが用意され、飲み物がさっと出てくるのは何故だ。…答えなんて1つ。何故か俺を慕ってくれる優しい部下が、異常なまでに優秀なのである。


書類は(ある程度)終えた、今日は巡回もない。特に派手な動きをしている海賊もいない。


「少し休むか」


用意周到な部下たちの好意に甘え、ソファに寝転び目を隠すように腕を乗っける。思い出すのは俺が少将に上がったときのこと。



人間は二種類に分けられる。

ラッキーかアンラッキー
世渡り上手か世渡り下手
器用か不器用
勝ち組か負け組

簡単に言えば、イージーモードかハードモードか。


そして俺は、周りから見ればイージーモードだ。海軍に所属、若くして将校に登りつめ、何人かの上官に気に入られているし、顔もいい(らしい)。ある程度はモテる(らしい)。

だが、俺から言わせて貰えば、俺の人生はハードモードだ。
第一、俺は強くない。周りが勝手に勘違いしているだけであって腕がたつ訳ではないのだ。ただ単にタイミングが良いだけである。海賊討伐に行っても、相手が海の気候のせいで弱ってたり、ちょうど怪我をしていて動ける奴が少なかったりするところに遭遇し、あっという間に首を取り終わる。それを周りはジオ大佐の作戦だとかなんだとか。んな訳ねえだろ。そんなに頭良くねえよ俺。

将校になったのだってそうだ。少しばかり書類仕事が得意だったから暇なときに手をつけるようにしていたら元帥に目をつけられ、やたらと書類回されるようになった。それを補佐するようにと、俺に手助けしてくれる奴が増えた。ああ、いいやつらだなとか思ってた俺馬鹿じゃん。今そいつら俺の部下になってるよ!!多分手助けし始めたくらいの時点から俺の部下ってことになってたよ。どういうことだって、元帥。


まあ、他にも諸々ありはするが、俺の人生はクレイジーモードになっているのだ。



じゃなきゃ今俺の前に大将黄猿が座ってるとか可笑しいだろ。隣にいる元帥もさっさと説明してくれよ。緊張感でどうにかなりそうだわ。


何だっけこの人の名前。黄猿なのは分かるけど名前…名前…ボ…ボルデモート?いや違うよな。ボルなんちゃらかんちゃらだろ?知ってる知ってる。…ボ…ボ……まあ、いいか。ボルさんでいいや。基本的に普段関わる人しか名前覚えない主義なんだよ俺は。ほら、元帥だってセンダイだかセンコウだかだろ?元帥としか呼ばないから分からん。あと、俺にちょっかいかけてくる青雉…なんだっけ。なんか数字みたいな名前の…あぁ、きゅーさんか。9と3みたいな名前だったもんな。知ってる知ってる。あともう一人いたよな、大将。赤犬だっけ?…知らね。

「ジオ」

っ…びびった。いきなり声出すなよ元帥さん。思いっきり目で追っちゃったじゃん。顔はほら、大概身に付いているポーカーフェイスで表情変わってないだろうけど今俺絶対手とかピクッと動いたよ。

「後日正式に発表されるが、…」

え、何々。遂にクビ?…それもそうか。こないだの巡回の時とかどうにも気分が乗らなくて部下に指示飛ばして無理矢理進路変更とかしたしね。その先では海賊と出会ってドンパチやらかしたし。あのときは始末書だっけ?他にも…あ、どっかの島に間違えて砲弾飛ばしたっけ、流石に焦ったけど何故か元帥さんには誉められたけど。なんなの?俺をクビに出来んのそんなに嬉しかったのか、だから誉めたんだな。やっと納得した…

「大佐から少将に昇格する。三大将との会議の上、ジオは大将黄猿の下へ就くことになった。」


「え」

今でも俺が大佐つっーのに反感持ってる奴がいるのに少将とか…え、面倒くさ



大佐から少将に昇格し、ボル大将が上司になったとき俺は確かにこう思ったが、今考えればボル大将が上司で良かったと思う。



俺の掲げる正義『理不尽な正義』

隠された意味も書くなら『理不尽な(周りによって渋々動く)正義』

ようやくこれを理解してくれた人になったのだから。

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